AVE
スペインの高速鉄道
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概要
AVEは "Alta Velocidad Española"(「スペインの高速」の意)の略称であると同時に、スペイン語で鳥の意味で、翼を広げた鳥が列車のシンボルマークになっている。 スペインの高速鉄道網は2020年代半ばまでに総延長が約4,000kmに達しこれは中国に次いで世界で2番目、欧州では最大である。マドリードを中心に国内の主要都市を網羅しており、一部の区間では最高時速310kmで運用されている
車両は最初に開通したマドリードとセビリア間の高速新線ではフランスのTGVの技術供与を受けて造られたものが運用されているが、軌道・信号システムはドイツの高速新線用のもの (LZB) が導入されている。部分開業したマドリードとバルセロナの間の高速新線では、ドイツのICE車両のICE3を基本にしたヴェラロE(Velaro E、以前の名称はICE350)と、国内で開発されたタルゴ車両であるTALGO350が運用され、世界最高の350 km/hでの営業運転が実現する予定だったが信号システムの不具合のため[1][2][3]、300 km/hにとどまっている。 2022年現在の最高速度は310 km/hである[4] 。
将来の延伸時、フランスのTGVをはじめとするヨーロッパ各国の高速鉄道網へ接続することを考慮し、スペインの他の広軌ネットワーク(レール幅1,668 mm)と異なり、標準軌(レール幅1,435 mm)を採用している。
AVEは、セビリア万博の開催にあわせて1992年4月21日にマドリードとセビリアの間 (471 km) が開業した。マドリードとバルセロナの間の建設が進められ、2003年10月11日にマドリードとリェイダ間、2006年12月18日にリェイダとタラゴナ間が、そして2008年2月20日にバルセロナまで延伸開業した。
座席数320で、クルブ(特等車)とプレフェレンテ(1等車)とトゥリスタ(2等車)の3クラスに分かれており、クラブとプレフェレンテでは食事サービスがあり、天井に設置されたモニターでビデオサービスが行われるなど、航空機との競争が強く意識されている。他のヨーロッパの高速列車で同様の一等車乗客へのサービスは、ユーロスター、タリス、スウェーデンのX2000などで行われている。
30分以上の延着で料金の100%払い戻し、15分から30分未満の延着で料金の50%払い戻しの制度がある(2009年7月現在)が、実際には元々かなり余裕のあるダイヤ設定がなされているため、遅れることはほとんど無い。むしろ時刻表に記載された到着時刻より5分以上早く着くことが多い。
1992年の開業前はTAV (Tren Alta Velocidad) と呼ばれていた。
使用車両
- S-100
- S-101 Euromed 従来の広軌路線(バルセロナ~アリカンテ)で運行
- S-102 タルゴ350
- S-103 Velaro
- S-104 Avant
- S-120 Alvia
- S-130
- S-106(Talgo Avril)
主要諸元
| 形式 | 製造会社 | 編成数 | 製造年 | 最高速度[† 1][† 2] (km/h) | 出力[† 2] (kW) | 電圧および周波数 | 軌間 (mm) | 編成旅客定員 (人) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| S-100 初代AVE | アルストム | 18 | 1992–1994 | 300 | 8,800 (5,400) | 25 kV · 50 Hz AC / 3 kV (DC) | 1,435 | 329 |
| S-101 ユーロメッド | アルストム | 6 | 1994–1996 | (200, 220) | (5,400) | 3 kV (DC) | 1,668 | 325 |
| S-102 タルゴ350 | タルゴ/ボンバルディア | 16 | 2005– | 300, 350 (-) | 8,000 (-) | 25 kV · 50 Hz AC | 1,435 | 314[† 3] |
| S-103 Velaro (ICEタイプ) | シーメンス | 26 | 2005– | 300, 350 (-) | 8,800 (-) | 25 kV · 50 Hz AC | 1,435 | 404 |
| S-104 Avant (Pendolino 480 ベース) | アルストム/CAF | 20 | 2004– | 250 (-) | 4,400 (-) | 25 kV · 50 Hz AC | 1,435 | 236 |
| S-114 Avant (Pendolino 600 ベース) | アルストム/CAF | 13 | 2011– | 250 (-) | 4,000 (-) | 25 kV · 50 Hz AC | 1,435 | 236[† 4] |
| S-120 Alvia | アルストム/CAF | 29 | 2005– | 250 (220) | 4,000 (2,700) | 25 kV · 50 Hz AC / 3 kV (DC) | 1,435 / 1,668 | 237 |
| S-130 Patito | タルゴ/ボンバルディア | 45 | 2006– | 250 (220) | 4,800 (4,000) | 25 kV · 50 Hz AC / 3 kV (DC) | 1,435 / 1,668 | 299 |
- 直流区間で値が同一の場合は直流での値(括弧書きの値)を無記載にしている。
- 別途、身体障害者用シート 2席 がある。この数は表の定員から除外した。
- 別途、身体障害者用シート 1席 がある。この数は表の定員から除外した。
路線

営業路線
AVEシステムの中心ハブは、マドリードのアトーチャ駅。
- 南方面(アンダルシア方面)(マドリード=セビリア高速鉄道線)
- マドリード - コルドバ - セビリア(シウダ・レアル、プエルトジャーノ、コルドバを経由)
- マドリード - コルドバ - マラガ(コルドバ - マラガ高速鉄道線)
- マドリード - コルドバ - グラナダ(アンテケラ - グラナダ高速線)
- 北東方面(マドリード=バルセロナ高速線)
- 東方面(マドリード-レバンテ高速鉄道線)
- 北方面(マドリード=バリャドリッド高速鉄道線)
- 北西方面(大西洋線)
新路線の整備計画

当初の目的であったTGVとLGVペルピニャン・フィゲーラス線との接続は、2013年12月から営業を開始した。これによりスペインとフランスの間では乗り換え無しの直通運転が行われるようになった。当初は1日5便の運行を予定しており、バルセロナ‐パリ間が2本(所要約6時間20分),マドリード‐マルセイユ間(所要約7時間),バルセロナ‐リヨン間(所要約5時間)、バルセロナ‐トゥールーズ間(所要約3時間)が各1本運転される。
スペイン政府は野心的な計画として2010年までに全ての州都と首都マドリードをわずか4時間、バルセロナと6時間30分で結ぶため7,000kmに及ぶ高速鉄道の建設を構想していた。評論家はこの計画で、スペイン内の列車の速度が大きく向上すれば、少ないコストで世界的に大きなインパクトを与えることが出来ると評した。計画がもし完全に実行されれば他の先進国に例を見ない高速鉄道網が完成する。スペイン国内には現時点でも、平均速度が60km/hを若干上回るだけの低規格な地方路線が存在している。AVEが整備されている都市間とそうでない都市間では、所要時間の点で大きな差が生じている。一例として、レオン・バルセロナ間は784kmを9時間30分要していたが、2015年9月にマドリード・レオン間がAVEで結ばれてからはマドリード乗り換えで5時間以内で到着できると思われる。マドリードとの間にAVEが直接的に結ばれていなくても高速新線の整備によって新線を経由することで所要時間が大きく改善されている地域も多くある。
2026年現在4000キロが整備開業済みとなりスペインの高速鉄道網は1992年の開業以来わずか30余年で日本を抜いて中国に次ぐ世界第2位の高速鉄道網を構築するに至った。
スペイン政府は「PEIT(運輸交通回廊計画)」に基づき、マドリード=バルセロナ線においては、運行システムの高度化により最高速度を時速350kmへ引き上げる計画が進行中であり、さらなる所要時間の短縮(2時間を切る運用)を目指している[12][13]。
このような公的セクター主導による大規模な投資とネットワーク構築は、民間企業に鉄道インフラをいたずらに委ねた手法を採る他国の鉄道政策と比較しても、短期間で劇的なインパクトを国土全体に与えた。
問題点
マドリード・バルセロナ間の高速新線は地質学的な問題から当初予定していた最高速度で列車を走行させることが出来ていない。地質学者はアラゴン州の弱い粘土地盤に建設されたことに関して批判的であった。路盤の近くでは穴も発見されている。このAVEの新路線はトンネルの設計、信号システム、列車の最高速度等、様々な失敗で大きく苦しんでいる。最近では、バルセロナの19世紀のもろい建築物の基礎の下に浅いAVEのトンネルを敷設する計画で約50,000人の居住者を激怒させた。その結果、バルセロナの前市長のジュアン・クロス・イ・マテウの政治的な将来を脅かした。サグラダ・ファミリアの建設にも大きな影響を及ぼすと報道された[14]。新幹線や中国高速鉄道はホームからアクセシビリティに乗車できる構造になっているが、AVEはデッキに3段の階段があり、車いす利用者は一人では乗車できない。
建設中の路線
- 北方面
- 南西方面(ポルトガル方面)
- カセレス - メリダ - バダホス この路線は半島の3つの県都を結ぶエストレマドゥーラ州の高速鉄道網である。2022年7月18日にプラセンシア - カセレス - メリダ - バダホス間が将来標準軌に変更可能な枕木を使用してイベリア軌間(1,668mm)で開通した。現在タラユエラ - プラセンシア間の建設工事が進められている[16]。当初は、ポルトガルのリスボンまで繋げることが計画されていたが、2011年よりポルトガル側は凍結されている。[17][18]2024年現在、ポルトガル方面への高速新線の建設は再開されており、バダホス - エルバシュ及びエボラ - リスボンは在来線の改良、 エルバシュ - エボラ間は2024年以降の開業予定の高速新線の建設により、マドリード - リスボン間の直通運転を開始する予定である[19]。
年表
- 1992年4月21日:マドリード~セビリア開通
- 1993年1月:マドリードとマラガ間でTalgo200運用開始
- 2003年10月11日:マドリード~リェイダ開通
- 2005年11月15日:マドリード~トレド開通
- 2005年12月26日:新車両S-102導入
- 2006年12月18日:リェイダ~タラゴナ開通
- 2007年6月22日:S-103が運行開始。[20]
- 2008年2月20日:バルセロナまで開業[21]
- 2013年7月24日:サンティアゴ・デ・コンポステーラ近郊で死傷者200人以上の脱線事故
- 2013年12月15日:TGVがバルセロナまで直通運転開始、AVEがリヨン、マルセイユ、トゥルーズまで直通運転開始[5][22]