BMI1
From Wikipedia, the free encyclopedia
BMI1(B lymphoma Mo-MLV insertion region 1 homolog)、PCGF4(polycomb group RING finger protein 4)またはRNF51(RING finger protein 51)は、ヒトではBMI1遺伝子によってコードされているタンパク質である[3][4]。BMI1はRINGフィンガーを有するポリコーム群タンパク質であり、BMI1はがん原遺伝子である。
機能
BMI1は、細胞周期の進行を阻害する因子であるp16やARFを調節するがん遺伝子として報告された。Bmi1ノックアウトマウスでは、造血、骨格パターン形成、神経学的機能や小脳の発生に欠陥が引き起こされる。BMI1はDNA損傷部位に迅速にリクルートされ、8時間以上にわたってそこにとどまることが報告されている。BMI1の喪失は放射線感受性、そして相同組換えによるDNA二本鎖切断修復の欠陥をもたらす[5]。
BMI1は成体の造血幹細胞や末梢・中枢神経系の神経幹細胞の効率的な自己複製分裂に必要である[6][7]。一方で、分化した子孫細胞を形成する過程における重要性は低い。Bmi1ノックアウトマウスにみられる表現型の変化が多岐にわたること、そしてBMI1が広範な組織に分布していることを考えると、BMI1はその他の種類の成体幹細胞の自己複製も調節している可能性がある[8]。
また、BMI1はp53を抑制することで神経の老化を阻害していると考えられている[9]。
BMI1はWnt、Akt、Notch、Hedgehog、受容体型チロシンキナーゼなどいくつかのシグナル伝達経路と相互作用する。ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)においては、BMI1遺伝子のノックダウンはESFTの形成や発生に重要であるNotch、Wntシグナル伝達経路に大きく影響を及ぼす[10]。BMI1は乳腺幹細胞の増殖に対するHedgehogシグナル伝達経路の影響を媒介していることも示されている[11]。また、BMI1はARFやp16INK4aを抑制する。Bmi1-/-神経幹細胞や造血幹細胞はARFやp16INK4aの発現レベルが高く、増殖速度が低下する[12][13]。BMI1はGATA転写因子を安定化することでTh2細胞の分化と発生を制御する重要な因子であることが示唆されている[14]。
構造
BMI1遺伝子の長さは10.04 kbで10個のエクソンから構成され、配列は種間で高度に保存されている。ヒトのBMI1遺伝子は10番染色体(10p11.23)に位置する。BMI1タンパク質は326アミノ酸から構成され、36949 Daである。BMI1はN末端にRINGフィンガー、中央部にヘリックスターンヘリックスドメインを有する[15]。RINGフィンガードメインは亜鉛結合に関与しているシステインリッチドメインであり、ユビキチン化過程に寄与している。BMI1が結合することでRING1BのE3ユビキチンリガーゼ活性は大きく活性化される。BMI1のRINGドメインは、RING1BのRINGドメイン、そしてそこから伸びるN末端テールと相互作用していることが示唆されている[16]。
臨床的意義
BMI1の過剰発現は、膀胱がん、皮膚がん、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、大腸がん、血液腫瘍などいくつかの種類のがんにおいて重要な役割を果たしているようである。BMI1の増幅や過剰発現は特にマントル細胞リンパ腫で顕著である[17]。BMI1の阻害によって、膠芽腫や[18]、化学療法抵抗性の卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、皮膚がんの増殖が阻害されることが示されている[4]。また、大腸がん幹細胞の自己複製はBMI1の阻害によって低下する。BMI1遺伝子を阻害することで大腸がん幹細胞が消失する可能性がマウス異種移植モデルでは示されており、大腸がん治療の新たな手法の可能性が示されている[19]。
ヒトの神経細胞におけるBMI1遺伝子の発現の喪失がアルツハイマー病の発症に直接関与している可能性を示す研究も報告されている[20][21]。