やまなし
宮沢賢治の短編童話
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概要
谷川の情景を「二枚の青い幻灯」と称し、谷川の底の蟹の兄弟が見る生き物たちの世界を描いたもので、晩春の5月の日中と初冬の12月の月夜の2部で構成されている。5月にはカワセミによる魚の殺生が行われ、12月には蟹の兄弟も成長し、ヤマナシの実りが訪れる。小学校6年の国語教科書に採用され[1]、広く親しまれており、その美しい透明感にファンが多い。
ヤマナシ(イワテヤマナシもしくはコリンゴ)はバラ科ナシ属の落葉高木であり、天沢退二郎は、実際には地味なやまなしの実が豊穣に描かれていると評価している。
なお、本来ヤマナシは春の5月頃開花し、秋の10月頃に成熟するものであり、また初期形の草稿では「十一月」となっているため、新聞発表形の「十二月」は誤植であるとも考えられている。
「クラムボン」
文中で蟹たちが語る「クラムボン」と「イサド」が何を指しているのかは不明である。「イサド」については宮沢賢治の他作品にも「伊佐戸」表記で登場する地名である。江刺郡の「岩谷堂」説がある[2]。「クラムボン」についてはその正体に対して様々な議論が繰り広げられている(以下、参考サイト[3]を参照した)。
- アメンボ説(十字屋書店版の注釈より)
- 小生物説(恩田逸夫などが言及)
- 魚という説
- 泡説(鈴木敏子・続橋達雄などが支持。出自不明)
- 光説(中野新治などが支持。出自不明)
- crabからの連想説(筑摩書房出版・「新修 宮沢賢治全集」より)
- 英語で蟹を意味するcrab、あるいはcrab+bomb(泡)に由来するとする
- 母蟹説(福島章などが支持)
- 「蟹の言語であるから不明」とするもの
- 「解釈する必要は無い」とするもの(佐野美津男などが支持)
- 全反射の双対現象として生じる外景の円形像説(近畿大学教授の伊藤仁之が提唱)
その他、
- 妹のトシ子説
- 蟹の兄弟にとって初めて見る、やまなしの花につけた造語だったとするもの
- kur(人) ram(低い) pon(小さい)という「アイヌ語でコロボックル」だという説(山田貴生)[4]
- 人間という説
などもある。
光村図書の小学校教科書に掲載された際には、クラムボンについて「水中の小さな生き物」との注釈が挿されたが、旧課程版では「正体はよくわからない」とも注釈されたことがある。現在の国語の教科書では、「作者が作った言葉。意味はよくわからない。」とされている。