EarthCARE
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EarthCARE(アースケア、Earth Clouds, Aerosols and Radiation Explorer)は、欧州宇宙機関 (ESA) と日本の宇宙航空研究開発機構 (JAXA) および情報通信研究機構 (NICT) が共同で開発した地球観測衛星。JAXAは打ち上げ後に使用する和名愛称をはくりゅうと命名しており、ESAでもこのJAXAによる名称をWhite Dragonとして紹介している[4][5]。2024年5月29日7時20分にスペースXのファルコン9ロケットによって米カリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられた[6]。


| 雲エアロゾル放射ミッション EarthCARE はくりゅう | |
|---|---|
|
| |
| 所属 |
欧州宇宙機関(ESA) 情報通信研究機構(NICT) 宇宙航空研究開発機構(JAXA) |
| 主製造業者 | エアバス |
| 公式ページ |
ESA JAXA |
| 国際標識番号 | 2024-101A |
| カタログ番号 | 59908 |
| 状態 | 運用中 |
| 目的 | 雲・エアロゾルの全球観測 |
| 設計寿命 | 3 年[1] |
| 打上げ機 | ファルコン9[1] |
| 打上げ日時 | 2024年5月29日 7:20(日本時間) |
| 物理的特長 | |
| 本体寸法 |
打上時:3.5m×2.5m×4.2m |
| 質量 |
本体: 約 1,960 kg[2] 推進剤: 約 310 kg[2] |
| 発生電力 | 約 3,400 W[1] |
| 姿勢制御方式 | 三軸、ヨーステアリング制御[2] |
| 軌道要素 | |
| 周回対象 | 地球 |
| 軌道 | 太陽同期準回帰軌道[1] |
| 高度 (h) | 393 km[1] |
| 軌道傾斜角 (i) | 97.05 度[1] |
| 軌道周期 (P) | 約 92.5 分[2] |
| 回帰日数 | 25 日[1] |
| 降交点通過 地方時 | 14:00 |
| 観測機器 | |
| ATLID | 大気ライダ |
| CPR | 雲プロファイリングレーダ |
| MSI | 多波長イメージャ |
| BBR | 広帯域放射収支計 |
| 引用資料[3] | |
搭載する4種類のセンサで地球全球の雲およびエアロゾルの鉛直分布や鉛直方向の移動速度を観測し、雲・エアロゾルの全球の三次元構造をモデル化するためのデータを提供して、気候変動予測シミュレーションの精度を向上させることを目的としている。雲やエアロゾルは気候・気温に直結する放射収支に大きな影響を与えると考えられているが、CO2などの温室効果ガスよりも科学的理解度が低く[7]、本機の観測成果により地球の温度変化メカニズム解明へ貢献することが期待されている[8]。
概要
EarthCARE計画は、ESAの進めている地球観測計画 (The Living Planet Programme) において、GOCE、SMOS、ADM-Aeolus、CryoSat-2、SWARMに続く第6次Earth Explore Missionとして、2003年に選定された。
日本においては、国家基幹技術の一つである海洋地球観測探査システムの一部として、二酸化炭素観測衛星いぶき・全球降水観測計画GPM/DPR・水循環変動観測衛星しずく(GCOM-W)等の地球観測衛星の一端を担う。雲観測用センサであるCPR (Cloud Profiling RADAR) を提供することで日本の技術的優位性を保ち、全球地球観測システム (GEOSS) 10年計画に対する日本の貢献として位置づけられている。
2008年6月、打ち上げを2013年とすることが決定された。2009年9月から行われた基本設計審査において大気ライダの設計に問題があることが発覚し、それに伴う設計変更のため打ち上げは2016年に延期され、その後も度々延期された。打ち上げロケットも当初は南米の仏領ギアナからロシアのソユーズで打ち上げる計画だったところ、2022年に始まったウクライナ侵攻以降は西側諸国がソユーズを使うことができなくなり、一旦はVega-Cによる計画に変更されるが[9]同ロケットが打上げ失敗から飛行再開が不透明となったことから、結局はファルコン9によって打ち上げられた[10]。
観測装置
4種類の異なる性質のセンサを搭載し、同時に観測することで多元的なシナジー効果が期待されている[12]。
大気ライダ (ATLID, Atmospheric Lidar)
ESAの開発した高スペクトル分解LIDAR(HSRL)。粒子などの散乱を受信し、雲とエアロゾルの鉛直分布や形状を観測する[13]。
雲プロファイリングレーダ (CPR, Cloud Profiling Radar)
JAXAとNICTが共同で開発した、94 GHzドップラー計測機能付きレーダ。衛星の進行方向前面に取り付けられており、鉛直方向100 m単位でのエコー強度とドップラー速度を測定することで、主に厚い雲の内部構造と鉛直移動速度を観測する。衛星搭載ミリ波アンテナは世界最大の直径2.5m[8][15]、衛星搭載としては世界初のドップラー速度計測センサである[11]。
多波長イメージャ (MSI, Multi-Spectral Imager)
ESAの開発したイメージャ。7chのセンサで反射・放射を計測し雲やエアロゾルの水平分布を観測する。搭載センサで唯一衛星進行方向と直交する方向の観測をするセンサ。
- パッシブセンサ(プッシュブルーム方式スキャナ[18])
- 観測波長帯[16]
- バンド1:0.660μm - 0.680μm、VIS(可視光線)
- バンド2:0.855μm - 0.875μm、VNIR(可視・近赤外)
- バンド3:1.625μm - 1.675μm、SWIR1(短波長赤外)
- バンド4:2.160μm - 2.260μm、SWIR2
- バンド5:8.35μm - 9.25μm、TIR1(熱赤外)
- バンド6:10.35μm - 11.25μm、TIR2
- バンド7:11.55μm - 12.45μm、TIR3
- 観測幅:150km(進行方向 左115km、右35km[18][注釈 2])
- 分解能:500m×500m
広帯域放射収支計 (BBR, Broadband Radiometer)
ESAの開発した放射収支計[19]。衛星の前方・後方・直下の3方向からの放射輝度を統合して測定する。