HB-EGF
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HB-EGF(heparin-binding EGF-like growth factor)は、ヒトではHBEGF遺伝子にコードされる、EGFファミリーのタンパク質である。ヘパリン結合性EGF様増殖因子などと訳されることもある[5]。
HB-EGFは、分裂促進性・走化性を有する膜固定型糖タンパク質として合成される。単球やマクロファージで産生される上皮成長因子(EGF)様因子であり、ヘパリンに対して親和性を有するため、HB-EGFという命名がなされている。創傷治癒、心肥大、心臓の発生や機能に関与することが示されている[6]。HB-EGFはヒトのマクロファージ様細胞で馴化した培地中で最初に同定された87アミノ酸からなる糖タンパク質で、高度に調節された遺伝子発現を示す[7]。エクトドメインシェディングによって可溶型で成熟型のHB-EGFが形成され、平滑筋細胞や線維芽細胞の分裂や走化性に影響を与える。膜結合型HB-EGFはジフテリア毒素の固有の受容体であり、細胞間の接触シグナル伝達に機能する。どちらの形態のHB-EGFも生理的過程のほか、腫瘍のプログレッションや転移、器官の過形成、アテローム性疾患などの病理過程に関与している[8]。HB-EGFは細胞表面の2つの部位、すなわちヘパラン硫酸プロテオグリカンとEGF受容体に結合することができ、細胞間相互作用に影響を与える[9]。
相互作用
がんにおける役割
ヒトのいくつかのがんやがん由来細胞株では、HB-EGFの遺伝子発現が大きく上昇していることが示されている。HB-EGFは悪性表現型の獲得に大きな役割を果たし、腫瘍の転移や浸潤性に寄与している[15]。HB-EGFの増殖や走化性に関する効果は、線維芽細胞、平滑筋細胞、ケラチノサイトなど特定の細胞種に対して影響を及ぼす。乳がんや卵巣がん細胞、上皮細胞やケラチノサイトでは、HB-EGFは強力な分裂促進因子として機能する[16]。がん由来細胞株の腫瘍形成に関するin vivoやin vitroでの研究では、HB-EGFの発現が腫瘍発生に必要不可欠であることが示されている。そのため、HB-EGF特異的阻害剤やHB-EGFに対するモノクローナル抗体は、HB-EGFの発現を標的としてがんを治療する新規治療法開発につながる可能性がある[17]。
心臓発生と脈管形成における役割
創傷治癒における役割
他の生理過程における役割
HB-EGFは、さまざまな生物学的過程における細胞活性の調節に重要な因子であることが知られている。HB-EGFは脳の神経細胞に広く分布しており、脳内の低酸素や虚血によって誘導され、その後神経発生を刺激する[7]。子宮のHB-EGFと胚盤胞のEGF受容体との相互作用は、胚-子宮間の相互作用や着床に影響を与える[22]。未成熟新生児が影響を受ける疾患である壊死性腸炎において、HB-EGFは腸管幹細胞や腸管上皮細胞を保護することが示されている[23]。骨格筋収縮時に発現するHB-EGFは、末梢でのグルコースの除去や再取り込みを促進し、耐糖能を改善する。運動時のHB-EGFのアップレギュレーションは、運動習慣による肥満や2型糖尿病などの代謝疾患の減少の分子基盤となっている可能性がある[24]。