HNF1A

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HNF1A(hepatocyte nuclear factor 1 homeobox A)は、ヒトでは12番染色体英語版に位置するHNF1A遺伝子によってコードされる転写因子である[5][6][7]。HNF1Aは多くの組織や細胞種において普遍的に発現している[8]。HNF1Aは肝臓で高度に発現している転写因子であり、いくつかの肝特異的遺伝子の発現調節に関与している[9]HNF1A遺伝子の変異は糖尿病の原因となることが知られている[10]。また、HNF1A遺伝子には冠動脈疾患のリスクの増加と関係する27のSNPのうちの1つが含まれる[11]

PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
記号HNF1A, HNF-1A, HNF1, IDDM20, LFB1, MODY3, TCF-1, TCF1, HNF1 homeobox A, HNF4A, HNF1alpha
染色体12番染色体 (ヒト)[1]
概要 PDBに登録されている構造, PDB ...
HNF1A
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

1IC8, 2GYP

識別子
記号HNF1A, HNF-1A, HNF1, IDDM20, LFB1, MODY3, TCF-1, TCF1, HNF1 homeobox A, HNF4A, HNF1alpha
外部IDOMIM: 142410 MGI: 98504 HomoloGene: 459 GeneCards: HNF1A
遺伝子の位置 (ヒト)
12番染色体 (ヒト)
染色体12番染色体 (ヒト)[1]
12番染色体 (ヒト)
HNF1A遺伝子の位置
HNF1A遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点120,978,543 bp[1]
終点121,002,512 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
5番染色体 (マウス)
染色体5番染色体 (マウス)[2]
5番染色体 (マウス)
HNF1A遺伝子の位置
HNF1A遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点115,087,039 bp[2]
終点115,109,153 bp[2]
RNA発現パターン
さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 DNA結合
protein dimerization activity
protein homodimerization activity
DNA-binding transcription factor activity
DNA-binding transcription activator activity, RNA polymerase II-specific
血漿タンパク結合
protein heterodimerization activity
RNA polymerase II transcription regulatory region sequence-specific DNA binding
DNA-binding transcription factor activity, RNA polymerase II-specific
細胞の構成要素 細胞質
細胞核
高分子複合体
生物学的プロセス regulation of transcription, DNA-templated
glucose homeostasis
regulation of transcription by RNA polymerase II
renal glucose absorption
insulin secretion
positive regulation of transcription initiation from RNA polymerase II promoter
transcription, DNA-templated
positive regulation of transcription, DNA-templated
glucose import
regulation of pronephros size
positive regulation of transcription by RNA polymerase II
transcription by RNA polymerase II
natural killer cell differentiation
肝臓発生
膵臓発生
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_000545
NM_001306179

NM_009327

RefSeq
(タンパク質)

NP_000536
NP_001293108
NP_000536.5
NP_001293108.1

NP_033353

場所
(UCSC)
Chr 12: 120.98 – 121 MbChr 12: 115.09 – 115.11 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス
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構造

遺伝子

HNF1A遺伝子は12番染色体のバンド12q24.2に位置し、10個のエクソンを持つ[7][12]。この遺伝子からは、選択的スプライシングによって8種類のアイソフォームが産生される[13]

タンパク質

HNF1Aタンパク質はHNF1ホメオボックスファミリーに属する。N末端の二量体化ドメイン(1–32番残基)、非典型的POUホメオドメインを含む二分節型DNA結合ドメイン(98–280番残基)、C末端のトランス活性化ドメイン(281–631番残基)の3つの機能的ドメインを持つ[14][15]。また、二量体化ドメインとDNA結合ドメインを連結する柔軟なリンカー領域(33–97番残基)も存在する[15]。結晶構造はいくつか解かれており、二量体化ドメインはターン構造で隔てられた2つのαヘリックスが二量体化することで4ヘリックスバンドルを形成している。DNA結合モチーフはヘリックスターンヘリックスを形成しており、モチーフには3本のαヘリックスからなるPOUホメオドメインが含まれている。このホメオドメインは、典型的ホメオドメインフォールドと比較して、2番目と3番目のヘリックスの間に伸長したループが挿入された非典型的構造をしている。この非典型的挿入部は相互作用面を安定化して転写効率を改善していると考えられている[14]。二量体化ドメインはホモまたはヘテロ二量体化を担う。形成された二量体にはαヘリックス1と1′からなる固い「ミニジッパー」構造が含まれ、αヘリックス2と2′からなる柔軟なC末端部分とは非典型的な強固なターン構造で連結されている[15]

機能

HNF1Aは肝臓腎臓膵臓脾臓胸腺精巣皮膚ケラチノサイトメラノサイトで発現している転写因子である[16]腸管上皮細胞の成長や細胞系統の分化に影響を与えることが示されている。また、HNF1Aは成熟B細胞形成における重要な細胞内因性転写因子である[17][18][19]。グルコース代謝や糖尿病に対するHNF1Aの関与も報告されており、膵臓β細胞におけるグルコーストランスポーターGLUT1やGLUT2の発現や、膵島におけるACE2の発現に関与している[20][21]。HNF1Aは、DPP-4(CD26)など2型糖尿病の管理に関与するいくつかのタンパク質の転写を促進する[22][23]。HNF1Aは他の器官においてもさまざまな代謝経路に関与しており、腸や腎臓では胆汁酸トランスポーターの転写調節因子である[24]。HNF1Aは肝臓の有機カチオントランスポーターの促進に関与しており、これらは特定の種類の薬剤の取り込みを担うため、その機能の喪失は薬物代謝の問題を引き起こす場合がある[25]。さらに、HNF1AはフィブリノゲンC反応性タンパクIL-1受容体英語版など炎症に関与する急性期タンパク質の発現を調節する[26]。膵臓腫瘍や肝細胞腺腫英語版では、正常な隣接組織と比較してHNF1Aの発現レベルが有意に低いことが観察されており、HNF1Aが腫瘍の抑制に関与している可能性が示唆されている[27][28]

臨床的意義

HNF1Aの変異は、「単一遺伝子糖尿病」の1種である若年発症成人型糖尿病3型英語版(MODY3)[6]や肝細胞腺腫の原因となる場合がある。HNF1タンパク質は卵巣の明細胞がんにも存在する[29][30]

ヒトでは、HNF1Aの変異は低用量スルホニル尿素薬応答性の糖尿病を引き起こす[31]。HNF1Aのヘテロ接合型変異を原因とする糖尿病患者でみられる極度のスルホニル尿素感受性は、糖尿病患者におけるHNF1Aの重要性を示すとともに、患者管理に遺伝薬理学がいかに寄与するかの明確な例となっている[32]。HNF1Aの変異を原因とするMODYの患者(30歳以下の糖尿病診断症例の約3%を占める)はスルホニル尿素薬治療に対して極めて高い感受性を示し、インスリン治療から移行できる[10]。HNF1A変異を原因とする糖尿病の患者はスルホニル尿素薬の血糖降下作用に対する感受性が高いことが記録されており、これは血糖降下薬に対する応答の変化が原因のようである。この効果はHNF1A欠乏モデルと一致しており、高血糖患者の管理における遺伝的基礎の重要性を示唆している[10]。HNF1Aに広くみられる遺伝的多様性も2型糖尿病発症のリスクや若年発症型糖尿病の浸透度の増加と関係している[33]

臨床マーカー

遺伝子座による遺伝的リスクスコア研究では、HNF1A遺伝子を含む27の遺伝子座の組み合わせに基づいて、冠動脈疾患イベントの発生と再発のリスクの高い人物の特定が行われており、高リスク群ではスタチン治療の臨床的有効性が最も大きいことが示されている。この研究はコミュニティコホート研究(the Malmo Diet and Cancer study)と、一次予防コホート(JUPITER、ASCOT)と二次予防コホート(CARE、PROVE IT-TIMI 22)の4つのランダム化比較試験に基づいたものである[11]

相互作用

HNF1Aは次に挙げる因子と相互作用することが示されている。

出典

関連文献

関連項目

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