インターロイキン-10

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インターロイキン-10: interleukin-10、略称: IL-10)またはCSIF(cytokine synthesis inhibitory factor)は、ヒトではIL10遺伝子にコードされるサイトカインである[5]。IL-10シグナルは、2分子のαサブユニット英語版と2分子のβサブユニット英語版からなるIL-10受容体英語版を介して伝達される[6]。IL-10の結合によってαサブユニットとβサブユニットの細胞質テールが、それぞれJAK1TYK2によってリン酸化され、STAT3シグナルが誘導される[6]

PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
記号IL10, CSIF, GVHDS, IL-10, IL10A, TGIF, interleukin 10
概要 IL10, PDBに登録されている構造 ...
IL10
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

1ILK, 1INR, 1J7V, 1LK3, 1Y6K, 2ILK, 2H24

識別子
記号IL10, CSIF, GVHDS, IL-10, IL10A, TGIF, interleukin 10
外部IDOMIM: 124092 MGI: 96537 HomoloGene: 478 GeneCards: IL10
遺伝子の位置 (ヒト)
1番染色体 (ヒト)
染色体1番染色体 (ヒト)[1]
1番染色体 (ヒト)
IL10遺伝子の位置
IL10遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点206,767,602 bp[1]
終点206,774,541 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
1番染色体 (マウス)
染色体1番染色体 (マウス)[2]
1番染色体 (マウス)
IL10遺伝子の位置
IL10遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点130,947,582 bp[2]
終点130,952,711 bp[2]
RNA発現パターン
さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 血漿タンパク結合
growth factor activity
cytokine activity
interleukin-10 receptor binding
protein dimerization activity
細胞の構成要素 細胞外領域
細胞外空間
生物学的プロセス negative regulation of chronic inflammatory response to antigenic stimulus
positive regulation of MHC class II biosynthetic process
negative regulation of endothelial cell apoptotic process
造血
negative regulation of interferon-gamma production
regulation of sensory perception of pain
positive regulation of B cell apoptotic process
negative regulation of chemokine (C-C motif) ligand 5 production
response to inactivity
negative regulation of cytokine activity
negative regulation of interleukin-1 production
cellular response to hepatocyte growth factor stimulus
cellular response to estradiol stimulus
negative regulation of interleukin-6 production
老化
positive regulation of DNA-binding transcription factor activity
negative regulation of apoptotic process
negative regulation of cytokine production involved in immune response
糖質コルチコイドへの反応
cytoplasmic sequestering of NF-kappaB
negative regulation of interleukin-18 production
negative regulation of MHC class II biosynthetic process
response to activity
有機物への反応
response to carbon monoxide
leukocyte chemotaxis
type 2 immune response
negative regulation of myeloid dendritic cell activation
response to insulin
negative regulation of interleukin-8 production
リポ多糖への反応
B cell proliferation
negative regulation of T cell proliferation
negative regulation of nitric oxide biosynthetic process
branching involved in labyrinthine layer morphogenesis
defense response to bacterium
regulation of complement-dependent cytotoxicity
免疫応答
遺伝子発現調節
B cell differentiation
regulation of isotype switching
negative regulation of tumor necrosis factor production
negative regulation of membrane protein ectodomain proteolysis
炎症反応
cellular response to lipopolysaccharide
negative regulation of B cell proliferation
negative regulation of inflammatory response
negative regulation of cytokine production
positive regulation of transcription by RNA polymerase II
negative regulation of interleukin-12 production
defense response to protozoan
negative regulation of sensory perception of pain
positive regulation of macrophage activation
liver regeneration
regulation of synapse organization
positive regulation of endothelial cell proliferation
negative regulation of cell population proliferation
negative regulation of heterotypic cell-cell adhesion
positive regulation of heterotypic cell-cell adhesion
positive regulation of cell cycle
negative regulation of mitotic cell cycle
endothelial cell apoptotic process
regulation of response to wounding
negative regulation of vascular associated smooth muscle cell proliferation
positive regulation of vascular associated smooth muscle cell proliferation
interleukin-12-mediated signaling pathway
positive regulation of transcription, DNA-templated
negative regulation of autophagy
サイトカイン媒介シグナル伝達経路
positive regulation of receptor signaling pathway via JAK-STAT
positive regulation of pri-miRNA transcription by RNA polymerase II
negative regulation of hydrogen peroxide-induced neuron death
positive regulation of sprouting angiogenesis
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_000572

NM_010548

RefSeq
(タンパク質)

NP_000563

NP_034678

場所
(UCSC)
Chr 1: 206.77 – 206.77 MbChr 1: 130.95 – 130.95 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス
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構造

IL-10タンパク質はホモ二量体であり、各サブユニットは178アミノ酸から構成される[7]

IL-10は、IL-19IL-20IL-22IL-24IL-26I型インターフェロン(IFN-α、β、ε、κ、ω)、II型インターフェロン(IFN-γ)、III型インターフェロン英語版IL-28AIL-28B英語版IL-29IFNL4英語版などのIFN-λ[8])とともにクラス2サイトカインに分類される[9]

発現と合成

ヒトでは、IL-10はIL10遺伝子にコードされる。IL10遺伝子は1番染色体に位置し、5個のエクソンから構成される[5]。IL-10は主に単球によって産生され、また程度は低いもののTh2細胞マスト細胞CD4+CD25英語版+Foxp3+制御性T細胞、そして活性化されたT細胞B細胞の特定のサブセットからも産生される。単球によるIL-10の産生はPD-1によって開始される場合がある[10]。また、β2アドレナリン受容体英語版[11]カンナビノイドCB2受容体[12]などのGPCRを介したアップレギュレーションも行われる。刺激されていない組織ではIL-10の発現は最低限であり、常在菌叢や病原菌叢による刺激を必要とするようである[13]。IL-10の発現は転写、転写後段階で緊密に調節されている。単球では、TLRFc受容体経路の刺激後にIL10遺伝子座の広範囲の再編成が観察される[14]。IL-10の誘導にはERK1英語版/2p38NF-κBシグナルが関係しており、NF-κBやAP-1といった転写因子プロモーター領域に結合することで転写が活性化される[14]。IL-10は、自己分泌によるIL-10受容体刺激とp38シグナル伝達経路の阻害によるネガティブフィードバックループを介して、発現を自己調節している可能性がある[15]。IL-10の発現は転写後段階でも広範囲の調節を受けており、AUリッチエレメント英語版[16]や、let-7英語版[17]、miR-106[18]などのmiRNAを介してmRNA安定性制御が行われている可能性がある。

機能

IL-10は1991年に発見され[19]、当初サイトカインの分泌、抗原提示、CD4+T細胞の活性化を抑制することが報告された[20][21][22][23]。その後の研究により、LPSや細菌産物によって誘導される、骨髄系細胞によるTLRを介した炎症性サイトカインTNF-α[24]IL-1β[24]IL-12[25]、IFN-γ[26])の分泌を主に阻害することが示された。

腫瘍に対する効果

腫瘍を有するマウスへのIL-10の投与によって腫瘍の転移が阻害されることが示され、その機能がより精妙なものである可能性が浮上した[27]。その後の複数の研究室での研究により、腫瘍免疫の文脈ではIL-10は免疫刺激能を有することが支持されている。トランスジーンによる腫瘍細胞株でのIL-10の発現[28][29]やIL-10の投与は原発巣の成長を制御し、metastatic burdenを低下させる[30][31]。また、PEG化英語版組換えマウスIL-10(PEG-rMuIL-10)は、IFN-γの分泌やCD8+T細胞依存的な抗腫瘍免疫を誘導することが示されている[32][33]。PEG化組換えヒトIL-10(PEG-rHuIL-10)は、CD8+T細胞からのグランザイムBパーフォリンといった細胞傷害性分子の分泌を高め、T細胞受容体依存的なIFN-γの分泌を増強することが示されている[34]

疾患における役割

マウスでの研究では、IL-10はマスト細胞でも産生され、アレルギー反応部位でこれらの細胞が持つ炎症作用に対抗することが示されている[35]

IL-10は誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)に影響を及ぼす。IL-10の欠損はCOXの活性化、その結果生じるトロンボキサン受容体英語版の活性化を引き起こし、血管内皮や心臓の機能不全を引き起こすことがマウスで示されている。IL-10がノックアウトされたフレイルマウスは、加齢とともに心血管系の機能不全を発症する[36]

IL-10はマイオカイン英語版と関連づけられている。運動によってIl-1ra、IL-10、sTNFR英語版の血中濃度が上昇することから、身体活動が抗炎症サイトカインの環境を強化することが示唆される[37][38]

多発性硬化症の患者では、健常者と比較してIL-10濃度の低下が観察される[39]。IL-10はTNF-α変換酵素英語版を調節しているため、IL-10濃度の低下によってTNF-α濃度の効果的な調節が行われなくなる[40]。その結果、TNF-α濃度が上昇し、炎症が引き起こされる[41]。TNF-αはTNFR1を介してオリゴデンドログリアの脱髄を誘導し、慢性炎症も神経の脱髄と関連づけられている[41]

メラノーマ細胞株では、IL-10はNKG2D英語版リガンドの表面発現を調節する[42]

転写因子FOXP3は制御性T細胞(Treg)の必須の分子マーカーである。FOXP3の多型(rs3761548)はTregの機能や、IL-10、IL-35英語版TGF-βといった炎症調節サイトカインの分泌に影響を及ぼすことで、胃がんなどのプログレッションに関与している可能性がある[43]

近年のマウスでの研究では、IL-10が食作用の重要なエフェクターであるCD36英語版を調節し、脳内出血後の血腫のクリアランスを促進していることが示されている[44]。オスマウスではIL-10の欠乏によって外傷性脳損傷の悪化がみられるものの、メスマウスではこうした効果はみられない[45]

臨床応用

マウスでのノックアウト研究により、IL-10は消化管において必須の免疫調節因子として機能していることが示唆されている[46]。また、クローン病患者は組換えIL-10産生菌を用いた治療に対して良好な応答を示し、体内での過剰な免疫応答への対抗にIL-10が重要であることが示されている[47]

さまざまな自己免疫疾患の患者に対し、組換えヒトIL-10(rHuIL-10)を用いた臨床試験が行われている。期待に反して、rHuIL-10治療はクローン病[48][49][50]関節リウマチ[51]の患者に対して有意な影響を及ぼさなかった。乾癬の臨床試験では当初有望なデータが得られたものの[52]、プラセボ対照ランダム化二重盲検による第II相試験では臨床的意義が示されなかった[53]。rHuIL-10のヒトへの影響に関する研究では、rHuIL-10は炎症抑制よりもむしろ炎症促進効果をもたらしていることが示唆されている[54][55]

PEG化IL-10

腫瘍免疫分野では、PEG化組換えヒトIL-10(PEG-rHuIL-10、AM0010、pegilodecakin)による治療を評価する臨床試験が行われており、前臨床データと同様に抗腫瘍効果が報告されている[56]In vitroin vivoで報告されていたIL-10の免疫抑制効果とは対照的に[21][22][23][24][25]、PEG-rHuIL-10を用いたがん患者の治療では、IFN-γ、IL-18IL-7GM-CSFIL-4といった免疫刺激性のサイトカインの増加がみられ、CD8+T細胞の活性化が観察された[56]。こうした結果は、PEG-rMuIL-10を用いた前臨床データや[32][33]、rHuIL-10を用いたヒトに対する試験の結果とも一致している[54][55]。これらのデータは、IL-10は細菌産物によって刺激された骨髄系細胞においては免疫抑制効果を発揮しているが、ヒトでのrHuIL-10やPEG-rHuIL-10による治療では主に免疫刺激作用を示すことを示唆している。2018年時点で、PEG-rHuIL-10は転移性膵がんに対する第III相臨床試験が行われている[57]

相互作用

IL-10はIL10RA英語版と相互作用することが示されている[58][59][60][61][62]

出典

関連文献

外部リンク

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