フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレーター
国外の市場にオンラインギャンブルサービスを提供するフィリピンの認可企業
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フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレーター(英語:Philippine Offshore Gaming Operator、略称:POGO、2023年10月にインターネット・ゲーミング・ライセンシー(IGL)に改称)[1]は、国外向けオフショア・ギャンブル産業を担うフィリピンの認可企業である。その大部分は中国市場向けである。2016年、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領はPOGOの営業を許可した。後にPOGOはボンボン・マルコス大統領によって禁止され、違法と宣言された[2][3]。この期間中、業界は隆盛し、フィリピン政府に多大な影響をもたらした[4]。

背景
POGOは、フィリピンで運営されるが国外の顧客を対象とするオンラインギャンブル企業である。POGOを合法的に運営するためには、フィリピン娯楽ゲーミング公社(PAGCOR)というライセンス取得が必要である。このライセンス取得には、フィリピン国内の個人、フィリピン国民、およびオフショア・ギャンブルが違法とされる国や地域での利用を制限する義務が設けられている[5]。
2016年、PAGCORはフィリピンのオンラインギャンブル企業PhilWebのライセンスを更新しない決定を下した。その替わりに、歳入を増やす取り組みとして、POGOのライセンス申請処理を開始した[6]。
ライセンスには3つのカテゴリーがある。
- カテゴリー1は、女性のオンラインギャンブルディーラーによるライブストリーミングを伴うサービスである。
- カテゴリー2と3は、バックオフィスサポートを提供するビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)のサブセクターである[7]
BPO業界団体であるフィリピンITビジネスプロセス協会(IBPAP)は、POGOをBPO企業とは見なしていない。その理由は、BPO企業がフィリピン経済区庁(PEZA)や投資委員会(BOI)に登録するのに対し、POGOはPAGCORからライセンスを得ており、管轄がまったく異なるからである[8]。報道によれば、POGOメンバーは自主的に「サービスプロバイダー・POGO協会」(ASPAP)という組織を立ち上げたとされる[9]。
2021年6月、フィリピン議会上院はPOGOに追加課税する法案を承認した。この法案は、マニー・パッキャオら17名の上院議員によって支持され[10][11]、2021年9月にドゥテルテ大統領によって署名され法律として成立した[12]。
普及

2016年、中国の支援を受けマニラ首都圏に拠点を置くPOGOが営業を開始[4]。同年、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の任期開始すると急増した[13]。PAGCORによると、2019年のピーク時には300近いライセンス事業者がいた。2019年8月以降、PAGCORは新規企業へのライセンス発給を禁止[13]。2023年末、規制強化により営業しているPOGOの数は約75に減少した[14][15]。
2024年第3四半期には、54社に減少し、内訳はIGLが33社、認定プロバイダーが11社、ビジネス・プロセス・アウトソーシング企業が10社で構成されている。KMC Savills Inc.は、POGOが少なくとも800,000平方メートルのオフィススペースを使用していると試算している[5]。
POGOは、主に中国市場向け(一部では韓国やベトナム[16])に急成長し、2019年には最初の9ヶ月間で総需要の34%を占める386,000平方メートルを購入し、最大のオフィス借り手としてマニラ首都圏の不動産市場を牽引した。年間賃料は商業用で2億1900万ドル、住居用で6億8000万ドルに上った[17]。しかし、不動産コンサルタント会社「リーチウ・プロパティ・コンサルタンツ(LPC)」によると、2020年から2022年にかけて63万平方メートルのオフィススペースを解約するなど撤退がすすんだが、2022年10月時点でも依然として最大100万平方メートルもの広大なスペースを占有していると報告されている。そのため、もしPOGOが完全に撤退した場合、フィリピンの不動産市場は年間推定189億ペソもの莫大なオフィス賃料収入を失うことになると懸念されている。
影響
経済

2015年以来、PAGCORはPOGOからライセンス料を徴収しており、これはフィリピンの総賭博収益の2%に相当する[18]。POGOからの収益は、PAGCORの総収入の5〜6%未満であった[14]。2017年以降、内国歳入庁 (BIR) はライセンス料に加え、国内プロバイダーに5%のフランチャイズ税を課し、労働者には所得税を課している。いくつかの企業は、支払いを怠った疑いで閉鎖された[19]。2021年9月、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領の「共和国法第11590号」(POGO課税法)の発令により、POGOに対する追加税が課された[20]。フィリピン財務省 (DoF) のデータによると、2017年から2022年10月までにPOGOから徴収された税金の合計は538億ペソに達し、内訳はPAGCORによるものが300億ペソ、2018年以降のBIRによるものが238億ペソであった[21]。2019年、徴収された税金総額は144.4億ペソに達した[21]。PAGCORによると、POGOはライセンス料として70億ペソを生み出した[14]。国家経済開発庁も同年、POGOが1045億ペソ(フィリピンの国内総生産の0.67%)を貢献したと報告した[21]。しかし、その後POGOからの収益は減少し[21]、特にCOVID-19パンデミックが影響した[15]。2023年までに、事業者数の減少に伴い、POGOが生み出したライセンス料は52億ペソまで減少した[14]。2024年7月中旬、フィリピン財務省はPOGO事業の年間純費用が995.2億ペソであると報告した。一方、業界の推定総経済的便益は1664.9億ペソに達し[22]、そのうち直接的な利益は推定606.8億ペソであった。しかし、フィリピン財務省は、海外直接投資に影響を与える否定的な評判リスクの影響を含む、年間推定2657.4億ペソという著しく高い経済的費用を指摘した[22]。
雇用
2019年10月、POGO産業では推定47万人が雇用されており、年間給与総額は90億ドルに上った[17]。これには10万人以上の中国人労働者が含まれているとされる[23]。
フィリピン政府は、フィリピンで働く中国人労働者数について様々な報告をしている。2019年5月時点で、POGOに雇用されている外国人は13万8千人おり、そのうち8万3,760人は6ヶ月間の国内滞在を許可する特別就労許可証の保持者であった。POGOで雇用されている者のうち、フィリピン国籍者はわずか17パーセントであった[24]。2019年12月初旬、BIR(内国歳入庁)、労働雇用省 (DOLE)、およびPAGCORの数値によると、中国人労働者数が少なくとも4万4千人から9万3千人の範囲である推定されている[25]。COVID-19パンデミックの期間中、雇用は大幅に減少し[26]、BIR(内国歳入庁)による報告では、POGO産業におけるフィリピン人の雇用率が徐々に増加していることが示され2021年には半数以上に達していることがわかっている[27]。
| 日付 | フィリピン人 | % | 外国人 | % | 合計 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2020年3月 | 30,521 | 25.23% | 90,455 中国人: 69,613 ベトナム人: 3,000± インドネシア人: 2,400± 残りは他46カ国の出身者。 |
74.77% | 120,976 | PAGCOR[28] |
| 2020年 | 13,991 | 33.01% | 28,394 | 66.99% | 42,385 | BIR[27] |
| 2021年 | 15,745 | 53.22% | 14,838 | 50.16% | 29,583 | BIR[27] |
| 2022年10月 | 16,736 | 48.87% | 17,509 | 51.13% | 34,245 | BIR[27] |
| 19,671 | 47% | 22,184 中国人: 7,534 |
53% | 41,855 | PAGCOR[21] | |
| 23,118 直接: 11,776 間接: 11,342 |
n/a | n/a | n/a | ASPAP[21] | ||
| 2023年 | 25,064 | 51.17% | 22,915 | 46.79% | 48,979 | [29] |
POGOの閉鎖が迫る中、PAGCORによると2024年第3四半期までに合計48,883人の労働者がおり、そのうち58.2%(28,462人)が地元フィリピン人である[30]。一方、DOLE(労働雇用省)によれば、主にNational Capital RegionとCalabarzonにある54社によって26,996人のフィリピン人が雇用されており、その他に2,549人の間接労働者がいる[31]。
観光
2019年、中国からフィリピンへの観光客到着数は174万人で、観光客供給国第1位の韓国に次いで第2位であった。COVID-19パンデミック期間中に中国が課した渡航禁止措置により、2021年のフィリピンへの中国人訪問者数は6,615人に減少した。当時、中国は自国民に対するギャンブル事業の取り締まりを強化しており、フィリピン政府に対しPOGOを停止するよう要請していた[21]。
課題と論争
POGOは、フィリピンにおける中国の国家支援型投資の象徴であると批判されてきた。POGOは政府によって推進されたと認識されていた[4]。
所有権と登録
2019年の「Nikkei Asian Review」の報道によると、POGOの所有者のほとんどは匿名である。当時、PAGCORは2016年以降フィリピンで設立された60のPOGOを記録していた。10社がフィリピンで、43社がイギリス領ヴァージン諸島で、残りが他の6カ国で登録されていたが、そのほとんどは所有者の身元が秘密にされている場所であった[17]。BIR(内国歳入庁)に登録されていたのはわずか15社で、そのうち納税していたのは6社であった。16社がフィリピンの証券取引委員会に登録されていた[17]。2019年後半、「Philippine Daily Inquirer」は、政府がその年に違法操業していたPOGO約200社を閉鎖したと報じた。地区代表のジョーイ・サルセダは後に、まだ少なくとも100社は存在すると主張した[25]。2020年、マニラ首都圏を拠点とするPOGOで推定7万人の中国人労働者いることと、許可を得ていないPOGOが少なくとも200社ある報告されている。労働許可証の発給手続きにおける汚職が指摘された[4]。また中部ルソン地方の違法拠点は解体され、約2,000人の外国人が国外退去となった[32]。
フィリピンと中国の関係への影響
2019年、POGOはフィリピンと中国の間の外交問題を引き起こしている[17]。中国側は、POVOの労働者と資料者の大半を占める自国民の関与に不快感を表明した[13][4][17]。これは、中国ではすべての形態のギャンブルが違法であり[23](マカオを除く)、オンラインカジノはフィリピン国外からしかプレイできないためである[17]。中国は特に、POGOがマネーロンダリングなどの犯罪を悪化させる可能性があると警告した[23]。中華人民共和国政府は公式にPOGOを拒否し[4]、「現代社会における最も危険な悪性腫瘍」であり、世界中の人々に嫌われているものだと警告した[17]。2019年8月、フィリピン政府がすべての懸念事項に対処しつつPOGOの新規申請を停止する措置を講じたことを受け[23][33]、中国政府はフィリピンに対しPOGOを停止するよう促し[33]、自国民を違法に雇用し虐待しているPOGOの処罰と、被害者の保護を要求した[13][25]。中国共産党中央委員会総書記の習近平は、8月29日に北京で行われた二国間会談で、フィリピン大統領のロドリゴ・ドゥテルテに対し、個人的にこの嘆願を繰り返した[33]。2019年9月、マラカニアン宮殿での記者会見で、ドゥテルテはこの要請を拒否し、POGOはフィリピン経済にとって有益であり[23]、POGOが禁止されれば多くの人々が職を失うことになると述べた[33]。
外国人の雇用と居住
一部の地元住民は、POGOに関与する中国やその他の外国人の流入を批判している。入国管理当局の強制捜査で明らかになったように、仕事を奪い[18]、フィリピン人の雇用を制限している[4]と考えられるからである。PAGCORは、主に中国人プレイヤーに対応するために、官話のネイティブスピーカーが多数必要であると主張した[18]。2019年には、マニラの住民が中国人の入居者を優先するためにアパートの住居を退去させられたとの報告があった[13]。2020年、政府はこの産業のために中国人を優遇しているとの見方を否定した[4]。
治安問題

POGOに関連する犯罪行為を含む治安問題が報告されている[15][32]。具体的には、POGOの違法な深夜営業、中国からの不法就労者の増加、政府機関の対応の弱さである。これは、観光省による「アライバルビザ」プログラムによってさらに助長され、中国国民がフィリピンに入国しやすくなり、POGOで違法労働者の増加につながった[25]。
2019年、監視団体「Movement for the Restoration of Peace and Order」は、フィリピンがPOGO関連犯罪の温床になりつつあると述べた。同団体によれば、不法就労者はコンドミニアムに詰め込まれ、各戸に最大40人が2交代または3交代制で居住していた。当局は、家宅捜索したPOGOから数人の違法な中国人労働者を逮捕し、最終的に強制送還した[25]。2017年1月から2023年6月までに、フィリピン国家警察は、合計4,355人の犯罪者を記録した。2023年には、上半期だけで4,039人に上った[36]。関係者の大半は中国国民であった[37]。2019年11月から2023年3月までに、国家捜査局は113件の事件があり、うち65件が人身売買に関するものであったことを明らかにした[32]。
フィリピン国家警察での報告[38]では、身代金目的の誘拐、不法監禁があった[38][39]。2017年から2019年後半までに、PNP誘拐対策グループ(AKG)は67件の誘拐事件を報告した。会社を辞めようとした従業員が被害者となるケースもあり、警察官が加害者を助けていたため、救出された被害者が当局への協力を拒否する事態も起きていたと報告されている[25]。これらのPOGO施設は、オンライン詐欺や人身売買に関与していた[40]。
2023年には、パンパンガ、ラスピニャス、パサイの3つの拠点の家宅捜索で、5千人近くの被害者が救出された[40][41]。パサイでは拷問部屋が発見され[41][42]た。同市内の詐欺に関与したとされる別の施設では、警察が登録済みのSIMカードを28,000枚押収した[40]。他にも銃器の不法所持[40]、軽犯罪[13]、贈収賄、売春宿経営に関与していた中国人が逮捕されている[13] [13][4][43]。また、一部のギャンブルシンジケートは、フィリピン人警察官を保護者として雇い、腐敗した入国管理局や警察に金銭を支払っていることが明らかになった[13]。これらを受けて、PAGCORは厳格な規制を施行することになった。
2023年第4四半期、PAGCORがPOGOは「あまりにもネガティブになった」と述べたため、「インターネット・ゲーミング・ライセンシー(IGL)」と改称され、業界に新しい規則と規制が導入された[14]。2023年10月、中国人が詐欺行為に関与しているとの報告が相次ぐ中、中国はマニラの中国大使館を通じて声明を発表し、フィリピンに対しPOGO関連犯罪を防止するための強力な措置を講じるよう求めた[44]。2024年上半期に中央ルソン地方のPOGOで行われた警察の家宅捜索に続き、PNP誘拐対策グループ(ACG)は「未報告の殺人」を確認した[45]。2024年7月、ボンボン・マルコス大統領はPOGO禁止令を発動した。大統領府組織犯罪対策委員会(PAOCC)とPNP反サイバー犯罪グループ(ACG)は、オンライン詐欺の大幅な減少を報告した。PNP反サイバー犯罪グループ(ACG)のデータによると、5月には20件あったものが、7月にはわずか2件となった[46]。
財政
POGO企業の脱税や、国家経済への貢献が少ないことが指摘されている[4]。反マネーロンダリング評議会(AMLC)のデータによると、2017年から2019年にかけての540億ペソ相当の取引のうち、140億ペソ(26%)が疑わしい取引であると見なされている。フィリピン財務省(DoF)は、POGO関連の犯罪がビジネスにリスクをもたらす可能性があると指摘し、フィリピンが海外直接投資において167~262億ペソを失うリスクがあると推定した[21]。PAGCORは、閉鎖されたPOGO企業から未払いの22億ペソを徴収できなかったと報じられている。政府がこれ以上の損失を被るのを避けるため、2023年、PAGCORは2025年第3四半期までに45のカジノを民営化する計画を発表し、600億ペソから800億ペソの収益目標を掲げていた[36]。
その他の問題
POGOがもたらす安全保障上の脅威が指摘されている[4]。
2020年、環境保護論者たちはカヴィテ州のマングローブ地域が「POGOアイランド」に開発されたことを非難した[4]。
COVID-19パンデミックによるロックダウン中に、PAGCORはマニラ首都圏でのPOGO事業再開を積極的に推進したことも非難の的になった。フィリピンITビジネスプロセス協会(IBPAP)は後に、POGOが「必要不可欠なサービス」を実行しており、自分たちのセクターの一部であるという主張を否定した[4]。
2024年8月、フィリピン議会はハリー・ロケがパンパンガ州のPOGO企業の弁護士として関与していた疑惑を調査した。彼は下院公安・安全委員会で偽証したとし議会侮辱罪で告発され、24時間の拘留下に置かれた[47]。
摘発
2023–2024年 バンバンでの摘発

2023年2月1日、当局はタルラック州バンバンにおいて、暗号通貨の投資詐欺に関与した疑いのあるPOGO企業「Hongsheng Gaming Technology, Inc.」を、タルラック・シティの地方裁判所(RTC)が発行した令状に基づき捜査した[48][49]。最大で851人(外国人351人、フィリピン人500人)の労働者が拘束された。同社の他の役員3人は逃亡中であった[48]。
2023年7月7日、PAGCORはこの摘発を受け、同社にすべてのギャンブル活動を停止するよう命じた[50]。
2024年3月13日、当局はブラカン州マロロスのRTCが発行した2通の捜索令状に基づき、「Zun Yuan Technology Inc.」を操作し、600人以上の労働者を救出した[注釈 1]。同時に銃器や詐欺用の道具類が押収された[55]。救出されたフィリピン人のうち9人は、POGOでの身体的虐待や拷問の疑惑[56]、詐欺といった違法活動の証人になった[57]。不法滞在中の外国人も逮捕され[51]、うち8人は人身売買と重大な不法監禁の罪でカパスのRTCに起訴された[58]。
POGO施設内のオフィスや寮のほか[59]、Baofu Land Development Inc. が所有し[60]、町役場の隣に位置する[59]7.9-hectare (20-acre)の複合施設をさらに捜索したところ[60]、36の建造物[58][56](9つのヴィラ[58]、プール[59][56]、3つのヴィラを結ぶ地下トンネル[56]、38台[58]から51台[52]の車両、9台のカートおよび重機[52])が明らかになった。27個の金庫から、現金およそ800万ペソや、暗号通貨関連の資料や書類などが発見された[58]。2024年4月、大統領府は反マネーロンダリング評議会(AMLC)に対し、Zun Yuanの施設およびその他の資産を凍結・保全するよう指示した[52]。
2024年3月、ウィン・ガッチャリアン上院議員は、町長のアリス・グオが同社と関連している疑惑を明らかにした[56]。2022年に選出されたアリス・グオは[60]、Hongsheng Gaming Technology Incのライセンスを申請していた[56]。2020年後半、町議会はその設立と運営を承認した[49]。2022年、Hongsheng Gaming Technology IncはPAGCORによって運営ライセンスを取り消されていた[49]。2023年の摘発後、このPOGOはZun Yuan Technology Inc.に改名された[56]。2023年5月、元老院の調査中、上院議員らは諜報報告を引用し、POGO施設がサイバー犯罪や監視活動に関与したとされる「傭兵」を収容していたと述べた[60]。一方、アリス・グオは自身に対する疑惑に反論し、自分は不動産のかつてのオーナーであり、施設内で発見された彼女の車両は2020年に売却されたものだと述べた[61]。アリス・グオはBaofu Land Development Inc.の設立者の一人であったことを認め、後に政界入りする際に株式を売却したと述べた[62]。アリス・グオが元老院の調査へのさらなる参加を拒否したため、元老院は7月に逮捕状を発行した[50]。同月、アリス・グオは国外に逃亡したとされ、2023年9月3日にインドネシアのバンテン州タンゲランで逮捕された[63]。
2024年5月、内務・地方自治省(DILG)は、POGO企業への営業許可証発行に関連して、アリス・グオ、レオナルド・アスンシオン副町長、9人の元・現職町議会議員、および他の2人の職員をオンブズマンに告発した。オンブズマンは後にDILGの調査を引用し、アリス・グオが町長の地位に就いた後もBaofu Land Development Inc.にビジネス上の利益を有していたこと、また、最初の摘発後も、フィリピン消防法に準拠していないにもかかわらず、POGOハブが営業許可証を保持していたことが明らかになったと指摘した[50]。5月31日、オンブズマンのサミュエル・マルティレスは、アリス・グオに対し6ヶ月間の予防的停職処分を下した。8月12日の決定で、マルティレスはアリス・グオを重大な不正行為で解任し、公職からの永久資格剥奪を命じた。一方、残りの者たちは公務の最善の利益に反する行為で有罪となった。DILGは、アリス・グオの前任者であるホセ・アントニオ・フェリシアーノに対する告発の可能性を調査するよう命じられた[50]。8月30日、AMLCを含む法執行機関は、アリス・グオと他35人に対し、中央ルソン地方の摘発されたPOGOハブで発生した[64]犯罪活動による収益1億ペソ以上をマネーロンダリングした疑いで、司法省に87件のマネーロンダリング容疑で告発した[63][64]。また、この論争はアリス・グオの国籍に関する疑惑を明らかにし、彼女の選挙勝利の無効を求めるクオ・ワラント申立てがマニラの地方裁判所に提出され、また、選挙管理委員会には立候補時の「重大な虚偽表示」の容疑で告発がなされた[64]。
2024年ポラックでの摘発
2024年6月4日、犯罪捜査検出グループ(CIDG)とPAOCCの合同捜査チームは、アンヘレス市との境界近くにあるポラックのグランド・パラッツォ・ロイヤル複合施設にあるPOGO企業、Lucky South 99 Outsourcing Inc.の46棟の建物を含む5.8ヘクタールの複合施設および他の法人を捜査した[65]。同日、マロロス地方裁判所第14支部は、2003年人身取引禁止法違反の容疑で捜索令状を発行した。しかし、裁判官は6月5日、改正裁判所規則第126条に基づき、申請を却下する3ページの命令書を発行した[65]。2024年6月7日、サンフェルナンド(パンパンガ州)の地方裁判所(RTC)が別の令状を発行した。最高裁判所は、この最初の令状が取り下げられたとされる疑惑について調査している。当初、190人が逮捕された。令状執行中に、フィリピン人29人を含む中国人、ベトナム人、マレーシア人計158人が救出された。
リサ・ホンティヴェロス上院議員は、何者かがPOGO事業者に法執行機関の作戦を密告したのではないかと疑っている。この情報漏洩について、犯罪捜査が開始された。PAOCC当局者によると、捜査官による安否確認の前に、「POGO労働者と疑われる外国人157人が立ち去るのが目撃された」とのことである[66]。PAOCCチームが現場に到着する前に、POGOビルにいた外国人1,000人のうち、発見された容疑者はわずか140人であった。シャーウィン・ガッチャリアン上院議員は、中国の犯罪シンジケートが司法にまで情報収集を行っていたと指摘した。Lucky South 99 Outsourcing Inc.は、その運営に利益誘導で有罪判決を受けたデニス・クナナンを雇用していた[66]。ポラック市長のジング・カピルは、Lucky South 99 Outsourcing Inc.に対して2024年の市長許可証は発行されていないと明言し、自身の関与疑惑を否定した[67]。2022年9月、このPOGO企業は違法行為により以前にも手入れを受け閉鎖されたが、その後も無許可で営業を続けていた[68]。
2024年ラプ=ラプ市での摘発
2024年8月31日、3人のインドネシア人がPOGO施設を脱出し、インドネシア大使館に保護を求めた。その後、フィリピン当局は入国管理局(BI)からの任務命令に基づき、ラプ=ラプ市で捜査を実施した[69]。違法なPOGOを運営していた疑いのあるツーリスト・ガーデン・ホテル・リゾートでは[70]、恋愛詐欺や金融詐欺で使用された複数の電子機器[70]、および運営による収益の一部である現金が押収された[69]。外国人169人(中国人93人、インドネシア人69人、ミャンマー人6人、マレーシア人1人[69][71])と、未成年者1人を含むフィリピン人1人が救出され[69]、後にマニラのPAOCC事務所に連行された[69][71]。このPOGOには、上述のバンバンとポラックにあった従業員が移動してきたと考えられている[70]。2024年9月、中部ビサヤ地方のNBIは、POGO運営者とされるZhao Shaoを含む中国人13人[71]、インドネシア人2人、ミャンマー人1人[69][71]の外国人計16人と、フィリピン人1人を、RA No. 9208 違反である加重人身売買の容疑で司法省(DOJ)に告訴した[69][71]。また、インドネシア人51人のパスポートを奪ったとして、フィリピン人1人が従犯容疑で告発された[69][71]。入国管理局(BI)は全ての外国人に対し、入国管理法違反で別途告訴状を提出した。また、現金800万ペソを持ち出そうとしたホテルの従業員が逮捕された[69]。NBIは、資金洗浄の可能性について捜査を進めている[69][71]。12の建造物を持つこのリゾートと、数台の車両はAMLC(Anti-Money Laundering Council)によって保全されている[69]。NBIは、被告らが違法な拘禁に加え、恋愛詐欺や暗号通貨詐欺に関与していたことを突き止めた。
彼らによると、40人以上のインドネシア人が当初、アンヘレス市のクラークにあるPOGOで中国人によって強制的に働かされていた。その後、彼らが6月4日に警察によって最初に手入れを受けたホテルに移動した。12人の中国人のボスと共に、労働者たちは活動をセブやマンダウエ市に移したと報告されている。7月に警察が中国人のボスとそのフィリピン人パートナーから2人のインドネシア人を救出した後、POGOの活動は直ちにラプ=ラプ市とマンダウエの別の場所へ別々に移され、最終的にツーリスト・ガーデン・ホテルに移された[69]。
合法性
2016年、PAGCORが承認したPOGOの規則について、「フィリピン国家発展と良き統治のための連合」(Union for National Development and Good Governance Philippines)、「フィリピン反トラポ運動」(Anti-Trapo Movement of the Philippines, Inc.)、および弁護士のホベンシオ・エバンヘリスタは、その合法性に異議を唱え、最高裁判所に3件の訴訟を起こした[72][73]。しかし、最高裁判所は、POGOの是非そのものを判断するまでもなく、「裁判所の階層の不遵守」や「司法審査の要件を満たしていない」といった手続き上の不備を理由に、これらの訴えを全会一致で棄却した[72][74]。2023年4月25日に公布されたこの判決は、2024年3月に公開された[74][73]。
禁止

禁止の流れは地方自治体からはじまった。2022年12月のパシッグ市、2023年半ばのバレンズエラ市(5年間の暫定措置付き)を皮切りに、2024年半ばにはブラカン州[75]、イロイロ市[76]、バタンガス市[77]もこれに続いた。
2023年、マルコス大統領は、違法事業者によって引き起こされている問題を抱えるPOGOの全業務を非合法化するには「正当な理由」が必要だと述べた[78]。同年、上院歳入委員会は報告書を提出し、POGOによる犯罪を防ぐために恒久的禁止を提案した。委員長のガッチャリアン上院議員も10人の署名者の1人である[79][80]。
2024年、禁止を求める4つの上院法案が提出された。2024年6月、ガッチャリアンは共和国法第11590号に基づき確立されたPOGOの課税性を撤廃することを目指す法案を提出した[81]。上院議員のジョエル・ビリャヌエバとアラン・ピーター・カエタノは、あらゆる形態のオンライン・ギャンブルを禁止する法案を提出した[82]。POGO関連の犯罪とそれに対処するために、少なくとも3つの下院法案も提出された。2024年2月、ゲーム・アミューズメント委員会は、ビエンベニード・アバンテ下院議員とルーファス・ロドリゲス下院議員が作成した2つの法案を承認した[78]。2024年6月には、ガッチャリアンが上院に提出した法案と並行して、フランス・カストロ議員が率いるマカバヤンブロックによって別の法案が提出された[83][81]。
こうした流れを受け、2024年7月22日にマルコス大統領が一般教書演説で全国的な禁止を発表し、同年11月5日には、すべてのPOGO事業の即時禁止とライセンスの申請・更新停止を命じる大統領令第74号が発令された[84]。これにより、2024年12月31日をもってPAGCOR(フィリピン娯楽賭博公社)が発行した全ライセンスが取り消されることとなり、一部企業は段階的な事業閉鎖を表明した[85]。政府は並行して、外国人POGO労働者の就労ビザ取り消しや国外退去通告を進める一方、影響を受けるフィリピン人労働者には職業支援を提供した。禁止措置は法制化によって決定的なものとなり、2025年6月11日に上下両院で「反オフショア・ゲーミング運営法」(下院法案第10987号)が可決された後、同年10月23日、マルコス大統領は共和国法第12312号に署名した。この法律により、POGOの設立、運営、賭けの受付などはすべて違法とされ、関係者の就労許可やビザも取り消されることになりました[2]。また、PAGCORによるライセンス発行も公式に禁止され、国内労働者の他業種への移行支援が行われることになった[86]。
POGOを扱った作品
- 『No More Bets』 - 2023年の中国のクライム・スリラー映画。東南アジアの詐欺センターに人身売買された中国人を描いている。