ポリ塩化ビニリデン
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種類
単体で使用される例はほとんど無く、塩化ビニル(PVC)またはアクリロニトリルなどとの共重合体が使用される。
製法
1,1-ジクロロエチレン(塩化ビニリデンモノマー)(CH2=CCl2)の重合でも得られるが、工業的には以下の製法が行われている。
前工程として1,2-ジクロロエタンを製造する。エチレンと、塩化ナトリウムを電気分解して得られる塩素または塩化水素とを反応させる。
- CH2=CH2 + Cl2 → CH2Cl-CH2Cl
- CH2=CH2 + 2HCl + 1/2O2 → CH2Cl-CH2Cl + H2O
1,2-ジクロロエタンを、水酸化カルシウムまたは水酸化ナトリウムを使用した脱塩酸反応で塩化ビニリデンモノマーを得、精製後これに乳化剤を加えながら重合し製造する。
- n CH2Cl-CH2Cl + n Ca(OH) 2 → [-CH2-C(Cl2)-] n + n CaCl2 + n H2O (石灰乳法)
- n CH2Cl-CH2Cl + n NaOH → [-CH2-C(Cl2)-] n + n NaCl + n H2O
特徴
- 化学薬品類に対する優れた耐薬品性を持つ。高温時のジメチルホルムアミドやジエチルホルムアミドには可溶。
- 耐水性に優れる。
- 適度な弾性を持つ。
- 防湿性とガスバリア性の両方を兼ね備える他のプラスチックフィルムに無い性質を持つ。また、フィルムは自己粘着性を持つ。
- 難燃性を持つ。
改質
- コンパウンド
- 抗酸化剤や紫外線吸収剤などを添加し、機能を付与する。
歴史
ポリ塩化ビニリデンの重合物は1872年にBaumannによって発見され、1930年にStaudingerも研究しているが重合物は加工が容易ではなく実用的ではなかった。
1933年、アメリカミシガン州ミッドランドにあるダウケミカルの研究所で実験器具を洗浄するアルバイトをしていた大学生ラルフ・ウイリーが、ビーカーの底に付着した残滓が洗い流せないことを発見したことから開発がスタートした[2]。研究者らはこれを小さな孤児アニーに登場する架空の物質にちなみ「イオナイト」と命名、ダウケミカルはこれを改良し繊維やフィルムへの加工生産を開始した[3]。当初は第二次世界大戦の戦場で、靴のインソールや火薬類を湿気から守るフィルムなどとして使われた[4]。戦後、包装分野への展開が図られたが、あまり普及しなかった。しかし、 サランラップに代表される食品用ラップフィルムとして、PVCとの共重合体利用が発案され、以後用途拡大が進んだ。ラルフ・ウイリーはその後ダウケミカルに就職し、薬品の開発に関わっている。
1990年代頃から、PVDCが塩素原子を含むことからダイオキシンなど環境負荷を懸念する声があり、ポリエチレンやポリメチルペンテンなどを使用したラッピングフィルムなど競合製品の上市も相次いでいる。このような状況に対応し、塩化ビニリデン衛生協議会[5]はPVDCの安全性のアピールとともに、ごみ分別の啓蒙活動などに取り組んでいる。
