亜急性硬化性全脳炎
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亜急性硬化性全脳炎(あきゅうせい こうかせい ぜんのうえん、英: subacute sclerosing panencephalitis; SSPE)またはドーソン病(ドーソンびょう、英: Dawson disease)[1]とは、ヒトに発症する遅発性ウイルス感染症の一種で、致死性の感染症である。
概要
患者像
亜急性硬化性全脳炎の発症者は、その9割以上が14歳以下の小児である(ピークは6~8歳)。既述の通り、原因となるSSPEウイルスは中枢神経系へ感染後に変異を起こした麻疹ウイルスである。したがって、通常は麻疹の罹患者の中のごく一部の者が、数年後に亜急性硬化性全脳炎を発症するという経過を辿る。
麻疹に感染してから亜急性硬化性全脳炎を発症するまでの潜伏期間は2年から10年程度と考えられており、その発症頻度は10万人に1.7人程度(麻疹罹患者の0.0017%程度[注釈 1])とされている。ただし、1歳以下の者が麻疹に罹患した場合や免疫機能が低下した状態で麻疹に罹患した場合には、のちに亜急性硬化性全脳炎を発症する危険性が高いことが知られている[2]。
この他、妊娠中の女性が麻疹に罹患したことによって、のちに亜急性硬化性全脳炎を発症する症例も、ごく稀に存在する[3]。
なお、1989年時点では、亜急性硬化性全脳炎発症者のうちの約90%は麻疹の既往がある者であり、他に発症者の5%は麻疹ワクチンの接種を受けた者であると発表されたが[4]、これに対して2007年12月には、麻疹ワクチンの接種が『亜急性硬化性全脳炎の原因となったという証拠は無い』という研究結果も発表されている[3]。しかしながら、麻疹に罹患していない人物が亜急性硬化性全脳炎を発症したという症例も、極めて稀ながら存在している[5]。
症状
予後
予防法
疫学的調査によると、新三種混合ワクチンの接種により亜急性硬化性全脳炎(SSPE)の発症が減少することから、日本ではSSPE予防のためにも、麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種が推奨されている[5]。麻疹ワクチンの接種が、SSPEの原因となったという証拠は得られていない。
混同注意
麻疹は、中耳炎や肺炎など様々な合併症を引き起こす場合もある。そして麻疹が引き起こす合併症の中に、麻疹後脳炎と言う、致死率10 %から20 %程度の急性の脳炎が存在する。しかし、麻疹後脳炎と亜急性硬化性全脳炎は別物である。
歴史
1933年、J.R.Dawsonは光学顕微鏡による観察で、脳の神経細胞の障害と亜急性の炎症反応および封入体を初めて記載した[7]。1963年に、M.C.Bouteilleが電子顕微鏡で封入体にウイルスを認め[8]、1967年にはJ.H.Connollyが免疫学的に脳内に麻疹ウイルスの存在を証明した[9]。1969年に感染組織から麻疹ウイルスの培養に成功した。変異した麻疹ウイルス(核酸の分子量600万、直径0.2μm)が病原体で、細胞外でしめすウイルス形態(ビリオン)になれず、細胞外では感染力が弱いことが明らかになった。1975年に微研のUedaらが、SSPEの組織と胎児肺の細胞を同時に培養すると、細胞同士を融合させながら増殖するBiken株を見出した。治療研究が精力的に進められている。
感染メカニズムの概略
診療科
注釈
- ただし別な値が書かれている文献もある。概ね麻疹罹患者の十万人に1人から数十万人に1人程度とされている。