シグナル伝達兼転写活性化因子5A

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シグナル伝達兼転写活性化因子5A: signal transducer and activator of transcription 5ASTAT5A)は、ヒトではSTAT5A遺伝子によってコードされているタンパク質である[5][6]STAT5Aオルソログ[7]は全ゲノムデータが利用可能な有胎盤類のいくつかの種で同定されている。

PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
記号STAT5A, MGF, STAT5, signal transducer and activator of transcription 5A
染色体17番染色体 (ヒト)[1]
概要 STAT5A, PDBに登録されている構造 ...
STAT5A
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

1Y1U

識別子
記号STAT5A, MGF, STAT5, signal transducer and activator of transcription 5A
外部IDOMIM: 601511 MGI: 103036 HomoloGene: 20680 GeneCards: STAT5A
遺伝子の位置 (ヒト)
17番染色体 (ヒト)
染色体17番染色体 (ヒト)[1]
17番染色体 (ヒト)
STAT5A遺伝子の位置
STAT5A遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点42,287,547 bp[1]
終点42,311,943 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
11番染色体 (マウス)
染色体11番染色体 (マウス)[2]
11番染色体 (マウス)
STAT5A遺伝子の位置
STAT5A遺伝子の位置
バンドデータ無し開始点100,750,177 bp[2]
終点100,775,995 bp[2]
RNA発現パターン
さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 DNA結合
血漿タンパク結合
DNA-binding transcription factor activity
protein tyrosine kinase activity
DNA-binding transcription factor activity, RNA polymerase II-specific
RNA polymerase II cis-regulatory region sequence-specific DNA binding
DNA-binding transcription activator activity, RNA polymerase II-specific
細胞の構成要素 細胞核
核質
細胞質
細胞質基質
生物学的プロセス creatinine metabolic process
positive regulation of endothelial cell proliferation
receptor signaling pathway via JAK-STAT
transcription, DNA-templated
シグナル伝達
valine metabolic process
creatine metabolic process
regulation of transcription by RNA polymerase II
positive regulation of blood vessel endothelial cell migration
脂肪酸代謝
taurine metabolic process
succinate metabolic process
regulation of multicellular organism growth
citrate metabolic process
oxaloacetate metabolic process
regulation of transcription, DNA-templated
allantoin metabolic process
isoleucine metabolic process
授乳
2-oxoglutarate metabolic process
peptidyl-tyrosine phosphorylation
interleukin-7-mediated signaling pathway
growth hormone receptor signaling pathway via JAK-STAT
interleukin-15-mediated signaling pathway
サイトカイン媒介シグナル伝達経路
interleukin-2-mediated signaling pathway
interleukin-9-mediated signaling pathway
reelin-mediated signaling pathway
防衛反応
regulation of cell population proliferation
response to peptide hormone
positive regulation of transcription by RNA polymerase II
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_001288718
NM_001288719
NM_001288720
NM_003152

NM_001164062
NM_011488
NM_001362680

RefSeq
(タンパク質)

NP_001275647
NP_001275648
NP_001275649
NP_003143

NP_001157534
NP_035618
NP_001349609

場所
(UCSC)
Chr 17: 42.29 – 42.31 MbChr 17: 100.75 – 100.78 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
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構造

STAT5Aは、STATファミリーに属する他のメンバーと同じ6つの機能的ドメインを有する。C末端に20アミノ酸からなる固有の配列を有し、ホモログであるSTAT5Bとの類似性は96%である。6つの機能的ドメインと対応するアミノ酸残基を次に示す。

  • N末端ドメイン(1–144番): 四量体形成のための安定化相互作用を行う
  • コイルドコイルドメイン(145–330番): シャペロンと相互作用し、転写調節のためのタンパク質間相互作用を促進する
  • DNA結合ドメイン(331–496番): GAS(gamma-interferon activation sequence)への結合を可能にする
  • リンカードメイン(497–592番): DNA結合を安定化する
  • SH2ドメイン(593–685番): 受容体特異的なリクルートやリン酸化チロシンによるSTATの二量体化を媒介する。
  • 転写活性化ドメイン(702–794番): 重要なコアクチベーターと相互作用する。

6つの機能的ドメインに加えて、STAT5Aの機能を媒介するいくつかの残基が特定されている。チロシン694番のリン酸化スレオニン82番のグリコシル化はSTAT5Aの活性に重要である。またセリン710番がフェニルアラニンへ置換されることで、STAT5Aは構成的活性化状態となる[8][9]

機能

STAT5AはSTATファミリーに属する転写因子である。サイトカイン成長因子に応答して、STATファミリーのメンバーは受容体に結合したキナーゼによってリン酸化され、その後ホモ二量体またはヘテロ二量体を形成して核内に移行し、そこで転写活性化因子として機能する。STAT5AはIL-2IL-3英語版IL-7GM-CSFエリスロポエチントロンボポエチンやさまざまな成長ホルモンなど多くのリガンドによって活性化され、その応答を媒介する。TEL/JAK2遺伝子融合と関連した骨髄腫リンパ腫ではSTAT5Aの活性化は細胞刺激非依存的となり、腫瘍形成に必要不可欠であることが示されている。STAT5AのマウスホモログはBCL2L1英語版/Bcl-xLの発現を誘導することが明らかにされており、抗アポトーシス機能を果たしていることが示唆される[10]。また、STAT5Aはプロラクチンシグナルの乳汁タンパク質遺伝子への伝達を担っており、乳腺の発達に必要である[11]

がん

多くの研究により、白血病乳がん結腸がん頭頸部がん前立腺がんにおいてSTAT5Aが重要な役割を果たしていることが示されている[8][11][12][13]。近年まで、これらのがんにおけるSTAT5Aの特性や機能についてはSTAT5Bとの区別がなされておらず、両者の挙動の差についてはさらなる研究が必要である。STAT5Aは免疫細胞の発生に不可欠な役割を果たしているため、免疫系による監視を損なわせることで腫瘍発生に寄与している可能性がある[11]

非リン酸化型(不活性型)STAT5Aは大腸がんの腫瘍成長を抑制している可能性があり、また口腔扁平上皮がんにおいて前腫瘍病変や腫瘍病変部位におけるSTAT5Aの活性化が予後マーカーとなる可能性が示されている[11][14]

前立腺がん

STAT5Aは前立腺の上皮構造の維持に関与しており、細胞生存や腫瘍成長に重要であることが示されている。前立腺がん細胞ではSTAT5A/Bは持続的に活性化されており、STAT5A/Bの阻害によって大規模なアポトーシスが引き起こされる。一方で、STAT5Aの特異的役割や活性の分布はほとんど明らかにされていない[8]。前立腺上皮の正常組織と悪性組織の双方においてプロラクチンはJAK2-STAT5経路を活性化することが知られているが、これについてもSTAT5Aの特異的役割は不明である[9]

乳がん

乳腺の正常組織では、STAT5Aはプロラクチンの作用を媒介している。乳がんでは、STAT5Aは腫瘍の分化状態の維持や疾患の進行の抑制に重要である。STAT5Aの核内濃度の低さはSTAT5Bとは無関係に臨床転帰の悪さやがんの進行と関連しており、STAT5Aの高発現は浸潤や転移の阻害因子であるため臨床転帰の良さの指標となることが示唆されている。こうした傾向のため、抗エストロゲン薬などの治療応答の予測因子としての利用が提唱されている[12][15]

治療アプローチ

STAT5Aの特異的活性についての研究は広く行われているわけではないため、現時点で最も有望な治療法のはSTAT5A/Bの双方を標的としたものとなっている。これまでにSTAT5A特異的標的化の治療的有用性の可能性が報告されているのは、大腸がんにおいてである。STAT5A単独の阻害では大腸がん細胞に影響はみられないが、シスプラチンなどの化学療法薬と組み合わせることでがん細胞の薬剤に対する化学的感受性が高まる可能性がある[13]。STAT5A/Bに焦点を当てた治療スキームでは、JAK2-STAT5経路のさまざまな媒介因子の標的化と阻害が行われている[8]

相互作用

STAT5Aは次に挙げる因子と相互作用することが示されている。

出典

関連文献

関連項目

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