命数法
数を表現するための表記体系
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概説
命数法は、数を言語的に表現する体系である。たとえば、12 という数を日本語で「じゅうに」、英語で twelve、フランス語で douze と言う場合、これらはいずれも命数法による表現である。これに対し、「12」「十二」「XII」のような表記は数字による表現であり、記数法の問題に属する。[2][3]
数を表す手段としては、数詞による命数法と、数字による記数法とが対応関係を持つ。Encyclopaedia Britannica は、numerals を数を表す記号、numeral systems をそれらの記号と大きな数を表す規則の体系と説明しており、命数法はこれに対して数詞による表現法にあたる。[4]
数詞・記数法との関係
構成原理
類型
十進法を基礎とする命数法
今日もっとも広く見られる命数法は、十進法を基礎とするものである。コトバンクによれば、十進命数法では、まず一から十までの数について数詞が定められ、十を超える数は「十一」「十二」などのように構成される。さらに、十が十個で「百」、百が十個で「千」、千が十個で「万」というように、新たな位の数詞が用いられる。[10]
二十進法的特徴を持つ命数法
命数法の基礎が十進法であっても、部分的に二十進法的な構成を残す言語がある。Britannica は、英語では base 20 の痕跡が主として score に見られ、フランス語では quatre-vingts (80、「4×20」)に残っていると説明している。また、同じくデンマーク語やウェールズ語にも二十進法的な痕跡が見られる。[11]
大数命名の類型
大数の命名では、西欧系言語を中心に、10^9 以降の名称が異なる long scale と short scale の区別が知られている。short scale では 10^9 が billion、10^12 が trillion であるのに対し、long scale では 10^9 に milliard 相当語を用い、billion 相当語は 10^12 を指す。英国議会図書館は、現在の英国の公式統計では billion は 10^9 を意味すると説明している。[12][13]
諸言語における命数法
日本語
日本語の命数法は十進命数法を基礎とし、「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十」を基本に、「百」「千」「万」「億」などの数詞を組み合わせて整数を表す。コトバンクも、十進命数法では一から十、および百・千・万・億などの数詞を用いて表すとしている。[14]
また、日本では千の次を万とし、その後に億、兆、京などを置く四桁進法的な区切りが用いられる。コトバンク掲載のブリタニカ国際大百科事典 小項目事典では、命数法を「4けたごとの数団に分け、簡単な単位にする方法」と説明し、万(10^4)、億(10^8)、兆(10^12)、京(10^16)、垓(10^20)などを挙げている。[15]
日本語の数詞体系では、助数詞との結びつきも強い。コトバンクの「数詞」では、「一枚・二枚」「一本・二本」のように数詞が助数詞を伴うことが示されている。[16]
英語
現代英語圏では通常 short scale が用いられる。英国では歴史的に long scale も用いられたが、英国議会図書館は、現在の公式統計では billion は 1 thousand million(10^9)を指すと説明している。[17]
一方、英語の数詞体系には、十進法を基礎としつつも、古い二十進法的残存として score が見られる。Britannica は、英語における base 20 の痕跡は主として score に残るとしている。[18]
ロマンス諸語
ロマンス諸語の命数法は、基本的には十進法を基礎としているが、数詞の構成要素の順序、接続要素の有無、総合的か分析的かといった形式差を持つ。ケンブリッジ版『The Cambridge Handbook of Romance Linguistics』の “Counting Systems” 章は、標準ロマンス諸語および方言間で、十進法を基礎としつつも、二十進法的形成やその他の逸脱的構成が見られると説明している。[19]
フランス語
現代フランス語では long scale が標準であり、Académie française は milliard を 10^9、billion を 10^12 としている。したがって、英語の billion とフランス語の billion は通常は同じ値を指さない。[20][21]
また、フランス語の数詞体系には、二十進法的残存として quatre-vingts (80、「4×20」)がある。Britannica はこれを base 20 の代表例として挙げている。[22]
ドイツ語
ドイツ語も long scale を採用しており、Duden は Milliarde を「tausend Millionen(1000 million)」、Billion を「eine Million Millionen(10^12)」と定義している。[23][24]
イタリア語
イタリア語でも long scale が標準であり、Treccani は bilione を「un milione di milioni(10^12)」と説明している。[25]
スペイン語
スペイン語でも原則として long scale が用いられる。王立スペインアカデミーは billón を「un millón de millones(10^12)」とし、英語の billion の影響による 10^9 の意味での使用は推奨していない。10^9 には mil millones や millardo を用いるのが望ましいとされる。[26][27]
ポルトガル語
ポルトガル語圏では差があり、ポルトガルでは bilião を 10^12 とする long scale 的説明が見られる一方、ブラジルでは bilhão = 10^9 の short scale が一般的であるとされる。したがって、同一言語内でも地域差が存在する。[28][29]
デンマーク語
デンマーク語の命数法は、全体としては十進法に立つが、50・60・70・80・90 の数詞に二十進法的残存が見られる。Britannica は、デンマーク語にもフランス語やウェールズ語と同様に base 20 の痕跡があると説明している。[30]
特に、50 を表す halvtreds は、Britannica の関連説明では「2.5×20」に由来する例として挙げられている。また、デンマーク語辞書では古形 halvtredsindstyve が 50 を表す語として記録されている。[31][32]
大数の命数法
大きな数の呼称は、命数法の重要な一部である。レファレンス協同データベースでは、『図解単位の歴史辞典』の「命数法」項および「大数と小数」の表に、大数の命数法や位取りがまとめられていることが紹介されている。[33]
言語によって、大数の位名の切り方や命名規則は異なる。日本語のように四桁ごとに区切る体系もあれば、西欧系言語のように 10^9 以降の名称に long scale / short scale の差が現れる体系もある。[34][35]
主な大数の位名(日本語の例)
| 数値 | 位名 | 備考 |
|---|---|---|
| 10^1 | 十 | 基本的な十進命数法の位名 |
| 10^2 | 百 | 同上 |
| 10^3 | 千 | 同上 |
| 10^4 | 万 | 日本語ではここで新たな位名を置く |
| 10^8 | 億 | 四桁進法による次の大きな位 |
| 10^12 | 兆 | |
| 10^16 | 京 | |
| 10^20 | 垓 | コトバンク掲載ブリタニカ小項目事典で例示 |
小数の命数法
命数法は整数だけでなく、小数の呼称にも及ぶ。レファレンス協同データベースでは、『日常の数学事典』の「命数法―大きい数と小さい数の呼び方―」や『図解単位の歴史辞典』の「命数法」項に、小数の命数法が掲載されていることが紹介されている。[36]
同データベースによれば、日本語の小数の命数法として「分」から「浄」までの数詞が記載された資料があり、『塵劫記』では「虚」は 10^-20、「空」は 10^-21、「清」は 10^-22、「浄」は 10^-23 に対応する。一方、『算法統宗』ではこれと異なる対応が見られ、小数の命数法には資料差が存在する。[37]
このため、小数の命数法を記述する際には、史料や版による差異に留意する必要がある。レファレンス協同データベースでも、『塵劫記』と『算法統宗』で値が異なることや、「小数の日本語表記には諸説ある」とする資料が紹介されている。[38]
小数の命数法(代表的対応)
| 数値 | 数詞 | 出典系統 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 10^-1 | 分 | 複数資料で共通 | 小数命名の起点 |
| 10^-2 | 厘 | 複数資料で共通 | |
| 10^-3 | 毛 | 複数資料で共通 | |
| 10^-4 | 糸 | 複数資料で共通 | |
| 10^-5 | 忽 | 複数資料で共通 | |
| 10^-6 | 微 | 複数資料で共通 | |
| 10^-7 | 繊 | 複数資料で共通 | |
| 10^-8 | 沙 | 複数資料で共通 | |
| 10^-9 | 塵 | 複数資料で共通 | |
| 10^-10 | 埃 | 複数資料で共通 | |
| 10^-20 | 空虚 | 『新数学事典』『日常の数学事典』など | 二字をまとめる資料例 |
| 10^-21 | 清浄 | 『新数学事典』『日常の数学事典』など | 二字をまとめる資料例 |
小数の命数法(資料差のある対応)
| 数値 | 『塵劫記』系の例 | 『算法統宗』系の例 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 10^-20 | 虚 | 虚 | 『算法統宗』系では指数対応が大きく異なる |
| 10^-21 | 空 | 『算法統宗』系では空欄・異説あり | |
| 10^-22 | 清 | 同上 | |
| 10^-23 | 浄 | 同上 |
また、レファレンス協同データベースでは、『図解よくわかる単位の事典』『数える・はかる・単位の事典』などに、「清浄」に続いて「阿頼耶」「阿摩羅」「涅槃寂静」を載せる例があることが紹介されている。ただし同データベースは、これらについて『塵劫記』『算法統宗』『算学啓蒙』の原典資料では確認できなかったともしており、本文では断定を避けて参考的に扱うのが妥当である。[39]
参考:一部資料に見られる清浄以後の小数名
| 数値 | 数詞 | 掲載が確認された資料 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 10^-22 | 阿頼耶 | 『図解よくわかる単位の事典』『数える・はかる・単位の事典』 | 原典確認は未了とされる |
| 10^-23 | 阿摩羅 | 『図解よくわかる単位の事典』『数える・はかる・単位の事典』 | 同上 |
| 10^-24 | 涅槃寂静 | 『図解よくわかる単位の事典』『数える・はかる・単位の事典』 | 同上 |
