命数法

数を表現するための表記体系 From Wikipedia, the free encyclopedia

命数法(めいすうほう)とは、整数を数詞によって表す方法、すなわち数の唱え方をいう。数字その他の記号を用いてを表す記数法とは区別される。[1]

この画像は、同一の数値が異なる記数体系によってどのように表記されるかを比較したものである。掲載されている記数法は、点字数字、アラビア数字デーヴァナーガリー数字インド数字漢数字大字、およびローマ数字である。それぞれの体系は、文化的背景や用途に応じて異なる記号体系を持ち、数の視覚的・構造的な表現方法に多様性をもたらしている。

概説

命数法は、数を言語的に表現する体系である。たとえば、12 という数を日本語で「じゅうに」、英語で twelve、フランス語で douze と言う場合、これらはいずれも命数法による表現である。これに対し、「12」「十二」「XII」のような表記は数字による表現であり、記数法の問題に属する。[2][3]

数を表す手段としては、数詞による命数法と、数字による記数法とが対応関係を持つ。Encyclopaedia Britannica は、numerals を数を表す記号、numeral systems をそれらの記号と大きな数を表す規則の体系と説明しており、命数法はこれに対して数詞による表現法にあたる。[4]

数詞・記数法との関係

命数法は数詞を用いる体系であり、記数法数字を用いる体系である。たとえば、日本語の「じゅうに」は命数法による表現であり、「12」はアラビア数字による記数法上の表現である。同じ数を表していても、前者は言語体系、後者は表記体系に属する。[5][6]

コトバンク掲載の「数字と記数法」でも、数字は数を記録・保存・伝達するための記号であり、記数法は数を数字で表す表し方とされている。これに対し、命数法は数を数詞で表す表現法として位置づけられる。[7]

構成原理

一般に、すべての整数に個別の数詞を与えることは現実的でないため、命数法では、少数の基本的な数詞と、それらを組み合わせる規則によって他の数を表す。コトバンクでも、一般には個々の整数すべてに別個の数詞を与えることは不可能であり、特定の数詞の組合せで他の数を表すとしている。[8]

このため、命数法は通常、少数の基本語と、それらを結合する一定の規則から成る。十進命数法では、一から十までの数詞を基礎とし、十一、十二、二十、二十一のように構成していく。[9]

類型

十進法を基礎とする命数法

今日もっとも広く見られる命数法は、十進法を基礎とするものである。コトバンクによれば、十進命数法では、まず一から十までの数について数詞が定められ、十を超える数は「十一」「十二」などのように構成される。さらに、十が十個で「百」、百が十個で「千」、千が十個で「万」というように、新たな位の数詞が用いられる。[10]

二十進法的特徴を持つ命数法

命数法の基礎が十進法であっても、部分的に二十進法的な構成を残す言語がある。Britannica は、英語では base 20 の痕跡が主として score に見られ、フランス語では quatre-vingts (80、「4×20」)に残っていると説明している。また、同じくデンマーク語やウェールズ語にも二十進法的な痕跡が見られる。[11]

大数命名の類型

大数の命名では、西欧系言語を中心に、10^9 以降の名称が異なる long scaleshort scale の区別が知られている。short scale では 10^9 が billion、10^12 が trillion であるのに対し、long scale では 10^9 に milliard 相当語を用い、billion 相当語は 10^12 を指す。英国議会図書館は、現在の英国の公式統計では billion は 10^9 を意味すると説明している。[12][13]

諸言語における命数法

日本語

日本語の命数法は十進命数法を基礎とし、「一、二、三、四、五、六、七、八、九、十」を基本に、「百」「千」「万」「億」などの数詞を組み合わせて整数を表す。コトバンクも、十進命数法では一から十、および百・千・万・億などの数詞を用いて表すとしている。[14]

また、日本では千の次を万とし、その後に億、兆、京などを置く四桁進法的な区切りが用いられる。コトバンク掲載のブリタニカ国際大百科事典 小項目事典では、命数法を「4けたごとの数団に分け、簡単な単位にする方法」と説明し、万(10^4)、億(10^8)、兆(10^12)、京(10^16)、垓(10^20)などを挙げている。[15]

日本語の数詞体系では、助数詞との結びつきも強い。コトバンクの「数詞」では、「一枚・二枚」「一本・二本」のように数詞が助数詞を伴うことが示されている。[16]

英語

現代英語圏では通常 short scale が用いられる。英国では歴史的に long scale も用いられたが、英国議会図書館は、現在の公式統計では billion は 1 thousand million(10^9)を指すと説明している。[17]

一方、英語の数詞体系には、十進法を基礎としつつも、古い二十進法的残存として score が見られる。Britannica は、英語における base 20 の痕跡は主として score に残るとしている。[18]

ロマンス諸語

ロマンス諸語の命数法は、基本的には十進法を基礎としているが、数詞の構成要素の順序、接続要素の有無、総合的か分析的かといった形式差を持つ。ケンブリッジ版『The Cambridge Handbook of Romance Linguistics』の “Counting Systems” 章は、標準ロマンス諸語および方言間で、十進法を基礎としつつも、二十進法的形成やその他の逸脱的構成が見られると説明している。[19]

フランス語

現代フランス語では long scale が標準であり、Académie française は milliard を 10^9、billion を 10^12 としている。したがって、英語の billion とフランス語の billion は通常は同じ値を指さない。[20][21]

また、フランス語の数詞体系には、二十進法的残存として quatre-vingts (80、「4×20」)がある。Britannica はこれを base 20 の代表例として挙げている。[22]

ドイツ語

ドイツ語も long scale を採用しており、Duden は Milliarde を「tausend Millionen(1000 million)」、Billion を「eine Million Millionen(10^12)」と定義している。[23][24]

イタリア語

イタリア語でも long scale が標準であり、Treccani は bilione を「un milione di milioni(10^12)」と説明している。[25]

スペイン語

スペイン語でも原則として long scale が用いられる。王立スペインアカデミーは billón を「un millón de millones(10^12)」とし、英語の billion の影響による 10^9 の意味での使用は推奨していない。10^9 には mil millonesmillardo を用いるのが望ましいとされる。[26][27]

ポルトガル語

ポルトガル語圏では差があり、ポルトガルでは bilião を 10^12 とする long scale 的説明が見られる一方、ブラジルでは bilhão = 10^9 の short scale が一般的であるとされる。したがって、同一言語内でも地域差が存在する。[28][29]

デンマーク語

デンマーク語の命数法は、全体としては十進法に立つが、50・60・70・80・90 の数詞に二十進法的残存が見られる。Britannica は、デンマーク語にもフランス語やウェールズ語と同様に base 20 の痕跡があると説明している。[30]

特に、50 を表す halvtreds は、Britannica の関連説明では「2.5×20」に由来する例として挙げられている。また、デンマーク語辞書では古形 halvtredsindstyve が 50 を表す語として記録されている。[31][32]

大数の命数法

大きな数の呼称は、命数法の重要な一部である。レファレンス協同データベースでは、『図解単位の歴史辞典』の「命数法」項および「大数と小数」の表に、大数の命数法や位取りがまとめられていることが紹介されている。[33]

言語によって、大数の位名の切り方や命名規則は異なる。日本語のように四桁ごとに区切る体系もあれば、西欧系言語のように 10^9 以降の名称に long scale / short scale の差が現れる体系もある。[34][35]

主な大数の位名(日本語の例)

さらに見る 数値, 位名 ...
日本語の主な大数の位名
数値 位名 備考
10^1 基本的な十進命数法の位名
10^2 同上
10^3 同上
10^4 日本語ではここで新たな位名を置く
10^8 四桁進法による次の大きな位
10^12
10^16
10^20 コトバンク掲載ブリタニカ小項目事典で例示
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小数の命数法

命数法は整数だけでなく、小数の呼称にも及ぶ。レファレンス協同データベースでは、『日常の数学事典』の「命数法―大きい数と小さい数の呼び方―」や『図解単位の歴史辞典』の「命数法」項に、小数の命数法が掲載されていることが紹介されている。[36]

同データベースによれば、日本語の小数の命数法として「分」から「浄」までの数詞が記載された資料があり、『塵劫記』では「虚」は 10^-20、「空」は 10^-21、「清」は 10^-22、「浄」は 10^-23 に対応する。一方、『算法統宗』ではこれと異なる対応が見られ、小数の命数法には資料差が存在する。[37]

このため、小数の命数法を記述する際には、史料や版による差異に留意する必要がある。レファレンス協同データベースでも、『塵劫記』と『算法統宗』で値が異なることや、「小数の日本語表記には諸説ある」とする資料が紹介されている。[38]

小数の命数法(代表的対応)

さらに見る 数値, 数詞 ...
小数の命数法(代表的対応)
数値 数詞 出典系統 備考
10^-1 複数資料で共通 小数命名の起点
10^-2 複数資料で共通
10^-3 複数資料で共通
10^-4 複数資料で共通
10^-5 複数資料で共通
10^-6 複数資料で共通
10^-7 複数資料で共通
10^-8 複数資料で共通
10^-9 複数資料で共通
10^-10 複数資料で共通
10^-20 空虚 『新数学事典』『日常の数学事典』など 二字をまとめる資料例
10^-21 清浄 『新数学事典』『日常の数学事典』など 二字をまとめる資料例
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小数の命数法(資料差のある対応)

さらに見る 数値, 『塵劫記』系の例 ...
小数の命数法(資料差のある対応)
数値 『塵劫記』系の例 『算法統宗』系の例 備考
10^-20 『算法統宗』系では指数対応が大きく異なる
10^-21 『算法統宗』系では空欄・異説あり
10^-22 同上
10^-23 同上
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また、レファレンス協同データベースでは、『図解よくわかる単位の事典』『数える・はかる・単位の事典』などに、「清浄」に続いて「阿頼耶」「阿摩羅」「涅槃寂静」を載せる例があることが紹介されている。ただし同データベースは、これらについて『塵劫記』『算法統宗』『算学啓蒙』の原典資料では確認できなかったともしており、本文では断定を避けて参考的に扱うのが妥当である。[39]

参考:一部資料に見られる清浄以後の小数名

さらに見る 数値, 数詞 ...
参考:一部資料に見られる清浄以後の小数名
数値 数詞 掲載が確認された資料 注意
10^-22 阿頼耶 『図解よくわかる単位の事典』『数える・はかる・単位の事典』 原典確認は未了とされる
10^-23 阿摩羅 『図解よくわかる単位の事典』『数える・はかる・単位の事典』 同上
10^-24 涅槃寂静 『図解よくわかる単位の事典』『数える・はかる・単位の事典』 同上
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歴史

命数法の歴史は、数を音声言語によって表現する必要とともに発達した。Britannica も、数字による図形表現より前に、人間はまず数を数え、音声で小さい集団の個数を区別していたであろうと述べている。[40]

日本語においては、十進命数法を基礎とする数詞体系が整えられ、大数・小数の名称も算書や辞典類を通じて整理されてきた。レファレンス協同データベースでは、『塵劫記』以後、日本での数の呼び方は四桁進法に統一され、整然としたものになったとする『日常の数学事典』の説明が紹介されている。[41]

他の表現体系との関係

命数法は、言語における数の表現法であり、記数法と対応しつつも一致するとは限らない。数字体系が位取りや記号の規則を中心とするのに対し、命数法は数詞の構成順序や位名の置き方によって特徴づけられる。[42][43]

したがって、命数法は「数を語としてどう表すか」という問題を扱う体系であり、数字による表記法とは別個に考える必要がある。[44]

脚注

関連項目

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