アルシン
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アルシン(英語: arsine)とは、化学式が AsH3 と表される、ヒ素と水素の化合物である。水素化ヒ素(英語: arsenic hydride)や、ヒ化水素 (英語: hydrogen arsenide) とも呼ばれる。
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| 物質名 | |||
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Arsenic trihydride | |||
別名 Arseniuretted hydrogen, | |||
| 識別情報 | |||
3D model (JSmol) |
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| ChEBI | |||
| ChEMBL | |||
| ChemSpider | |||
| ECHA InfoCard | 100.029.151 | ||
| EC番号 |
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| Gmelin参照 | 599 | ||
| KEGG | |||
PubChem CID |
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| RTECS number |
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| UNII | |||
| 国連/北米番号 | 2188 | ||
CompTox Dashboard (EPA) |
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| 性質 | |||
| AsH3 | |||
| モル質量 | 77.9454 g/mol | ||
| 外観 | 無色の気体 | ||
| 匂い | かすかに、ニンニクのような | ||
| 密度 | 4.93 g/L, 気体; 1.640 g/mL (−64 °C) | ||
| 融点 | −111.2 °C (−168.2 °F; 162.0 K) | ||
| 沸点 | −62.5 °C (−80.5 °F; 210.7 K) | ||
| 0.2 g/100 mL (20 °C)[1] 0.07 g/100 mL (25 °C) | |||
| 溶解度 | クロロホルム、ベンゼンに溶ける | ||
| 蒸気圧 | 14.9 atm[1] | ||
| 共役酸 | アルソニウム | ||
| 構造 | |||
| 三角錐 | |||
| 0.20 D | |||
| 熱化学 | |||
| 標準モルエントロピー S⦵ | 223 J⋅K−1⋅mol−1 | ||
標準生成熱 (ΔfH⦵298) |
+66.4 kJ/mol | ||
| 危険性 | |||
| 労働安全衛生 (OHS/OSH): | |||
主な危険性 |
極めて毒性が高い、爆発性、引火性、潜在的な職業性発癌物質[1] | ||
| GHS表示: | |||
| Danger | |||
| H220, H330, H373, H410 | |||
| P210, P260, P271, P273, P284, P304+P340, P310, P314, P320, P377, P381, P391, P403, P403+P233, P405, P501 | |||
| NFPA 704(ファイア・ダイアモンド) | |||
| 引火点 | −62 °C (−80 °F; 211 K) | ||
| 爆発限界 | 5.1–78%[1] | ||
| 致死量または濃度 (LD, LC) | |||
半数致死量 LD50 |
2.5 mg/kg (静脈)[2] | ||
半数致死濃度 LC50 |
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LCLo (最低致死濃度) |
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| NIOSH(米国の健康曝露限度): | |||
PEL |
TWA 0.05 ppm (0.2 mg/m3)[1] | ||
REL |
C 0.002 mg/m3 [15-分][1] | ||
IDLH |
3 ppm[1] | ||
| 関連する物質 | |||
| 関連する水素化物 | アンモニア ホスフィン スチビン ビスムチン | ||
性質
アルシンの化学式はAsH3であるため、その分子量は、77.95である。アルシンの常圧における融点は-116 ℃、沸点は-62 ℃なので、常温常圧では気体として存在する。なお、気体のアルシンに色は無い。
立体構造はアンモニアに近いが、水素の結合角はアンモニアのそれよりも小さく直角に近い。極性溶媒に溶け易く、有機溶媒に溶け難い。しかし、窒素の電気陰性度が3.0のアンモニアとは異なり、ヒ素の電気陰性度は2.0なのに対して、水素の電気陰性度は2.1と、極性が弱いためアルシンは水素結合を作らない。
アルシンは還元作用を示し、例えば、硝酸銀水溶液に通ずると銀を遊離する。なお、その標準酸化還元電位は以下の通りである。
- E º = -0.225 V
濃厚な硝酸銀水溶液では、ヒ化銀を含む黄色の複塩 Ag3As·3AgNO3 が沈殿する。このように、そもそも還元性を示す物質なので、強力な酸化剤とは、爆発的に反応する。したがって、引火し易く、爆発に至る場合もあるので、取り扱いには注意を要する[注 1]。
なお、酸素との反応、すなわち、燃焼すると、水及び三酸化ヒ素を生じる。
そもそもアルシンは比較的不安定な化合物であり、熱・光・水分によって分解され、ヒ素と水素を生じる。
毒性
ヒトに対してアルシンは猛毒であり、アメリカ合衆国産業衛生専門家会議(ACGIH)の勧告によるアルシンの許容濃度は、時間加重平均濃度にて 0.005 ppmである。アルシンを大量に吸入した場合、血液・腎臓に影響が出て、最悪の場合には死に至る。
アルシンの曝露された結果の症状は、数時間から数日遅れて現れる場合もあるため、その間は医学的な経過観察が必要とされる。
合成
用途
ヒ化ガリウム(GaAs)やヒ化インジウム(InAs)等の化合物半導体の原料として重要である。アルシンを原料としての半導体製造においては、有機金属気相成長法(MOCVD)やガスソース分子線エピタキシー法(GS-MBE)が用いられる。原料ガスとしてアルシンを管内に送り込む方法で、均等に層を積み上げる成長工程を担う[5]。
有機アルシン
有機化学において、水素化ヒ素を親化合物とし、一般式が RR1R2As(各置換基は H または有機基)と表される一連の誘導体も、俗に「アルシン」と呼ばれる。トリフェニルアルシン((C6H5)3As)などは、配位子としての用途がある。



