ウミヘビ科
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特徴
ウミヘビは海生に適応したヘビで、熱帯から亜熱帯の海域に生息し、回遊する種は亜寒帯の地域まで北上することもある。体型は種類によって異なり、セグロウミヘビのように腹板を持たない種や、エラブウミヘビのようによく陸に上がるために腹板を持つ種などさまざまな種がいる。
鰓を持たないため、水面で肺呼吸し息を止めて水中に潜水する。また、水中では皮膚呼吸によって、酸素をまかない、二酸化炭素を排出する[2]。気管や肺、赤血球などが陸棲ヘビより発達している。鼻孔には特殊な海綿状組織からなる弁があり、水を遮断する。
潜れる深さは200メートル以上潜ることが確認されている[3]。
絶滅したパラエオフィスは、全長 8.1‐12.3メートルと推定されている[4]。現存する種では、イエロー・シー・スネークが最長のウミヘビと見られ、3メートル近くなる[3]。
尾は縦に平べったくなっており、泳ぐのに適している。泳ぐ際は体を横にくねらせて泳ぐ。また、横縞を持つ種類が多い。これは、ウミヘビがアマガサヘビやサンゴヘビなどの横縞を持つコブラの仲間から進化してきたためであるという説がある。
性質はおとなしい種類が多いが、手で持つと咬まれることがある。
エサなどから塩分を過剰に摂取するため、舌の下部には体内の塩分を排出する後舌下腺(posterior sublingual glands)を持ち、舌の動きで塩分を排出する[5][6]。
ほとんどの種で毒を持ち、餌へのこだわりが強いため、飼育は難しい[7]。
毒
毒ヘビの中でもトップクラスに強い毒を持つ種が多い。ウミヘビ科のヘビは、獲物や敵の神経の放電を塞ぐ神経毒を持ち、咬まれると主に麻痺やしびれが起き、やがて呼吸や心臓が停止して死に至る(ただし、スズメダイ科やハゼ科の魚類の固着性の卵塊を専門に摂食するカメガシラウミヘビ[3]とイイジマウミヘビの2種は、毒腺が完全に退化して唾液の毒性も失われているという)。
ウミヘビの場合は海中で咬まれることが多く、放っておくと身動きが取れなくなって溺死してしまう恐れもあるため、速やかに陸もしくは船上に上がることが望ましい。
ほとんどのウミヘビは牙が小さく、咬まれても毒を注入されることは少なく、人間の死亡例は少ない[3]。
感覚器
他の爬虫類と同様に、舌が嗅覚器官となっており(鋤鼻器)、水中の方が匂いの感度が高くなるためか、舌の出す時間は短く、先端のみを出す[5]。
視力がよくないため好奇心から近付いてくることもあるが、人間だと分かった途端に逃げていくことが多い。
視覚は短波長側(青や紫外線など)で捉えられるよう水中に適応している[8]。
分布と進化
東南アジアのフィリピンやソロモン諸島近海のコーラル・トライアングルで2,500万年以内に進化を遂げて、太平洋へ進出した。大洋で生息できるのはセグロウミヘビ一種のみで、他の種は浅瀬で生息する。セグロウミヘビは18℃以下の水温では死んでしまうため、喜望峰周辺の水温では棲息できない。またアフリカ南西部は乾燥しており降雨がないため、嵐で海面にできた真水の層から水分を補給するウミヘビでは、水分が得られず生きていくことが出来ないため、大西洋へ進出できない状態となっている[9]。
陸に上がれるのはエラブウミヘビ属の種のみで、他の種は海や淡水から出ることはない[7]。
繁殖
エラブウミヘビ属の1種は胎生と見られているが、それ以外は陸上で卵を産む。それ以外のウミヘビは卵胎生である[10]。
分類
分類・和名は田原(2020)による[11]。分子系統解析により、複数の属がウミヘビ属に統合された。
- ミナミウミヘビ属 Aipysurus - 7種 オリーブウミヘビ Aipysurus laevis ・デュボアトゲオウミヘビ Aipysurus duboisii
- カメガシラウミヘビ属 Emydocephalus - 2種 カメガシラウミヘビ Emydocephalus annulatus ・イイジマウミヘビ Emydocephalus ijimae
- マングローブウミヘビ属 Ephalophis - 1種 マングローブウミヘビ Ephalophis greyae
- ウミコブラ属 Hydrelaps - 1種 ウミコブラ Hydrelaps darwiniensis
- ウミヘビ属 Hydrophis - 49種
- ベルチャーウミヘビ Hydrophis belcheri
- クロガシラウミヘビ Hydrophis melanocephalus
- タールタンスイウミヘビ Hydrophis semperi(フィリピンのタール湖に生息する淡水生のウミヘビ。クロガシラウミヘビの陸封型と言われている)
- マダラウミヘビ Hydrophis cyanocinctus
- ヨウリンウミヘビ Hydrophis stokesii
- クロボシウミヘビ Hydrophis ornatus
- セグロウミヘビ Hydrophis platurus
- トゲウミヘビ Hydrophis curtus
- イボウミヘビ Hydrophis schistosus
- エラブウミヘビ属 Laticauda - 8種 一般的にはウミヘビとされるが、狭義のウミヘビ類とは別の系統に属する。
- アラフラウミヘビ属 Parahydrophis - 1種 アラフラウミヘビ Parahydrophis mertoni
系統
以下の系統樹はSanders et al.(2012)による[12]。
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ウナギ目のウミヘビ科について
魚類のウナギ目には、ダイナンウミヘビやホタテウミヘビが属するウミヘビ科 (Ophichthidae) が存在する。英語でも Snake eel(ヘビウナギ)と通称され、ヘビのように細長い体や獰猛な顔つきが名前の由来であると思われる。
ウナギ目ウミヘビ科の生物は、毒を持たない海水魚の一種(ウナギやウツボの仲間)であり、本項のウミヘビとはまったく別の生物である。

