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キリ

シソ目のキリ科 Paulowniaceae From Wikipedia, the free encyclopedia

キリ(桐[5]学名: Paulownia tomentosa)は、シソ目キリ科キリ属落葉広葉樹。別名、キリノキともよばれる[6]中国名は毛泡桐で[2]漢語の別名として白桐、泡桐、榮がある。初夏に特徴的な淡紫色の花を咲かせる花木で知られる。日本における経済的価値は高く、林業の特用樹種である[7]。アメリカの国立公園では外来種として駆除の対象[8]。日本では軽くて狂いや割れも少ない材の特性を活かして、高級家具の桐箪笥や、琴、琵琶が作られる。

概要 キリ, 保全状況評価 ...
キリ
キリ
キリ(愛媛県 5月)
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : 真正キク類I Euasterids I
: シソ目 Lamiales
: キリ科 Paulowniaceae
: キリ属 Paulownia
: キリ P. tomentosa
学名
Paulownia tomentosa (Thunb.) Steud. (1841)[2]
和名
キリ[3][4]
英名
Empress tree
Princess tree
Foxglove tree
変種
  • P. t. var. tomentosa
  • P. t. var. tsinlingensis
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属名はシーボルトが『日本植物誌』(1835年)においてアンナ・パヴロヴナ献名したもの。ただしシーボルトが与えた学名はP. imperialisであり、後にツンベルク1783年ノウゼンカズラ科ツリガネカズラ属としてBignonia tomentosaと命名していたことが判明して1841年に現在のものに改められた[9]

形態

落葉広葉樹の高木で、樹高は最大15m、胸高直径50㎝に達する[10]。丸く横広がりの樹形になる[11]

成木の樹皮は灰白色、明確な裂け目はできないが、全体的にざらついたものとなる。若い枝、ごく若い幹などは褐色で皮目が良く目立つ[10]。生長するにつれて樹皮の色が変わり、皮目は縦に裂けて筋状になっていく[5]

葉は枝に対して対生する。よく成長した葉は長さ・幅ともに40㎝を超えることがあり、非常に大きくよく目立つ。形は結構個体差があるが、全体に基部は心臓型で葉身は広卵型となり先端がとがり3-5裂する[10]。葉脈は掌状脈、全体に毛が密生する。葉柄も長く30㎝を超えることがある[10]

花は枝先に大型の円錐花序が立ち上がり、これに多数の花をつける。個々の花は5㎝程度の比較的大きな筒状のもので下を向く。花冠は先端が5裂し、色は全体に紫色だが、内部は白色と紫色の点線状の模様が目立つ。花は両性花[12]で雄蕊は4本、葯は褐色である[10]

果実は蒴果、種子には翼がある。果実は割れて種子が撒布され、枯れ残った果序も、冬までよく枝に残る[5]

冬芽はいぼ状でごく小さく芽鱗4 - 6枚に包まれており、枝先に頂芽、枝には側芽が対生する[5]花芽は丸く、茶褐色の毛が密生し、花序にたくさんついて冬はよく目立つ[5]。葉痕は円形や心形で大きく、冬芽よりも目立ち、維管束痕が輪状に並ぶ[5]

根系は太い根を主体に垂下根、斜出根をよく伸ばすタイプである。根は全体的に大径根ばかりが目立ち、小中径の根の発達は悪く細根も少ない。また、材質上軟らかく比較的腐りやすい。これらのために土壌保持力は低い[13]

生態

花期は初夏、種子は同年の秋から冬にかけて熟す。花は虫媒花である。

本州中部以南ではテング巣病の影響を受けやすい[14]。キリてんぐ巣病と腐らん病はキリの栽培に重要な影響を及ぼすとされ、病原はかつて炭疽菌と推定されたが日本で初めて1967年にファイトプラズマである[7]ことが解明された[15]

キリてんぐ巣病を媒介するのは、セミ、カメムシ、ヨコバイなどのカメムシ目の吸汁昆虫ではないかとしていくつか調査が行われているが、決定的なものは見つかっていない[16][17]

分布

東アジア地域。後述のように分類的にもまだ未確定なところがあり、正確な分布地は不明である。日本では東北地方以南に見られるが、古い時代に持ち込まれた帰化植物ではないかと言われることが多い[12][5][18]

分類

産地によって形態的に差が見られることから、日本で「キリ」とされている樹木には近縁種の複数種が含まれることが予想されていた。遺伝子検査の結果もこれを支持しており、少なくとも2種類の系統に加えて雑種個体がいるという[19]

白花は変種ないし品種扱いすることがあり、高知県で見つかったものは品種「シロバナノキリ」と命名されている。おそらく突然変異個体ではないかと推定されている[20]

上位分類はゴマノハグサ科ノウゼンカズラ科とされることが多かったが、APG分類体系では独立のキリ科を設ける。

キリの名前は、他の大きく横広の葉を持つ樹木にもつけられているが、実際にはこれらは遠縁の別種である。同じキリ科の近縁種は9種ほどしか知られておらず日本には分布もしていない。古くから知られるアオギリアオイ科)もまったく異なる種である。中国で古くから両方に「桐」の字を用いているために混乱が生じている。『斉民要術』ではアオギリを「青桐」、キリを「白桐」と呼び分けている[21]。現在の中国ではアオギリを「梧桐」、キリを「泡桐」と呼ぶ。この他イイギリヤナギ科)、アブラギリトウダイグサ科アブラギリ属)、ナンヨウアブラギリ(同ナンヨウアブラギリ属)などもまったく別種である。

人間との関わり

木材

道管の配置は環孔材。気乾比重0.3前後の非常に軽い木材で、国産樹木で使用される木材としては最も軽いものである。軟らかく加工用意、乾燥に際しての狂いも少ない[22]。日本の建具、家具、箪笥や楽器、下駄などの材料とされてきた[23]が、ヨーロッパやアメリカでは用材としての特性を活かした利用は進んでいない[8]

桐箪笥を高級家具の代名詞とする日本には中田喜直作曲『桐の花』が描いている[24]ように、娘が生まれるとキリを植え、結婚する際にはそれを伐採して作った箪笥に着物を詰めて嫁入り道具に持たせるということがよく言われた[12][23]。箪笥としては、キリ材は軽くて加工がしやすい上に、材が湿気や熱気を防ぐ性質で虫害を受けることが少ないことが注目された[23]。湿気を遮る能力が高いと同時に熱気を遮断することは、材の断熱効果が高いことを意味し、火事に遭っても箪笥の外側だけが焦げて、中の衣類は損傷を受けなかったという事例も少なくないという[23]。家具として仕上げたときの磨き上げ効果も高いことも特徴で、白木が美しいことは日本で評価された[25]。日本では江戸時代から桐箪笥が全国各地で作られ、江戸時代後期の安政の大地震のあとでは、キリの燃えにくさや、洪水に遭っても浮いて流れ中身を守ってくれる特性が確かめられたので、桐箪笥がよく売れたといわれている[12]

また桐材を使い琵琶などの弦楽器を作り[12]、軽量性は釣具の浮子(うき)にも利用された [26]。キリ材は軽い上に摩滅しにくいことも、材として有用な点として認められている[25]。箱や和机にもキリが使われ、木目の美しさと共に火に強い性質から火鉢にも使われている[26]羽子板の重要な材料にもなっている[26]。また発火しづらいキリは金庫の内側にも用いられ、金沢大学が耐火性を実証実験した[27][28]

もっぱら材の性質に注目され、その品種ごとに、青桐、赤桐、白桐、紫桐などと区分された[26]。産地としては福島県会津地方が最も著名で、良質な材が採れるといわれる[26]。これに次ぐのは青森県岩手県南部地方で、日本以外の中国台湾産のものは材が軟らかすぎて箪笥用には下級品とされる[26]。日本では各地で材を採ることを目的に植栽されていたが[26]、需要の高まりや産業構造の変化により北米南米、中国、東南アジアから輸入されることも多い[要出典]。しかし日本以外の国では、もっぱら花を観賞するために植えられる[26]

桐炭は研磨用、火薬用、化粧用の眉墨(アイブロー)に利用された[29]。また桐灰は古くは懐炉(カイロ)にも用いられ、桐灰化学の屋号の由来となっている。キリから作った炭は、軟らかい性質で均質なものができるので、デッサン用や懐炉灰用には向いていると言われ、最初からその目的用で製造される[18]

西日本でも植栽されるが、桐材の名産地といわれるところは東日本に集中しており、特に東北地方と関東地方で多い。

象徴

五七桐花紋

日本には白桐をもとに意匠化された紋章がいくつかある。それらを総称して桐紋もしくは桐花紋という。中でも公的機関のシンボルとして多用されている五七の桐と一般的に家紋として広まっている五三の桐と呼ばれる紋が代表的であり十大家紋に挙げられるほど多く見られる。桐の紋章はと並んで皇室の紋章であり、足利家豊臣家もまた桐を紋章としている[18]

古代中国では聖王を象徴する鳳凰が「梧桐の木に宿り竹の実を食う」とされ神聖視された[注釈 1]。日本でもキクとともに皇室の紋章で、キクは正紋、キリは副紋とされる[12]嵯峨天皇の頃から天皇の衣類の刺繍や染め抜きに用いられるなど、「菊の御紋」に次ぐ高貴な紋章とされた。また中世以降は天下人たる武家が望んだ家紋でもあり、足利尊氏豊臣秀吉などもこれを天皇から賜っている。このため五七の桐は「政権担当者の紋章」という認識が定着することになった。

近代以降も五七の桐は「日本国政府の紋章」として大礼服勲章桐花章旭日章瑞宝章)の意匠に取り入れられたり、菊花紋に準じる国章としてビサやパスポートなどの書類や金貨の装飾に使われたり、「内閣総理大臣の紋章」として官邸の備品や総理の演台に取付けるプレートに使われている。過去に存在した国鉄の紋章も桐紋に蒸気機関車の動輪を組み合わせたものだった。

また、皇宮警察本部法務省では「五三の桐」が紋章として使われている。

花札では12月の絵柄として、「桐に鳳凰」、カス3枚が描かれる。

キリの花言葉は、「高尚」とされる[12]

種の保全状況評価

都道府県作成のレッドリストでは2026年現在本種を絶滅危惧種等に指定するところはない。そもそもが外来種であるという説が根強い種である。

外来種問題

アメリカ合衆国では観賞用に輸入したものが野生化し、伐採しても根株を残すと旺盛に繁殖する外来種として駆除に手を焼いて農薬を用いる[8]

名称

植物は厳密に標準和名は定められていないが、「キリ」が事実上の標準和名に相当する代表的な名前とされ、『新日本植物誌』(1983)[30]、『環境庁植物目録』(1988)[3]、『日本維管束植物目録』(2012)[4]ほか、この名前で掲載する図鑑や目録が多い。キリの由来は「伐り」というのが一説にあり、江戸時代の博物図鑑『大和本草』第11巻には「白桐」の名前で掲載され、「この木は切れば早く成長する。故にキリと呼ばれる」と書かれており[31]、キリの萌芽更新能力の高さに基づいた生態的および利用による命名だとされている。

漢字は「桐」で木編に同と書く。藤堂明保によれば「同」という字には「突き抜ける」という意味があり、キリの幹が筒抜け状態になっているという形態的な特徴由来の「桐」であるとしている[32]。実際にキリの幹の切断面は中空になっている。加納(2014)も藤堂の説を概ね踏襲するが、キリの軟らかい材質が突き抜けやすいという点からの利用的な命名なのではないかとしている[33]

地方名はあまり知られていない。「ホンギリ」「キリノキ」などが東北地方を中心に知られる程度である[34]

英語の「princess tree」は、属名の Paulownia の語源であるアンナ・パヴロヴナロシア大公女であったことに基づく[要出典]

脚注

参考文献

関連項目

関連資料

外部リンク

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