サルパ

サルパ目の科、それに属する尾索動物の総称 From Wikipedia, the free encyclopedia

サルパは、サルパ目サルパ科に分類される尾索動物の総称。生物学上ホヤの仲間に分類され、樽形でプランクトン性の動物である。収縮により、寒天質の体に水を通すことで移動する。この推進方法は、ジェット推進としては動物界で効率の良いシステムの1つである[2]。吸引した水を体内の捕食フィルターで濾過し、植物プランクトンを摂取する。和名のサルパは学名の Salpa に由来し、厳密にはトガリサルパ属に属する7種の総称として使われている。

概要 サルパ, 分類 ...
サルパ
紅海海面付近のサルパの鎖
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 尾索動物亜門 Urochordata
: タリア綱 Thaliacea
: サルパ目 Salpida
: サルパ科 Salpidae
学名
Salpidae
Lahille, 1888[1]
英名
Salp
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分布

赤道下、温帯冷帯の海に棲息し、海面近くに単独または長い糸状コロニーとして観察される。最も多く見られるのは南極海[3]、しばしば深海で巨大な群れを形成してオキアミより多い事例もある[4]。1910年以降に南極海のオキアミの個体数が減少すると、サルパの個体数が増えるように見える。ワシントン州沿岸でもサルパの個体数は増えている[5]

鉛直分布は太陽光の届く範囲である有光層に多く生息するとされる。鉛直移動する種は深い中層や深層で見つかることもある。最近の潜水艇を用いた調査などから、サルパ類の鉛直的分布深度はこれまでの想定より広範囲にわたることが明らかになってきている[6]

生活環

サルパは複雑な生活環を持ち、生殖の仕方が一世代ごとに交互に変わる。生活環には2つの段階があるが、双方の段階が同時に海中に存在する。見た目はかなり異なるが、どちらも寒天質でほぼ透明な管状の動物で、1-10センチメートル程度の大きさである。卵生個虫 (oozoid) と呼ばれる単独の段階では樽型だが、無性生殖によって数十から数百の個体からなる鎖を作り出し、これは小さい段階で親から切り離される。

鎖を構成する個体は芽生個虫 (blastozooid) と呼ばれる。浮遊中や食餌中も繋がったままで、それぞれの個体の大きさが成長する。個々の芽生個虫は有性生殖を行う。芽生個虫は隣接的雌雄同体で、最初に雌に成熟し、鎖中でより古い個体が生み出した雄性配偶子で受精する。胚は親の体壁に付着する。成長した卵生個虫は最終的に親の芽生個虫から放出され、単独の無性生殖段階に戻る。

世代の交代により、世代の時間を短くすることが可能になり、単独の段階と集合の段階の個体が同時に海中に存在する。植物プランクトンが豊富な時には、この速い生殖によりサルパが短期間繁栄し、大部分の植物プランクトンを食べ尽くす。大量のサルパを維持する餌が足りなくなると、この繁栄の期間は終わる。

海洋学上の重要性

モモイロサルパ (Pegea confederata) を描いた1995年のアゼルバイジャンの切手

サルパが繁栄した理由の一つに、植物プランクトンの大量発生への対応方法がある。餌が十分であればサルパは急速にクローンを産み出し、あらゆる多細胞動物よりも速く成長して、海から急速に植物プランクトンを除去する。プランクトンの密度が高すぎると、サルパは動きを妨げられ沈む。この期間、浜辺にサルパの体がシート状に積み上がりスライム状になる。サルパと競合して他のプランクトンの個体数も変動する。

海中に沈むサルパの糞塊や死骸は炭素を海底に運ぶ。サルパの量は、海洋の生物ポンプの役割を効率良く果たすのに十分である。サルパの存在量や分布の大きな変化は、海洋の炭素サイクルを変えて気候変動に影響する可能性がある。

神経系及び他の動物との関係

底生性のホヤ類や、ウミタル目ヒカリボヤ目等の海洋性尾索動物と近縁である。

透明で単純な体の構造とプランクトンのような行動からクラゲのように見えるが、背部神経索を持つ脊索動物である。

サルパは脊椎動物の前段階の形態を持つと考えられ、脊椎動物の進化モデルの出発点として用いられる。サルパの小さな神経の塊は原始的な神経系の最初の例で、のちにより複雑な脊椎動物の中枢神経系に進化したと考えられている[7]

アミダコはサルパの中に入り込んで回遊している[8]

分類

13属44種が属する。分類と種数はWoRMS[1]、和名はBISMaLを参考[9]

サルパ科

モモイロサルパ属

フトスジサルパ

オオサルパ

ハンモンサルパ属

ワサルパ亜科

クチバシサルパ属

シマサルパ属

トガリサルパ属

ツツサルパ

ヒメサルパ属

系統[10]

漁業被害

1920年代にSalpa fusiformis北海へ大量に侵入してニシン漁が衰退した[11]。近年は福井県など一部地域の越前ガニ漁期に大量発生し、漁網の目詰まり・破れ、カニ引き上げ電動ウインチの破壊などの被害が発生し、水中から引き上げた漁網に絡み付いたサルパの除去にも苦慮している。

関連文献

  • Bone, Q. editor (1998) The Biology of Pelagic Tunicates. Oxford University Press, Oxford. 340 p.

出典

外部リンク

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