スマ
サバ科マグロ族スマ属の海水魚の一種
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スマ(須萬[4][5][6]、須万、須満[7]、縞鰹[8])は、条鰭類スズキ目サバ亜目サバ科マグロ族に分類されるスマ属 Euthynnus Kishinouye, 1920 に属する海水魚の属、およびその一種である E. affinis (Cantor, 1849) の和名。本項では特記なき限り E. affinis について解説する。 E. affinis は日本ではスマガツオ、ヤイト、ヤイトガツオとも呼称される(後述)[7]。
| スマ | ||||||||||||||||||||||||||||||
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Euthynnus affinis(FishBaseによる図解)
生体標本(ジャカルタ産) | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 保全状況評価 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| Euthynnus affinis (Cantor, 1849) | ||||||||||||||||||||||||||||||
| シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| スマ(須萬) | ||||||||||||||||||||||||||||||
| 英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
| Kawakawa Mackerel tuna etc.[1] |
インド太平洋(インド洋・太平洋)の温帯・亜熱帯・熱帯域に広く分布する大型肉食魚で、刺身などで食用にされる[7]。マグロやカツオの仲間で、「全身トロ」と形容される脂の乗りの良さと滑らかな食感から、日本では愛媛県などで高級魚として養殖している[9]。
呼称
2024年時点の標準和名は「スマ」であるが、かつては Euthynnus yaito Kishinouye, 1915 と記載されて標準和名はヤイトであった[7]。「スマ」は東京、高知、宇和島の呼称である[10]。
「ヤイト」の異称は胸鰭下方の腹部に複数ある黒斑を、灸(やいと)の痕に見立てたものである[11]。「スマ」の語源について榮川省造は、この種の背部体側にある曲線状の黒い横帯の存在から、縦縞を有するカツオ Katsuwonus pelamis に対し「横縞」を有する意味で「縞」(シマ)と呼ばれていたものが「スマ」に転じた、と考察している[12]。2022年に藤原昌高は、ヒラソウダ Auxis thazard を「スマ」と称する地域やスマを「ソマ」と呼称する地域の存在から、榮川の「縞鰹」語源説に疑問を呈している[13]。
学名(ラテン語名)のうち属名は、ギリシャ語の合成語「eu(=good、良)+thynnos(=tuna、マグロ)」である[3]。かつての種小名 yaito は「灸」に由来する[7]。
英語名は、Kawakawa、Kawa kawa、Black skipjack、Black skipjack tuna、Eastern little tuna、Island skipjack、Little tuna、Little tunny、Mackerel tuna、その他多数が存在する[3][1]。研究者らはポリネシア語の kawakawa (カワカワ)を多く用い[14]、英名 Yaito も用いる[10]。
中国語は「巴鰹」(バージエン)と称する。台湾語は「煙仔魚」(イエナヒー)、「三點仔」(サムディアマー)など称する[15]。
日本の地方名
日本の地方名は、ワタナベ(千葉県勝山)[10]、スマガツオ(東京都)、キュウテン(八丈島)、ホシガツオ(高知県)、ヤイト、ヤイトガツオ(西日本各地)、ヤイトマス(和歌山県)、ヤイトバラ(近畿地方)、オボソ(愛媛県南宇和郡愛南町)[7]、セガツオ(九州)[4][5]、ウブシュ(宮古島)[16][17]、ウブスカツ[18]、ホウサン[19]、ヒラスマ、ヒラ(徳島県海部郡)[6]などがある。
八丈島の地方名「キュウテン」は、「ヤイト」と同様に「灸点」に由来し[20][13]、二木島の「ホクロ」も同義である[20]。「ワタナベ」の「ワタ」は「海」を渡る、「ナ」は「ノ」、「ベ」は群れ成す「部」、それぞれを意味し、群れをなして泳ぎ回る海水魚を意味する[20]。尾柄部が特に細いことから、愛媛と鹿児島で「オボソガツオ」、腹部が柔らかいことから三重で「ヤワラ」、それぞれ称される[20]。
高知県、徳島県海部郡、和歌山県の紀北地方は、「スマ」と称する場合は「スマ」に酷似のヒラソウダを指し、「スマ」は「モンズマ」「ヤイト」「ヒラスマ」など地方名で称する場合もある[21][6][22]。高知県は「ヤイト」「モンズマ」のほかに「モンタ」「オボソ」など地方名でも称される[23]。三重県や和歌山県もスマとソウダガツオの混称として「スマ」や、同様に「縞」が転じたとされる「ソマ」が用いられ[注 1][20]、千葉県の「ワタナベ」もスマとソウダガツオの大型個体の混称として用いられる[20]。
カツオ(ホンガツオ、マガツオ)やヒラソウダ、マルソウダ Auxis rochei 、ハガツオ Sarda orientalis とともに「カツオ」と総称される場合もある[25]。
分布
インド太平洋(インド洋・太平洋)の温帯から熱帯にかけた海域に分布する[7]。分布域は海水温が摂氏18度 (℃) から20℃程度[26]、もしくは海水温18℃から29℃の海域である[4]。日本では、相模湾から屋久島の太平洋沿岸、兵庫県から九州南部の日本海沿岸、東シナ海沿岸、琉球列島沿岸に分布[7]し、日本海は稀である[19]。日本国外では台湾やハワイ、西南太平洋諸島の近海で確認される[19]。
北日本における漁獲記録は、2022年以前に青森県の太平洋側や秋田県沖の日本海で記録があり、2022年9月末に青森県西津軽郡深浦町沖の日本海でも水揚げされ、海水温の上昇による生息域北上の可能性が指摘[27]され、北海道の道南でも発見されている[13]。藤原昌高は2022年時点で、2010年前後に比して温暖化の影響で分布域が北上し、かつてはあまり漁獲されなかった相模湾や千葉県外房でも水揚げされ、三重県、長崎県五島列島、鹿児島県などで体重2キログラム (kg) 以上の大型個体がまとまって水揚げされている、としている[13]。
特徴
最大級の成魚個体の場合、全長は100センチメートル (cm) を超え[11]、体重は10 kgに達する[28]。日本でおもに見られる個体は、全長50 - 60 cm程度で[26]体長50 cm以下が一般的である[14]。国内の一般的な大きさは、体長60 cmで体重3 - 4 kg程度とする文献や[29]、尾叉長[注 2]は通常60 cmまで最大1 mとする文献もある[31]。
体型はカツオなどと同様の紡錘形で[32]、体幹は円く太い[4]。鱗は眼の後部・胸鰭周辺(胸甲部)・側線周辺にしかない[5][26]。カツオと異なり、口腔内の口蓋骨に歯があり[33]、時には鋤骨にも歯がある[10]。脊椎骨数は39個(カツオは41個)、第一背鰭は15 - 17棘[4]ないし15 - 16棘(カツオは15 - 17棘)で[34]、前端部が高い[4]。第二背鰭は12 - 13軟条と8離鰭(カツオは2棘+12 - 15軟条と8離鰭)、ないし7 - 8離鰭で[4]、臀鰭は13軟条[34]ないし12 - 14軟条[4]と7離鰭(カツオは2棘+12 - 15軟条と7離鰭)[34]。胸鰭は25 - 27軟条、腹鰭は1棘5軟条[4]。尾鰭は叉状である[4]。背部は暗青色で[32]、明灰色の部分には斜めに走る縞があり、これが横縞に見立てられたことが「スマ」の和名の語源と考えられる[7]。背部の模様はソウダガツオ類と同じく、サバ様の模様と形容される[14]。体側腹部は銀白色である[4]。
スマはヒラソウダによく似るが[22][35]、ヒラソウダよりも体高が高く大型になる[5]。「ヤイト」の異称の通り、胸鰭の下に数個の黒い斑点があることが特徴である[11]。この黒斑は3個のものが多いとする文献があるが[12]、数と濃淡は個体差がありほとんど見えないものもあるとする文献もある[11]。大型個体では斑点が小さくなる[11]。この斑点は、死後に鮮明となるカツオの縞紋様と対照的に[5]、死後は不明瞭になる[4]。
仔魚・幼魚
仔魚は全長4 ミリメートル (mm) 前後から胸鰭・尾鰭の鰭条が分化し始め[4]、全長6 mm程度になると、上下の顎先端、下顎側部、第1背鰭に黒色素胞が出現する[36]。これらの黒色素胞は成長に伴ってその数を増し、仔魚期の終わりには第1背鰭全体が黒っぽくなり、下顎側部に数個の色素叢が点列状に並ぶ[36]。前脳部・峡部・肛門直前の腹面に黒色素胞がある点でマグロ属の仔魚と、それらの特徴に加えて第1背鰭の色素胞発達の相違からカツオやソウダガツオ属の仔魚とそれぞれ区別できる[36]。ハガツオの仔魚とは形態的特徴が酷似するが、ハガツオの仔魚はスマの仔魚と違い、眼上隆起縁が発達する特徴や、尾部腹面に顕著な色素叢が点列状に並ぶ特徴がある[36]。仔魚は全長11 mm前後にまで成長すると、各鰭条数が成魚と同数になる[4]。
スマの幼魚は全長18 cm前後の場合、成魚の特徴である胸鰭下の黒斑が未発達でソウダガツオ類の幼魚に酷似するが[37]、体側に8条[4]ないし約12条の黒っぽい横帯が見られ[26]、この模様の有無で区別することができる[37]。ソウダガツオ類と異なり、スマの幼魚の両顎は歯がある[37]。全長20 cm程度まで成長すると胸鰭下方の黒斑が出現する[4]。。
生態
沿岸の表層や中層域に生息して高速で遊泳する[4]。成魚は単独[38]もしくは10尾前後の群れで回遊する[4]。カツオやソウダガツオ類などに比べて個体数は少なく、スマ1種だけで大群を作ることはない[38]。
南西諸島や小笠原諸島の沿岸は通年で釣果があるが、本州太平洋岸は8月から10月に釣期が限られる[38]。相模湾や駿河湾はソウダガツオ類の群れの中から稀に釣れる程度でまとまって漁獲されず、沿岸の表層をカツオやソウダガツオ類、ハガツオなどほかのカツオ類に混ざって回遊すると考えられる[11]。カツオの仲間では沿岸性が強く、島嶼部では磯際まで回遊する[38]。食性は肉食性で、おもな食物はアジやイワシなどの魚類、イカ類[4]、甲殻類など[4][5]で、沖合の表層で小魚などを捕食する[33]。スマを捕食する天敵はカジキ類、マグロ類である[5]。好奇心が強く、リーフ(礁)の外縁などに潜水した人間に接近することもある[4]。
日本近海は通常、6月から9月が産卵期とされる[39]。産卵期は南方へ行くほど長くなり、北赤道海流沿いで冬期を除く8か月間産卵する[38]。熱帯で通年産卵するとする文献もある[4]。特定の産卵場は持たず[38]、1個体につき複数回、1産卵期に250万粒前後を産卵する[4]。カツオの卵は球形で直径は1.0 mm前後であるが[40]、スマの卵はカツオの卵に酷似し[41]、受精卵は径1.5 mmで産卵から約1日で孵化する[38]。日本近海で4月から7月ごろに、九州から琉球列島の水域で仔魚が見られる[36]。産卵域は食物が乏しい外洋域で、孵化直後の仔稚魚は一緒に生まれた兄弟を共食いする[38]。
寿命は約6年である[38]。成長が速く、自然界では満1歳で体重1 kgまで育ち、満2歳で成熟する[38]。生後3年で全長50 cm前後に達し、成熟し始めるとする文献もある[4]。自然界で誕生した稚魚を採集して養殖したスマの場合、生後3年目の夏に産卵する[42]。
分類
スマ属 Euthynnus のうち、日本国内で記録されている種はスマ E. affinis の1種のみで、海外はスマ以外に以下2種類が分布する[7]。
- 近縁種
- タイセイヨウヤイト[43] Euthynnus alletteratus (Rafinesque, 1810) Little tunny
- 地中海・黒海、カリブ海・メキシコ湾を含む大西洋の熱帯・温帯沿岸域に分布する。スマより小型である[7]。
- ブラックスキップジャック[13](ボニート)[14] Euthynnus lineatus Kishinouye, 1920 Black skipjack tuna
- 東太平洋の熱帯・温帯海域に分布する。スペイン語で「可愛い魚」を意味する「ボニート」の名でも呼ばれる[14]。
人間との関わり
漁獲
日本では曳網[5]、定置網[5][7]、巻き網、釣りなどの漁法で漁獲される[7]。カツオ釣り漁やマグロ延縄漁で混獲される[26]。伊豆諸島は5月から11月にかけて盛んに漁獲される[4]。フィリピン、マレーシア、パキスタン、インドなどで重要な漁獲対象とされ、1990年代に年間10万トン前後が捕獲された[44]。
愛媛県南宇和郡愛南町は、カツオの一本釣り漁で時折釣果がある[39]。和歌山県はカツオの曳縄漁などで稀に漁獲されるが、漁獲量は少なく食味も高いために市場では高値で取引されている[45]。日本は天然物[42]、および体重2 kgを超える個体で1500円/kg以上の高価がつく[46]。テレビの全国放送で「幻のカツオ」として紹介されるが、九州では安価に入手可能な魚、とする文献もある[18]。かつては西日本で多く東日本は少なかったが、2流通技術の向上や漁獲量の増加により、2000年頃から関東地方などでも散見される[7]。スマについて「2010年(平成22年)前後までは非常にローカルな魚で、漁獲量の少なさや鮮度低下の速さから、東京の市場は稀に入荷する程度であったが、温暖化で分布地域が拡大して豊洲市場でも見かける頻度が増えた。食味の評価が高いために入荷量が増えても高値で取引され、買い求めたスマの中で最も高価な個体は体重3 kg以上で、1尾9000円程度(3000円/kg程度)だった」と述べている[47]。愛媛大学南予水産研究センターによれば、スマは築地市場など中央卸売市場にはほとんど出荷されず、多くが水揚げ産地で消費されていた魚である[29]。
カツオやソウダガツオと同じく、遊漁では活イワシの泳がせ釣り、一本釣り、ルアー釣りで釣れる[38]。島嶼部で磯・防波堤からのカゴ釣り、泳がせ釣りでヒラマサの外道として釣れたり[38]、カツオ、メジマグロ、シイラなどを狙ったフカセ釣りやトローリングで外道として釣れたりする場合もある[5]。
食材として
鮮魚は丸のまま、もしくは切り身に加工された状態で流通する[4]。魚肉はカツオに似た赤身で[5][38]、大型になるに従って脂乗りが良くなる[13]。カツオよりも肉の赤みは濃く[48]、身はピンク色[49]である。日本における旬は秋から冬[50]、春[38]、春から夏[7]など諸説ある。特に冬は非常に脂が乗り美味となる[18]。小型個体は晩秋から春も大型個体ほど脂は乗らないが、大型個体の味が落ちる8月後半から9月もあまり味が落ちない[7]。
風味はカツオに似るが、カツオより身がやや柔らかく、同じ大きさならカツオが美味[48]、カツオよりも味が良い[4]、など評価は分かれる。日本ではカツオと同様に、刺身、たたき(土佐造り)[注 3]、なめろうなど生食のほか、竜田揚げ[11]、角煮[11]、天ぷら[7]、塩焼き、照り焼きなどで食する[51]。あらなどは良質な出汁が取れる[7]。スマについて藤原は「2010年頃より前は、あまり値がつかず、漁師が好んで家へ持ち帰って食する魚で、鮮度低下が速いことから、漁港周辺の居酒屋などで煮付けで提供されることが多かった」と述べている[52]。
鮮魚以外にも、燻製、干物、缶詰、削り節の原料として利用される[26]。
ハワイなどでは一般的な魚[14]で、台湾では刺身、スープ、鉄板焼などに利用する。
養殖
日本では、愛媛県と和歌山県でスマの養殖を研究し、出荷して販売している[53]。
愛媛県はかつて国内養殖魚の生産額で4分の1を占めたが、9割がマダイとブリに偏在していた。価格下落や魚類の感染症流行などリスクに備えた魚種の多様化を課題として、県と愛媛大学は2013年からスマの養殖を共同研究している[54]。愛媛大学南予水産研究センターの松原孝博は、養殖魚の新魚種を考案中に「クロマグロの養殖生簀に混入していたスマを食してクロマグロに匹敵する美味」を確認した[39]。愛媛大学は採卵のための親魚の飼育と研究、愛媛県水産研究センター(宇和島市)は卵の孵化から種苗となる稚魚を全長約5 cmまで育成、それぞれを担当する[39]。和歌山県は、串本町の和歌山県水産試験場がマダイに代わる養殖魚としてスマの養殖用稚魚の生産を試験している[45]。
和歌山県は旧来クロマグロやクエなどを養殖したが、これらは成長まで長期間を要して初期投資など負担が大きい[45]。スマは、食味がマグロに似てクロマグロ代替魚として需要が望め、マグロより小型で下記など利点が多い[55]。
- 既存の魚の養殖施設を活用できる[55]。
- 切り身として仕入れることになるクロマグロとは違い、スマは1尾丸ごと仕入れて料理の直前に捌くことができる[54]。
- 成長速度が速く孵化から出荷までが短い。マグロは出荷に適する体重数 10 kgまで3年程度、スマは出荷体重3 kg程度まで1年半[54]。ハマチやマダイは孵化から出荷まで1年半以上、スマは孵化から半年で体重2.5 kg、全長50 cm程度まで成長する[39]。
知名度の低さ[56]、人工孵化の孵化率と孵化後生存率の低さ、低水温の耐性低さ[45][54]など課題も多く、2015年で愛媛県の養殖海域は県最南部に限定される[54]。音や光に敏感で、付近を走行する車の明かりに反応して網に当たって死ぬ事例も見られる[57]。
愛媛では「伊予の媛貴海」(ひめたかみ)[58]および「媛スマ」[29][59]、和歌山では「海の三ツ星」のブランド名で売出しを図っている[60][61]。愛媛県では2016年度以降、養殖スマのうち体重2.5 kg以上、脂肪含有率25%以上のスマを「伊予の媛貴海」のブランドで販売しており、その基準に該当しないものは単に「スマ」として販売していたが、県産の養殖スマの市場評価の高さを受け、2019年には愛媛県産養殖スマを包括する総称として「媛(ひめ)スマ」を設定し、他産地産のスマとの差別化やブランドの確立を目指している[62]。
養殖にあたっては夏に餌をよく食べ[39]、大きく育つことや、越冬時には海水温15℃以上が必要なことが判明している[54]。愛媛県は、水温を上げた水槽で親魚を飼育することにより、5月ごろに採卵して夏前に孵化させている[39]。養殖可能な海域を拡大するため、より低温に強い品種の研究[54]やスマに適した配合飼料も開発している[62]。愛媛県はスマを県産養殖魚「愛育フィッシュ」の柱の一つとして普及してきたが、2024年(令和6年)9月に設立されたばかりの最大手養殖会社が飼料価格の高騰、種苗の生存率の低さなどから撤退し、同年から2025年(令和7年)の冬季に「媛スマ」が飲食店やスーパーマーケットで流通しなくなったことが報じられている[63]。
非食材利用
食用以外にマグロやカジキなどの釣り餌として使われることもある。
日本は食用魚としての養殖が始まる以前から、東海大学海洋科学博物館[64]、名古屋港水族館[65][23]、葛西臨海水族園[66]、海遊館[23]、四国水族館[67]など、複数の水族館での飼育実績があり、名古屋港水族館や海遊館では産卵も確認されている[23]。元名古屋港水族館職員で、同館の「黒潮大水槽」でカツオ・マグロ類の飼育を手掛けていた斉藤知己は、カツオ・マグロ類は水槽の壁面に激突死することが多いため、水族館での長期飼育は難しく、水槽内での寿命はクロマグロで長くて3年程度、カツオ・キハダ・コシナガが1年であるが、スマは他のカツオ・マグロ類に比べて沿岸性が強く、時に接岸して磯に入り込んでも器用に方向転換できるためか、最初に搬入した個体が10年近く生存していたと述べている[23]。阿部宏喜は、スマはマグロ・カツオ類の中でも飼育しやすい種であるため、日本の水族館の円形水槽で最も多く飼育されている種であると述べている[14]。