バクティ
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バクティ(bhakti)とは、ヒンドゥー教で「最高神への絶対的帰依」を意味する語。「信愛」とも訳される[1]。バクティは『バガヴァッド・ギーター』によって前面に押し出され、一般庶民へと普及された概念で[1]、ヴィシュヌ派を中心に現代においてもヒンドゥー教徒全般に広く受け入れられている。
概略
インドでは紀元前6世紀に輪廻からの解脱を達成し涅槃を説く仏教やジャイナ教が勃興した。釈迦は苦の輪廻からの解脱を目指したが、本来の釈迦の教説では浄土を想定せず「死後に天界を含めて、一切皆苦のこの世界で二度と生まれ変わらないこと」を目指していたと説明される(詳しくは大乗非仏説参照)[2][3]。仏教やジャイナ教の教義はヒンドゥー教(バラモン教)の思想にも影響を与えた。しかし輪廻からの解脱を達成し入涅槃するためには、出家してあらゆる欲や執着を断ち、世俗的享楽を放棄しなければならないという難行であった[4]。
これに対し、7世紀頃に南インドで、神への絶対的な帰依によって神と合一し(梵我一如)、自力では得がたい輪廻からの解脱(涅槃)を得られるというバクティ思想が説かれるようになった。バクティは『バガヴァッド・ギーター』によってすでに説かれていたが、南インド起源のバクティ思想は少女が少年に抱く恋心に喩えられるように、ある一神を選択して帰依するという点に特徴がある[4]。帰依の対象となる神は『ラーマーヤナ』のラーマ神や『バーガヴァタ・プラーナ』のクリシュナ神などが人気があった。