ヒガシダイヤガラガラ
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ヒガシダイヤガラガラ[4](学名:Crotalus adamanteus)は、クサリヘビ科に分類されるヘビ。別名ヒガシダイヤガラガラヘビ[5]、トウブダイヤガラガラ[6]。アメリカ合衆国南東部に分布し、ガラガラヘビの中でも最大かつ、アメリカ合衆国の毒蛇の中でも最大の種の1つである。亜種は認められていない[7]。
| ヒガシダイヤガラガラ | |||||||||||||||||||||||||||
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| 保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
| LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | |||||||||||||||||||||||||||
| 分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Crotalus adamanteus Palisot de Beauvois, 1799[2] | |||||||||||||||||||||||||||
| シノニム[3] | |||||||||||||||||||||||||||
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| 英名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Eastern diamondback rattlesnake[1] | |||||||||||||||||||||||||||
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分布域 |
名称
eastern diamond-backed rattlesnake[7]、eastern diamondback[8]、diamond rattlesnake、diamond-back rattlesnake、common rattlesnake、diamond-back、diamond(-patch) rattler、eastern diamond-back (rattlesnake)、eastern diamond rattlesnake、Florida diamond-back (rattlesnake)、Florida rattlesnake、lozenge-spotted rattlesnake、rattler、rattlesnake、southeastern diamond-backed rattlesnake、southeastern diamond-backed rattler、southern woodland rattler、timber rattler、water rattle、water rattlesnake[9]、diamondback rattlesnake[10]といった英名がある。種小名は「難攻不落の」を意味する[6]。
分布と生息地
ノースカロライナ州南東部から、海岸に沿ってフロリダ半島を通りフロリダキーズまで、西はメキシコ湾に沿ってアラバマ州南部とミシシッピ州を通り、ルイジアナ州南東部まで分布する。原記載時にはタイプ産地は明言されていなかったが、Schmidt(1953)はサウスカロライナ州のチャールストンとした[3]。
乾燥した高地のマツ林、マツやノコギリヤシの低地林、砂丘や沿岸の森林、ダイオウマツやコナラ属の Quercus laevis の林、スゲ属の生える湿地、浸水林、ヌマスギの生える湿地、湿地の高台の森林、砂地のある森林、乾燥した高台の森林、塩性湿地、乾季の湿性プレーリーに生息する。ホリネズミやアナホリゴファーガメが掘った穴を利用する[11]。
形態

ガラガラヘビの中でも最大の種で、毒蛇の中でも体重は最大級である。1946年には、全長2.4m、体重15.4kgの個体が射殺された。キングコブラは全長がより長く、ガボンアダーは全長は短いものの、体重は本種より重い[12][13][14]。全長は最大で2.4m[15]と2.5m[16][17]の記録がある。しかし標本が存在しないため、この記録には疑問がある[11][18]。性的二形があり、雄は雌よりも大きい[6]。
全長2.1mを超える個体は珍しいが、いくつかの記録がある。Klauberは1953年にRoss Allenから手紙を受け取った。その手紙によれば、Allenは生死を問わず、全長2.4mの巨大な個体に100ドル(後に200ドルに増額)の懸賞金を出していた。しかし2.4mの個体は見つからず、2.1mの個体が数匹、2.4mの皮が見つかった。この大きさの皮は全長1.8mの個体から作ることが出来る[10]。2009年にはフロリダ州のセントオーガスティンで、全長2.2mの個体が発見された[19]。
一般的にはさらに小さく、全長1.8mを超える個体は珍しい。全長は1.1-1.7m[20]、または0.8-1.8mとされる[21]。雄31匹と雌43匹を調べた結果、平均全長は1.7mであった[9]。平均体重は約2.3kgである[22]。9匹の飼育下個体の体重は0.8-4.9kgで、平均して2.55kgであった[23][24]。体重5.12kgを超える個体は稀だが、7kgの記録もある[25][26]。
胴体中央部の体鱗列は25-31列、通常29列である。腹板は雄で165-176枚、雌で170-187枚である。尾下板は雄で27-33枚、雌で20-26枚である。頭部では、吻端板は縦長で、2枚の鼻間板に接している。鼻間板から前額板にかけては、10-21枚の鱗がある。眼間板は5-11枚、通常7-8枚である。眼前板と後鼻板の間には、2枚の頬板がある。上唇板は12-17枚、通常14-15枚で、最初の板は前鼻板と接する。下唇板は15-21枚、通常17-18枚である[11]。
体色の地は褐色、黄褐色、灰褐色、緑褐色で、背面には名前の通り、ダイヤモンド形(菱形)の斑紋が24-35個連なる。斑紋の色は濃い茶色から黒色で、中心部は明色である。また、斑紋は黄色い鱗で縁取られる。胴体の後方では斑紋は横縞に近づき、尾では5-10本の縞模様となる。腹部は黄色またはクリーム色で、体側面には暗色の斑点が入る。目の後方から唇の後方まで、暗色の縞模様が入る。この縞は白または黄色の細い縞で縁取られる[11]。尾の先端にはラトルがあり、固い脱皮殻が積み重なったものである。古くなると抜け落ちるが、脱皮時に新しく積み重なる[27]。
生態と行動
ホリネズミやカメの巣穴に隠れ、早朝や午後になると日光浴のために外に出る[28]。活発な時期には地上でより多くの時間を過ごす[29]。地上棲であり、木登りはあまり行わない。茂みや木の中で目撃されることもあり、獲物を探していると考えられる。大型個体では、地上10mの高さに登った記録もある。泳ぎも得意であり、ジョージア州沖、メキシコ湾、フロリダキーズでは、本土から島まで泳ぐ様子が目撃されている。陸地から数マイル離れた場所での記録もある[10]。
性質には個体差があり、近づいても音を立てない個体もいれば、6-9m離れていてもガラガラと音を立てる個体もいる[21]。この音は大きく、遠くからでも聞こえる。脅威を感じると胴体の前部を持ち上げ、S字型の姿勢をとる。攻撃範囲は体長の3分の1以上である[30]。大半の場合はその場にとどまり、何度も攻撃することもあるが、天敵の方を向いたまま後退し、そのまま逃げる場合もある[10][28][30]。攻撃する前にガラガラと音を立てるという説もあるが、実際には音を立てずに攻撃することもある[31]。
摂餌と食性
主にウサギやコメネズミ属などの小型哺乳類、鳥類を捕食する。餌を積極的に探すか、最大一週間待ち伏せを行う[32]。襲った獲物に逃げられると、においを辿って追いかける[28]。
成体はワタオウサギの成獣ほどの大きさの獲物も食べられる。幼体はハツカネズミなど小型のネズミの成獣を食べることができるため、トカゲなどの小さな獲物を食べることは少ない。フロリダ州のほとんどの地域では、トウブワタオウサギとヒメヌマチウサギが主な獲物となっている。リス、ネズミ、トウヒチョウ属やコリンウズラなどの鳥類も獲物となる。オウサマクイナや若いシチメンチョウ、キツツキと卵を捕食した記録もある[10]。
天敵
トウブインディゴヘビ、バシャムチヘビ、コモンキングヘビ、トウブサンゴヘビ、アメリカレーサーなどのヘビ、ウシガエルなどのカエル、アメリカワシミミズク、アカオノスリ、カンムリカラカラ、アメリカトキコウなどの鳥類、イノシシ、アライグマ、アメリカグマ、シマスカンク、カナダカワウソ、コヨーテ、ボブキャット、イヌ、ネコなどの哺乳類が天敵である[26]。
繁殖と成長
繁殖形態は他のガラガラヘビと同様に卵胎生である[33]。妊娠期間は6-7ヶ月で、産仔数は平均で12匹である。幼蛇は10-20日間で母親の元を離れる。2-4年に一度繁殖する[34]。一度に4-28匹の幼蛇を産む[35]。通常は7月-10月上旬にかけて出産する。生まれたばかりの幼蛇は全長30-36cmであり[36]、尾の先端は丸くなっている[30]。寿命は15-20年である[26]。
毒と咬傷

北米で最も危険な毒蛇といわれる[36]。性質は攻撃的ではないが、体が大きいため力も強い。死亡率は30%という見解もあるが[9]、他の見解では治療しない場合、死亡率は10-20%であるという[37]。本種は生息域において、ヘビ咬傷の死亡例の主な原因となっている[38]。
全長に対する牙の長さは、ガラガラヘビの中でも最大である。全長1.5mの個体の牙の長さは17mmであり、全長2.4mの個体の牙の長さは、25mmを超えると推定されている[10]。毒の量は非常に多く、平均して400-450mg、最大で858-1,000mgに達する[39]。毒の乾燥重量は平均410mg、半数致死量は静脈注射で1.3-2.4mg/kg、腹膜内注射で1.7-3.0mg/kg、皮下注射で10-14.5mg/kgである[40]。人の致死量は推定で100-150mgである[39]。
本種の毒には推定で100種類以上の毒素が含まれている。ヘビの毒の中でも研究が進んでおり、約40種類の毒素が特徴づけられる[38]。クロタラーゼというトロンビン様酵素は、フィブリノーゲンを凝固させ、血管内皮の内皮細胞のプラスミノーゲンを二次的に活性化させる。血小板は活性化しないが、フィブリンの生成によって、血小板の減少や赤血球の溶血が起こる。深刻な出血が起こることは稀だが[41]、出血することは多い[42]。低分子量の塩基性ペプチドは、神経筋伝達を阻害する[43]。これにより、心不全が起こる可能性がある。このペプチドはミナミガラガラの持つクロタミンと類似しており、毒液中のタンパク質の2-8%を占める。本種の毒は高度に壊死を起こし、軽度のタンパク質分解を起こす。またホスホジエステラーゼを多く含み、この酵素はブラジキニンを放出させ、激しい痛みや低血圧を引き起こす[39]。
ある症例では、熱い注射針のような瞬間的な痛み、咬傷部からの出血、激しい内臓の痛み、口からの出血、低血圧、弱脈、患部の腫れと変色および激しい痛みなどの症状が現れた。また強い溶血と出血を示した[10]。抗毒素は存在するが、重症の場合は大量の投与が必要となる。脱フィブリン症候群の治療には効果があるが、血小板の減少にはほとんど効果が無い[39]。
人間との関係
飼育
野生個体の飼育は難しいが、飼育下で生まれた個体はよく成長し、齧歯類を餌とする。飼育には乾燥した風通しの良い環境と隠れ家が必要である。飼育温度は23-27℃に保つ必要がある[28]。ケージ内ではライトなどを設置し、温度に差を作る必要がある。また飼育環境が狭いと、餌を食べないことがある。アルビノや白変種も存在する[4]。日本では特定動物に指定されており、個人での新規飼育は出来ない[44]。
脅威と保全
国際自然保護連合のレッドリストでは、低危険種に指定されている。分布域は広く、個体数も多いと考えられているが、個体数は減少傾向にある[1]。ノースカロライナ州では絶滅危惧種とされ、法律で保護されている。ルイジアナ州では1995年に最後に観察されたため、絶滅した可能性が高い[45]。ノースカロライナ州では1990年代初頭以降観察されておらず、絶滅した可能性もある[46][47]。
寿命は長く、生息地も限定されており、分散能力が低い。そのため、生息地の破壊と断片化への適応能力が低い[48]。生息地の破壊、人間による駆除、ロードキルなどが脅威となっている。飼育や娯楽のための捕獲も脅威となっており、その際巣にガソリンをかけてから捕獲するが、ヘビにとっても環境にとっても有害である[49]。サウスカロライナ州で行われた研究によれば、ガラガラヘビのように生息地の破壊に弱い種を移植することは良い結果をもたらす[50]。