ハナヤスリ亜綱
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ハナヤスリ亜綱 Ophioglossidae(ハナヤスリあこう)は、現生の大葉シダ植物(大葉シダ綱)を構成する4亜綱のうちの1つである[1][2][4][5][6]。マツバラン目とハナヤスリ目の2目からなる[4][5][6]。スミスら (2016) の分類体系では本群はマツバラン綱 Psilotopsida として扱われていた[7][8]。
| ハナヤスリ亜綱 | |||||||||||||||
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ヒロハハナヤスリ Ophioglossum vulgatum | |||||||||||||||
| 分類(PPG I 2016) | |||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||
| Ophioglossidae Klinge (1882) | |||||||||||||||
| シノニム | |||||||||||||||
| 和名 | |||||||||||||||
| ハナヤスリ亜綱[1][2][3] | |||||||||||||||
| 目 | |||||||||||||||
マツバラン目は、歴史的に裸茎植物門[9]や裸茎植物亜門[10]、マツバラン綱[11][12]として独立した群に置かれることもあった。それに対し、ハナヤスリ目は、真のシダ類からなるシダ綱のうち、リュウビンタイ目とともに真嚢胞子嚢を持つとして真嚢シダ類にまとめられていた[13][14]。
系統関係
分子系統解析により系統関係が明らかになるまでは様々な系統関係が類推されてきた。
マツバラン類は Engler & Prantl (1902) による分類では、ヒカゲノカズラ類とともに小葉類 Lycopodiales の中の無舌類 Eligulatae に分類されていた[13]。その後、Verdoorn (1938) などでは独立した群として分けられ、様々な分類体系で独立したマツバラン綱 Psilotopsida に置かれた[13][15]。デボン紀の化石植物での研究によりリニア Rhynia やクックソニア Cooksonia などが古生マツバラン類と呼ばれ、マツバラン類はその生き残りだと考えられた[16][14]。その後、その直接的な系統関係は否定されたが、依然他の群との類縁関係は分からなかった[16]。加藤 (1987) では、ヒカゲノカズラ綱の根が二又分枝することから二又分枝する地下茎を持つマツバラン類と近縁としてヒカゲノカズラ亜門にヒカゲノカズラ綱とマツバラン綱を置き[17]、岩槻 (1992) などでも再びヒカゲノカズラ類、イワヒバ類、ミズニラ類からなるヒカゲノカズラ亜群とともにマツバラン亜群として小葉植物群の下に置かれた[18]。しかし、葉緑体DNAの構造解析の研究から、マツバラン類はコケ植物やヒカゲノカズラ類とは異なり、シダ類と同様の逆位を共有することが明らかとなった[14]。
対するハナヤスリ類は、Engler & Prantl (1902) による分類ではシダ類 Filicales のもとに、薄嚢シダ目 Leptosporangiatae、リュウビンタイ目 Marattiales とともにハナヤスリ目 Ophioglossales として置かれた[13]。Christensen (1938) では、リュウビンタイ目とともシダ類 Filices のうちの真嚢シダ類 Eusporangiatae にハナヤスリ目として置かれた[13]。以降、シダ類の中に Copeland (1947)、Tagawa & Iwatsuki (1972) のように独立して置かれたり、Ching (1978) のように真嚢シダ類 Eusporangiopsida の下に置かれたりした[13]。
Hasebe et al. (1995) のrbcL 遺伝子を用いた分子系統解析により、マツバラン類とハナヤスリ類が近縁であり、真嚢シダ類は単系統ではないことが分かった[19]。これ以降の分子系統解析でも、マツバラン類とハナヤスリ類はいずれも統計学的支持が十分に高い単系統群を形成した[20][21]。
Wickett et al. (2014)、Puttick et al. (2018) の分子系統解析に基づく陸上植物の系統樹は以下の通りである[22]。
| 陸上植物 |
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| Embryophyta |
また、大葉シダ植物内部の系統関係は以下の通りである。各群の系統関係にはやや違いがみられるが、ハナヤスリ亜綱が単系統群となる。
| Shen et al. (2018) | Nitta et al. (2022) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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特徴
トクサ亜綱と薄嚢シダ亜綱およびマツバラン目の中心柱は中原型の一次木部、旧真嚢シダ類(リュウビンタイ類とハナヤスリ類)は内原型の一次木部を持ち、上記の系統樹のようにリュウビンタイ亜綱およびハナヤスリ亜綱は単系統群をなすため、最節約的にはリュウビンタイ亜綱とハナヤスリ亜綱の共通祖先で内原型に進化し、マツバラン目で再び中原型に戻ったと考えられる[23]。
また、リュウビンタイ目とハナヤスリ目の葉はトクサ類の楔葉や薄嚢シダ類の羽葉と異なる性質を持つため、葉のない祖先種から独立に葉を獲得した可能性がある[23]。マツバラン目は根を持たず地下茎を持つが、根が退化した可能性がある[23][14]。大葉を持たず葉状突起を持つが、これは葉が退化したとする考えもあるが[14]、葉が多数回起源であり、各群で独立に獲得されたためとも考えられる[23]。また、マツバラン目の葉状突起はマツバラン属 Psilotum では維管束を持たず、イヌナンカクラン属 Tmesipteris では小葉のように1本の維管束を持つという相違点はあるが、この2群は近縁な姉妹群であることから、相同であると考えられる[23]。
ハナヤスリ類とマツバラン類は外部形態が大きく異なるため、遺伝子を調べて初めて近縁であることが分かった[23][21]。しかし、共通点もあり、大型の真嚢胞子嚢を形成し、1胞子嚢当り少なくとも1,000個の胞子を形成することや[23]、白色根棒状の地中性配偶体を形成しアーバスキュラー菌根菌と内生菌共生し、栄養を得ていることが挙げられる[23][21]。また、ハナヤスリ類の根が分岐せず根毛を持たないことは、根を欠くマツバラン類と比較される[21]。
下位分類
PPG I (2016) 分類体系および Zhang et al. (2020) に基づく[24]。
- ハナヤスリ亜綱 Ophioglossidae Klinge (1882)
- マツバラン目[25] Psilotales Prantl (1884)
- ハナヤスリ目[27][28] Ophioglossales Link (1833)
- ハナヤスリ科[29][26][27] Ophioglossaceae Martinov (1820)
- subfamily Helminthostachyoideae C.Presl (1845)
- subfamily Mankyuoideae J.R.Grant & B.Dauphin (2016)
- subfamily Ophioglossoideae C.Presl (1845)
- Cheiroglossa C.Presl (1845)
- コブラン属[26][31] Ophioderma (Blume) Endl. (1836)
- ハナヤスリ属[26][27] Ophioglossum L. (1753)
- Rhizoglossum C.Presl (1845)
- subfamily Bortychioideae C.Presl (1845)
- ハナヤスリ科[29][26][27] Ophioglossaceae Martinov (1820)