ムラサキ

ムラサキ科の種 From Wikipedia, the free encyclopedia

ムラサキ(紫、Lithospermum murasaki)は、ムラサキ科の植物の一種。多年草で、初夏からにかけて白い花を咲かせる。栽培用には、同属異種のセイヨウムラサキL. officinale L.)が利用されることが多い。

概要 ムラサキ, 分類(APG IV) ...
ムラサキ
岩手県岩泉町 2023年5月下旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : シソ類 Lamiids
: ムラサキ目 Boraginales
: ムラサキ科 Boraginaceae
亜科 : ムラサキ亜科 Boraginoideae
: ムラサキ属 Lithospermum
: ムラサキ L. murasaki
学名
Lithospermum murasaki Siebold (1830)[1]
シノニム
  • Lithospermum officinale L. subsp. erythrorhizon (Siebold et Zucc.) Hand.-Mazz. (1836)[2]
  • Lithospermum officinale L. var. japonicum Miq. (1865)[3]
  • Lithospermum erythrorhizon Siebold et Zucc. (1846)[4]
和名
ムラサキ(紫)[5]
閉じる

古くから日本人に親しまれた野草で、短歌にも詠まれてきた。 とくに武蔵野の代名詞として扱われることが多く、『更級日記』では武蔵野を指して「むらさき生ふと聞く野」と呼んでいる。

むらさきは根をかもをふる人の児のうらがなしけを寝ををへなくに (万葉集 14-3500)

紫のひともと故にむさし野の草はみながらあはれとぞ見る (古今和歌集 雑上)

特徴

和名ムラサキの語源は、本種が群れて咲くことから「群ら咲き」であるとする説が一般的であるが[6]、図鑑等には紫色の根が由来と説明するものもある[7]

日本北海道本州四国九州に分布し、比較的冷たい山地草原に自生する[8][7]。野生では自生地の環境悪化によって、自生のものは非常に少なく、絶滅危惧種になっている[7]。しばしば、栽培もされている[8]。半日陰の排水のよい土地を好む[8]

多年生草本は太く、乾燥すると暗紫色になる[8]は直立し、草丈は30 - 80センチメートル (cm) ほどになり[7]、上部は枝分かれする[8]とともに、斜め上向きに粗毛が多い[8]。葉は互生し、葉柄は無く、葉身は披針形で先端と基部は細くなっており葉縁は全縁で、やや平行するように少数の葉脈がある[8]

花期は初夏から夏にかけて(6 - 8月)[7]、茎先の葉腋についた葉状の苞葉の間に、5弁の小さな白いが咲く[8][7]果実は灰白色で、4分果からなる[8][9]

近縁のセイヨウムラサキは繁殖力が強く、茎は枝分かれして花が小さいことで、ムラサキとは異なる[8]

2007年に、東近江市の花に選定された[10][11]

利用

播種で増殖するが、栽培は難しい[8]。近縁のセイヨウムラサキは栽培は容易であるが、利用価値は高くない[8]

生薬

乾燥したは暗紫色で、紫根(しこん)と称される生薬である[8]。この生薬は日本薬局方に収録されており、抗炎症作用、創傷治癒の促進作用、殺菌作用などがあり、紫雲膏などの漢方方剤に外用薬として配合される。主要成分はナフトキノン誘導体のシコニン (shikonin) 、アセチルシコニンイソブチルシコニンなどであり、最近では、日本でも抗炎症薬として、口内炎・舌炎の治療に使用される。民間療法では、解熱解毒利尿、肉芽の発生を促すため皮膚病やけどに、1日量3 - 5グラムを水400 ccで半量になるまで煎じ、3回に分けて服用する用法が知られている[8]

染料

古くから青みがかった紫色江戸紫染料として用いられてきた(紫根染)。紫色とは、もともとムラサキの根を原料として染め上げた色である[12]。江戸では染物屋のことを「紫屋」ともいい、根の煎じがらを店先に積んで看板代わりとした[13]。色を染めるには、乾燥した紫根を粉にし、微温湯で抽出して灰汁媒染して染色する。江戸時代には染められた絹を鉢巻にして、病気平癒の為に頭に巻く風習が生まれた(病鉢巻)。

口紅

染料の成分および薬用成分はナフトキノン誘導体のシコニン (Shikonin) で、最近ではバイオテクノロジーにより大量生産されて口紅などに用いられている。

絶滅危惧種

万葉集にもその名が出るほど歴史は古く、奈良時代から江戸時代末期まで栽培が行われてきた。旧東京市歌でも、一番の冒頭で「紫匂ひし 武蔵の野辺に」と歌われるなど、身近な植物であったが、明治時代以降は合成染料の登場により商業的価値を失い、ムラサキ自体も絶滅危惧種レッドデータブックIBにランクされるまでになってしまった。そのため、現在も熱心な愛好家たちが栽培を試みているが、種の発芽率が低い上、ウイルスなどに弱いため、株を増やすのは困難である。このため、現在では中国から近縁種(下記)が輸入され、ムラサキとして流通しているが、ムラサキとの交雑により純正種を脅かすことになっている。

種の保全状況評価

絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト

次の府県で、絶滅または野生絶滅に評価されている。埼玉県、千葉県、愛知県、三重県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県[14]

注意

最近健康食品として、美白に効果があるなどとして広く販売されているが、肝癌などを誘発するピロリジジンアルカロイドを含有するため、注意が必要である。近縁種についても同様の危険がある。(詳しくはピロリジジンアルカロイドを参照)

ギャラリー

近縁種

  • ホタルカズラ (Lithospermum zollingeri)
  • セイヨウムラサキ (Lithospermum officinale)
  • イヌムラサキ (Lithospermum arvense)

脚注

参考文献

外部リンク

Related Articles

Wikiwand AI