乗法

算術における演算の一種 From Wikipedia, the free encyclopedia

乗法(じょうほう、: multiplication)とは、二つ以上の対象を組み合わせて一つの結果を得る二項演算または多項演算であり、四則演算の一つである。数に対する乗法は日常的には掛け算または乗算とも呼ばれ、記号 、あるいは並記によって表される。乗法の結果は(せき、product)という。[1][2]

1袋3つのビー玉が入った袋が4袋あると全部でビー玉は12個になる。3×4=12
掛け算は拡大・縮小を表す。3を2倍すると6になる。2×3=6
縦が4、横が5の長方形の面積は20となる。4×5=20

定義

に対して

または

と表される演算を乗法という。ここで , 因子factor)と呼ばれ、結果 が積である。初等算術では、一方の数を他方の回数だけ繰り返し加える操作として理解されることが多い。たとえば

は、4 を 3 回加えた結果、あるいは 3 を 4 回加えた結果とみなすことができる。[3][4]

性質

数の乗法は、通常次の基本性質をもつ。

可換法則

が成り立つ。これは因子の順序を入れ替えても積が変わらないことを意味する。ただし、行列など一般の代数的対象では可換とは限らない。[5][6]

結合法則

が成り立つ。したがって、3 個以上の数の乗法では括弧の付け方によらず同じ積が得られる。[7]

乗法単位元

数の乗法には

を満たす元 があり、これを乗法単位元という。[8]

分配法則

加法と乗法の間には

が成り立つ。これは乗法が加法に対して分配的であることを表す。[9]

乗法逆元

有理数実数複素数では、0 でない各元 に対して

を満たす元 が存在する。これを の乗法逆元、あるいは逆数という。[10]

数の体系の拡張と乗法

自然数の乗法は、反復加法や長方形配列の個数として理解される。整数では負の数が導入され、符号の規則

が加わる。さらに有理数実数複素数へと数の体系が拡張されても、乗法は基本演算として保たれる。[11][12]

これらの数体系では、0 を除いた元の集合は乗法について群をなす。とくに有理数・実数・複素数の 0 でない元は、乗法についてアーベル群をなす。[13]

数以外の対象に対する乗法

乗法は数に限らず、多くの数学的対象に定義される。

多項式の乗法

多項式の乗法は、各項どうしを掛け合わせて同類項をまとめることで定義される。たとえば

である。[14]

行列の乗法

行列に対しても乗法が定義されるが、一般には

であり、可換ではない。行列の乗法は線型写像の合成と対応する重要な演算である。[15]

抽象代数学における乗法

抽象代数学では、ある集合の上に定義された二項演算を「乗法」と呼ぶことがある。たとえばでは、加法と乗法の二つの演算が定義され、加法はアーベル群をなし、乗法は通常結合法則を満たし、さらに加法に対して分配法則を満たす。乗法は必ずしも可換ではなく、また単位元をもたない環もある。[16][17]

この意味で乗法は、初等算術における掛け算にとどまらず、代数的構造を記述する基本概念の一つである。

記法

乗法は通常、記号 または で表される。代数学では、変数や括弧の並記

のように書くことも多い。結果はと呼ばれ、因子の積を表す式は積の形ともいう。[18][19]

脚注

参考文献

関連項目

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