代数幾何学

多項式の零点がなす図形を代数多様体として研究する数学の一分野 From Wikipedia, the free encyclopedia

代数幾何学(だいすうきかがく、: algebraic geometry)とは、多項式零点(解の集合)がなす図形を代数的手法(代数多様体)により研究する数学の一分野である[1][2]

歴史

ルネ・デカルトが座標を用いて曲線を方程式で表す方法を導入したことにより、17世紀に解析幾何学が成立した。これは多項式で与えられる図形を代数的に扱う発想の出発点であり、代数幾何学の直接の前史とみなされる[3]

19世紀中期に、ベルンハルト・リーマンがアーベル関数論の中で双有理同値など代数幾何学の中心概念を生み出し、19世紀後半には、イタリアの直観的な代数幾何学が発展した(イタリア学派)。20世紀前半には、アンドレ・ヴェイユオスカー・ザリスキによって、抽象的な代数幾何学の研究が進められ、1950年代以降はグロタンディークのスキーム論によって代数幾何学全体が大きく書き直された。

20世紀前半には、こうした古典的理論の基礎づけが進められた。オスカー・ザリスキ可換環論付値論を導入して代数幾何学の基礎を代数的に再構成し、アンドレ・ヴェイユは『Foundations of Algebraic Geometry』(1946年)によって、任意の体上で代数多様体を扱うための基盤を整備した。これにより、代数幾何学は複素数体上の図形の研究にとどまらず、有限体整数環の上の幾何学へも本格的に拡張され、数論との結びつきが強まった[4][5]

1950年代末以降、アレクサンドル・グロタンディークスキーム、層係数コホモロジー、ファイバー積などの概念を導入し、代数幾何学の言語と基礎理論を抜本的に刷新した。グロタンディークの枠組みによって、既約性や特異点、族、モジュライ、数論的現象を統一的に扱うことが可能となり、現代代数幾何学の標準的基盤が築かれた[6][7]

20世紀後半には、この新しい基礎の上で具体的な理論が大きく展開した。複素代数多様体の側面では、小平邦彦らによる複素曲面論やホッジ理論との結びつきが深まり、また広中平祐による特異点解消定理は高次元代数幾何学における基本問題の一つを解決した。さらに、森重文らによる極小モデル計画の進展によって、高次元代数多様体の双有理分類が現代代数幾何学の中心課題の一つとなった[8][9][10]

現代では数理物理学[11][12]可積分系[13][14][15][16][17]との関係や、機械学習への応用が研究されている[18][19]。現代の代数幾何学は「多変数代数函数体に関する幾何学論」と「射影空間上での複素多様体論」とに分けられる。前者は代数学の中の可換環論と関係が深く、後者は幾何学の中の多様体論と関係が深い。代数幾何学は20世紀に入って外観を一新し、大きく発展した数学の分野とされる。

代数多様体

多項式の零点

二次曲線円錐曲線)の例。

永田雅宜は、代数幾何学を簡単に言えば「連立方程式の解の集合の幾何学的性質を調べる学問」であると述べている[1]

平面空間に座標を導入すると代数方程式は図形の形で表現される[20]。このような図形が代数多様体である。

例えば、変数として という多項式を考える。この多項式の零点がなす、 の中の集合は二次曲線をなし、 の正・零・負によってそれぞれ楕円、平行二直線双曲線になる。このように、多項式の係数と多様体の概形の関係は非常に深いものがある。

代数幾何学ではこのような図形の幾何学的性質を調べることを中心としている[20]。これは高々三次元の実ユークリッド空間において高々二次の多項式を考える解析幾何学の一般化である。

アフィン多様体

(複素数係数の)多項式の共通零点の集合をアフィン代数的集合と呼ぶ。このうち既約なアフィン代数的集合をアフィン多様体(アフィン代数多様体)と呼ぶ。一般の代数多様体はアフィン多様体を多項式関数で「貼り合わせた」ものである[21]。代数幾何学では様々な代数多様体を研究する。

射影多様体

アフィン多様体は「開いた」多様体である。射影幾何学において無限遠点を考えるのと同様に、無限遠に次元の低い多様体を付け加えることによって「閉じた」多様体にすることで理論が簡潔になる。このような多様体を射影多様体と呼ぶ。

射影幾何学は射影変換における不変性の研究である。代数幾何学は射影幾何学を含んでいるが、それよりは大きな幾何学といえる[22]

スキーム

アフィン多様体を代数的閉体でない体の上や、さらに一般に可換環において定義しようとすると、古典的な代数多様体の議論では不十分である。この点を補うためにアレクサンドル・グロタンディークによってつくられたのが、スキームの理論である[23]

曲面の分類

代数幾何学において非常に重要な問題として「多項式の形から、多様体を分類せよ」という分類問題が挙げられる。これは解析幾何学で行われた二次曲線や二次曲面の分類の一般化である。

曲線のような低次元の多様体の場合、分類は簡単にできると思われがちだが、低次元でも次数が高くなるとあっという間に分類が非常に複雑になる。

当然、次元が上がると更に複雑化し、4次元以上の代数多様体についてはあまり研究は進んでいない。

2次元の場合、多様体に含まれる(−1)カーブと呼ばれる曲線を除外していくことにより、特殊な物をのぞいて極小モデルと呼ばれる多様体が一意に定まるので、2次元の場合の分類問題は「極小モデルを分類せよ」という問題に帰着される。

3次元の場合も同じように極小モデルを分類していくという方針が立てられたが、3次元の場合は、その極小モデルが一意に定まるかどうかが大問題であった。しかし、1988年森重文により3次元多様体の極小モデル存在定理が証明され、以降「森のプログラム」と呼ばれるプログラムに沿って分類が強力に推し進められている[24]

主な日本人研究者

脚注

参考文献

関連書籍

関連項目

外部リンク

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