割引現在価値
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概要
計算方法
将来のキャッシュフローを評価する場合、単純に額面を加算するのではなく、割引現在価値に換算する必要がある。例えば、金利が1%の債券に10,000円投資した場合、1年後には価値が10,100円に増える。一方で、1年後に10,000円が支払われる約束がしてある債券の現時点における受取額は、割引現在価値である 10000 ÷ 1.01 ≒ 9901 円になる。
また、金利1%が10年続くとすれば、10年後に10,000円の割引現在価値は、10000 ÷ 1.0110 ≒ 10000 ÷ 1.1046 ≒ 9,053 円となる。
これを一般化すると、次式によって割引現在価値が計算できる。
割引現在価値 = 将来価値 ÷ (1 + 利回り) 期数
| 現在価値 (円) | 利子率 r | 1 年後の価値 (円) |
|---|---|---|
| X | →1 年後の価値は→ | (1 + r) X |
| Y ÷ (1 + r) | ←1 年前の価値は← | Y |
※ここでの利子率 rを割引率ということがある。
割引率の決定要因
割引現在価値を計算する際に使用する利回りのことを割引率という。貨幣価値不変とすれば金利が割引率となるが、実際には他の要素を含めることが可能であり、その際には以下のような要素に留意する必要がある。
- 金利 - 現在の価値が将来の価値より割り引かれる理由の一つは、金銭には時間的価値があるからである。したがって、この時間的価値の指標である金利を割引率に加える必要がある。金利については、無リスク状態での率を表すリスクフリーレートなどを参考に設定する。
- 物価 - 物価が上昇すると、貨幣の額面が同じであっても価値は下落する。したがって、インフレ率などを割引率に加える必要がある。
- リスク - 将来のキャッシュ・フローには不確実性が伴う。例えば債券については、高リスクのものであれば利回りが高くなる。これは将来の不確実性が利回りに織り込まれるからである。一般的に、リスクの高い事業のキャッシュフローを割引現在価値で評価する際には、リスクの低い事業よりも大きい割引率を用いることになる。
正味現在価値 (NPV) との関係
正味現在価値は、割引現在価値の概念を投資評価に応用したものである。 割引現在価値(PV)が「ある一時点の将来キャッシュフローを現在価値に直したもの」であるのに対し、NPVは「投資プロジェクトから発生する'すべての期間の割引現在価値を合計し、そこから初期投資額を差し引いたもの=正味の価値」と定義される。
NPVの計算式
NPVは、投資期間ごとの費用(マイナスのキャッシュフロー)と便益(プラスのキャッシュフロー)を計算し、それらを割引率で現在価値(PV)に割り戻して合計することで算出される[2]。
- t:キャッシュフローの期間
- Rt:各期間の純キャッシュフロー(収入 - 支出)
- i:割引率
- N:プロジェクトの総期間
このとき、初期投資額を t=0 時点のマイナスのキャッシュフロー (R0) として含めると、以下の一般式となる。NPVは、インフレとリターンを考慮した上で、今日の貨幣価値と将来の貨幣価値を比較する「差額」として説明できる[2]。
割引率の選択
将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くために使用される割引率は、NPV算出における重要な変数である。一般的には企業の加重平均資本コスト(WACC)が用いられるが、リスク、機会費用、その他の要因を調整するためにより高い割引率を用いる場合もある。また、プロジェクトに必要な資本を代替事業に投資した場合の収益率(再投資率)を使用することも、機会費用を反映する上で適切とされる[2]。
意思決定のルール
NPVは、投資やプロジェクトが企業にどれだけの価値を付加するかを示す指標であり、投資判断において以下のルールが適用される。
- NPV > 0:投資によって生み出される予測収益(現在価値)が予測コストを上回っている状態である。この投資は企業に付加価値をもたらすため、投資は承認される可能性がある。
- NPV < 0:投資が企業価値を低下させることを意味する。投資は拒否されるべきである。
- NPV = 0:投資は企業にとって価値を増減させない。
理論上、資本に制約がなければNPVがプラスのすべての投資を追求すべきである。しかし、実際には企業の資本制約(予算制限)があるため、NPVが最も高いプロジェクトへの投資が優先される。
メリットとデメリット
NPV法は、割引現在価値を用いることで「貨幣の時間的価値」を考慮できる点が最大のメリットである。発生時期が異なるキャッシュフローを対等に比較でき、株主価値の最大化という財務目標と整合する。 一方で、将来のキャッシュフロー予測や割引率の設定などの入力パラメータの精度に結果が大きく依存する点や、計算過程に含まれない非財務的な価値(ブランド向上など)が無視される点がデメリットとして挙げられる[3][4]。
他の指標との関係
割引現在価値やNPVは、以下のような他の資本予算策定手法と比較、あるいは併用される。