向格

From Wikipedia, the free encyclopedia

向格(こうかく、英語: allative case)は、のひとつ。場所的な格のひとつで、着点をあらわす。

言語例

日本語では格助詞「へ」「まで」が着点を表し、向格と呼ばれることもある[1]

バスク語の格は13-14種類があるが、有生性定性によって異なる語尾が加えられる。向格はたとえば mendi(山)の場合、mendira(単数・定)、mendietara(複数・定)、menditara(不定)のようになる(意味はいずれも「山へ」)[2]

言語によっては着点を細かくいい分ける。たとえばフィンランド語には内部(……の中)・外部(……の上)の2種類の位置と、起点(……から)・静止(……で)・着点(……へ)の3種類の方向の組み合わせによる6つの場所的な格が存在し、「……の中へ」は向格ではなく内格を使用する[3]

さらに見る 静止, 起点 ...
静止起点着点
内部 内格出格入格
外部 接格奪格向格
閉じる

向格は -lle が加えられる。たとえば、mies(男)の向格は miehelle になる。単なる場所だけでなく、与える対象にも使用する。

ハンガリー語の場合はより複雑で、着点の格が4種類ある[4]

  • -ba/be は「……の中へ」を表す。(入格)
  • -ra/re は「……の上へ」を表す。(着格)
  • -hoz/hëz/höz は「……のそばへ」を表す。(向格)
  • -ig は「……まで」を表す。(到格)

たとえば、fal(壁)に対して、fal-ba(壁の中へ)、fal-ra(壁の上面へ)、fal-hoz(壁のすぐそばへ)、fal-ig(壁まで)のようになる。

バルト語派の言語にも二次的に発達した向格がある。たとえば古リトアニア語および方言では、属格形に後置詞 -pi を加えた形が向格として使用される[5]

インド・ヨーロッパ語族の言語の場合、通常独立した向格は存在せず、着点を表すには対格が使われることが多い。たとえばラテン語では、以下のような区別がある[6]。同様の対格の使われ方は、ドイツ語ロシア語ギリシア語などにも見られる。

  • in oppido (奪格)町に、町の中に
  • in oppidum(対格)町の中へ

インド・ヨーロッパ語族の対格 *-m はもともと向格を表しており、ラテン語の Romam(ローマへ)、domum(家へ、故郷へ)、英語 home などはこの意味が残存したものであるという[7]

インド・ヨーロッパ語族の中でも古ヒッタイト語では対格 -an と向格(方向格 directive とも呼ばれる)-a が区別される[8]

脚注

参考文献

Related Articles

Wikiwand AI