因州弁

鳥取県東部で話される日本語の方言 From Wikipedia, the free encyclopedia

因州弁(いんしゅうべん)は、鳥取県東部(因幡地方)で話されている日本語の方言である。鳥取弁(とっとりべん)とも言う。中国方言東山陰方言に属する。兵庫県北部の但馬地方のうち、鳥取県に近い新温泉町などでは、かなり似た方言が話される(但馬弁参照)。

鳥取弁による注意書き。鳥取砂丘にて2025年10月撮影。

鳥取県中部(伯耆国東部)の倉吉弁は同じ東山陰方言に属しており因州弁に近いが、いくつかの相違点がある。西部の西伯耆方言雲伯方言に分類され、東山陰方言とは区別される。

発音

平安鎌倉時代の[au]連母音に由来する開音は、鳥取県全域を含む山陰一帯で[aː]に変化した[1]。そのため、推量や勧誘の表現で「行かあ」(行こう)、「~だらあ」(~だろう)などと言ったり、「買った」を山陽のような「買うた」ではなく「買った」や「買あた」と言う。

アクセントは中輪東京式であるが、因州弁の特徴として「一つ上がりアクセント」がある。「いな」「きも」のように、アクセントの上がり目が後ろに下がり、高く発音される音節が一拍のみになる。この特徴は倉吉弁にもみられる。

連母音の融合は、鳥取市ではほとんど起こらないが、八頭郡では「赤い」→「あけえ」、「大工」→「でえく」のように[ai]が[ee]になり、岩美郡では「赤い」→「あきゃあ」、「大工」→「でゃあく」のように[ai]が[jaa]になる(郡の範囲は平成の大合併前のもの)[2]。また智頭町では、「黒い」→「くれえ」のように[oi]が[ee]になる現象があるが、他地域ではほとんどない[2]

西日本方言では一般に母音の無声化は少ないが、鳥取県では全域で関東方言などと同様に盛んに無声化する[3]。「き」「く」「ち」「し」のような無声子音+[i]・[u]の部分にアクセントの高い部分が来ない場合に、無声化が顕著である[4]

文法

因州弁は中国方言の一種であるが、断定の助動詞に「~だ」を用い、「~じゃ」を用いる山陽地方と異なる。この「~だ」は、山陰地方全体に共通する。ただし、岡山県に近い智頭町若桜町では「~じゃ」も用いる[5]。ワ行五段動詞連用形音便は「思った」のような促音便であり、ウ音便は鳥取県下では智頭町のみで用いられる[6]。理由・原因の「~(だ)から」には「~(だ)けー」を使い、進行「~ょーる」と完了・結果「~とる」を使い分けるのは山陽地方の方言と共通する。

表現・語彙

さらに見る 因州弁, 標準語 ...
因州弁 標準語 使用例 備考
あっとろしああ恐ろしい、ああびっくりした富山弁では「おっとろし」や「あいおっとろし(なんて恐ろしい)」が用いられる。
えらいつかれた(苦しい)今日は暑いけぇえらいっちゃ(今日は暑いから疲れるよ)後述の「しんどい」より優勢的に用いられる
おおきにありがとう
おせ大人、年寄り
おるいる
ぐすいゆるいボルトがぐすくてはまらん(ボルトがゆるくてはまらない)頭がぐすい(頭がわるい)よくない状態のときにつかう
さあそうさあいな(そうだね)同意を示す際に使う。標準語の、よくわからないことを意味する「さあ」とは、イントネーションおよび後に続く語で区別する。
じるい(地面が)ぬかるんでいる
しんどいつかれた(つらい)
しわいかたい、手ごわい肉がしわい(肉が硬い)しわい問題(手ごわい問題)
せるあわてる、いそぐ、(時間が)進む何をせっとるだ(どうしてあわてているの?)時計がせっとる(時計が((実際の時間よりも))進んでいる)
たいぎーめんどくさい
たばこ休憩たばこしんさい(休憩しなさい)たばこするとはあまり言わない
だまっとれ黙りなさい
だらずあほ「あほう」「たわけ」「ばか」とともに使用
足りない(=足らず)が語源
つかんさいどうぞ~してください相手にすすめるときに使う。
てわやく手先でコソコソ遊ぶことてわやくやめんさい
とろける片付ける
なんぼいくつ(個数、年齢)、いくら(値段
ばんなりましてこんばんは
ほんに本当に関西などで使われる「ホンマに」と同じ意味
めぐ壊すガ行五段活用の動詞
やるあげる
ようけたくさん
よう+動詞の否定形~できないよう言わん(わ)、よう行かん(わ)、ようせん(わ)
わったい!なんてことだ!-
 ~だっちゅーの~なんだよ-
~っちゃいやだっちゃ(いやだ!)語尾に付けて強意として使われるが、ただ単に語尾表現として使われている。
~だけぇー~だから他に、~やけぇー、~じゃけぇー、~だけぇなー
~だがな~でしょ自分の番だがな(自分の番ですよ)
~たがな~でしょ言ったがな(言ったでしょ)
~がな~ですよ知らんがな(知りませんよ)
~げ~っぽい、~そう綺麗げ(綺麗そう)方言?
~ごせぇ~くださいそれごせぇ(それをください) してごせぇ(してください)何かを頼むときに使われる。最近ではあまり使用されなくなってきているが、お年寄りを中心に東中部で使われている。
~なー~ですねたいぎーなー(めんどくさいですね)
~なった~された~しとんなったで(~しておられたよ)尊敬語として使われる
~ぞなぁー~だよねぇ広いぞなぁー(広いよねぇ)
~んさい~しなさいはようしんさい(早くしなさい)、やりんさい(やりなさい)
~がいや~でしょ見たがいや(見たでしょ)
~かいや~なさいよはよせんかいや(早くしなさいよ)
~せいや~しなさいちゃんとせいや(しっかりしなさい)
~しようや~しようよ野球しようや(野球しようよ)
~だで~だよそうだで(そうだよ)「いこうや」「しようや」が「いこうで」「やろうで」に置き換えられる
~だいや~んだい何言っとっだいや(何を言っているんだい)
~から~で・・・が今日はどっから集会があるだ?(今日はどこで集会があるの?)
ドンドロケカミナリすぐ近くにドンドロケが落ちた!
~ワイ(ヤ)~わ!知らんワイ(ヤ)! やかましいワイ(ヤ)!強く否定するときに使う
~へん、せん~ないそんなことすりゃーヘン(セン)! (そんなことしません)関西弁のヘンと同じ
~んさった。なった。~された~しとんさったで(~しておられたよ)尊敬語として使われる
ワリャ(ワ)お前ワリャ何しとるだいや!(お前は何をしてるんだ!)男言葉で目下に対して使う 関西のワレと同じ
げぇ(家ぇ)~の家おめぇげぇーの(おまえの家の)
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因州弁に関連した人物・作品など

  • 平林都(マナースクール経営者)……八頭郡若桜町出身。会話の中に因州弁のイントネーションがしばしば散見される。
  • 47都道府犬 - 声優バラエティー SAY!YOU!SAY!ME!内で放映された短編アニメ。郷土の名産をモチーフにした犬たちが登場する。鳥取県は、鳥取砂丘がモチーフの鳥取犬として登場し、『いいですだぁけぇ。』など話す。声優は、鳥取県出身の下田麻美が担当している。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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