宇宙定数

真空のエネルギー密度を測定する物理定数 From Wikipedia, the free encyclopedia

宇宙定数(うちゅうていすう、cosmological constant)は、アインシュタイン重力場方程式の中に現れる宇宙項(うちゅうこう)の係数。宇宙定数はスカラー量で、通常Λ(ラムダ)と書き表される。

物理学の未解決問題
なぜ真空の零点エネルギーによって、大きな宇宙定数にならないのか? 何がその値を打ち消しているのか?

概説

重力場方程式を最小限の仮定で導出すると、

という式が得られる。宇宙定数 計量テンソル の積である左辺第3項が宇宙項 であり、時空が持つ斥力)または引力)を表すが、通常はわずかに正(わずかな斥力)とされる。

アインシュタインが1916年に発表した最初の重力場方程式は、

であった。最初の式でとした場合に相当する。しかし、1917年の論文ではアインシュタインは、宇宙項を含む式を発表。その理由については、アインシュタインは宇宙の大きさは不変と考えていたが、一般相対性理論を宇宙に適用すると重力などの影響で縮むと気づき、宇宙定数をわずかに正とし「万有斥力」を導入することで定常な宇宙を導くためとされている[1]。まずアインシュタインの場の方程式は微分方程式であるので、特殊解を得るときに境界条件を設定しなければならない。その境界条件は一般的には物体の無限遠でミンコフスキー時空に漸近するというものである。ここでその無限遠の地点にもう一つ物体があるとすると、その物体はその平坦な時空に対して慣性が定義されることになる。しかし、空間に対して慣性が定義されるというのはニュートンが導入した絶対空間と同じ考えになってしまい、無限遠にいる物体にとって平坦な時空が特別な座標系になってしまう。これは一般相対論の要請を満たさない。ここで、アインシュタインはそもそも無限に遠い点には近づけないと考えた。つまり宇宙は有限の大きさを持ち、球のように閉じていると考えた。この考えなら宇宙が膨張してようが収縮してようが無限遠は存在しない。だが、アインシュタインの場の方程式は計量テンソルの定数倍の項が左辺になければこの時空の形を特殊解として持たないことにアインシュタインは気づき、そこでアインシュタインが導入した項こそが宇宙項である。すなわち、アインシュタインが宇宙が不変だと考えていようがいまいが、宇宙項の導入には関係がないであろう。また、アインシュタインが何の根拠もなしに宇宙項を導入したと言われることがよくあるが、そもそも数学的には宇宙項があるほうが完璧であるというのも、アインシュタインが宇宙項を導入したもう一つの理由かもしれない。

否定

しかしエドウィン・ハッブルらの観測によって、宇宙が膨張していることが明らかになり、アインシュタインはこの宇宙定数の導入を生涯で「最大の過ち」(biggest blunder)として後悔したというエピソードは有名である。ただしこの言葉は、本人から聞いて紹介したというジョージ・ガモフの報告以外に出典がないのでガモフの創作であろうという説もある[2]。なお、2018年になって「他にもこれに言及している記録があり、ガモフによる創作ではない」とする論文が発表されている[3]

宇宙が静的ではないことを認めてから、アインシュタインは宇宙定数を嫌悪するようになった。しかしこの定数は宇宙の膨張の加速度を表現するという確固とした役割があり、したがって宇宙定数を消去する理由はどこにもないという事をアインシュタインに説明したのはビッグバン理論の提唱者ジョルジュ・ルメートルだった[4]

再評価

標準ビッグバン宇宙モデルの初期条件を説明する宇宙のインフレーションモデルは、宇宙の初期に時空が指数関数的な膨張を遂げた、とするモデルであるが、その原理は、宇宙項の存在に相当する真空のエネルギーの存在である。

近年、遠方の超新星の観測結果および宇宙マイクロ波背景放射(宇宙背景放射)の観測結果などから、我々の宇宙は現在、加速的に膨張していることが明らかになってきており、加速膨張を説明するメカニズムとして、宇宙項の存在が支持されている。 宇宙定数の源の有力な候補としては真空のエネルギーなどが挙げられ、これを仮定すると宇宙定数の大きさは、自然単位系で評価してナイーブには1の程度になる。しかし、観測的には以下であることが分かっており、この矛盾を埋めるメカニズムは現代宇宙論の未解決問題のひとつになっている。最近では、宇宙の加速膨張を担うものとして、宇宙項の可能性を含め、ダークエネルギーと総称することが普通になっている。

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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