手笛

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手笛(てぶえ)とは、手を使って、笛のような音を出す方法、またはその音をいう。口笛や指笛といった一般的な方法と区別され、自然に発生した言葉である。具体的には、両手を組み合わせて作った空洞に息を吹き込み音を鳴らす演奏方法である。

概要

手笛とは、両手を組み合わせて作った空洞に息を吹き込み音を鳴らすもの。 手の中に空洞を作り息を吹き込んで鳴らす形さえ成立すれば様々な組み合わせ方で音を鳴らすことが出来る。

その音色から、古くは鳩笛(鳥の鳴き声のような音の笛の総称)、昭和時代にハンドオカリナと名付けられた。[1] 海外ではハンドホイッスル(Handwhistle、Handwhistling)、ハンドオカリナ(Handocarina)、ハンドフルート(Handflute)[2]などと呼ばれ、YouTubeの動画では、Handwhistle、Handocarina、Handfluteの3つが並記されることも少なくない。なお、日本国内では、ハンドフルートは手笛奏者森光弘氏が、自身の奏法に命名した呼称である。

また手の組み合わせ方によっても呼び方が変わることがあるが(後述)、それらは見た目などから通称で呼ばれたものであって、正式名称ではない。

手の組み方

手笛を鳴らす手の組み方は複数あり、基本的にはどれも両手を互いに組み合わせ、その中に空洞を作り息を吹き込むことが一般的である。

以下の組み方は一部の例である。

おにぎりを握るような組み方
ノーマル(またはのーまるというひらがな表記)などと呼ばれる
世界で最もポピュラーな組み方で、音の変え方の違いなどで、同じ組み方でも複数の奏法に分かれる。世界的著名なハンドホイッスラー・ベン(Handwhistler Ben)はこの組み方である[2]
片手を軽く握り、もう片方の手で包むように組み合わせる
1950年アメリカの地元ラジオで手笛演奏を生中継で放映されたサリー・コーン(Sally Cohn)[3]や、昭和51年雑誌レクリエーションで紹介されたハンド・オカリナ[1] はこの組み方である。
バレーボールのアンダーハンドパスのような組み方
その見た目から、アンダーハンドパスと呼ばれることもある
日本の伝統的な組み方で、昭和時代は主流であったが、海外ではあまり知られていない。
でんじろう先生の日曜実験室 ラブラボ! 2006年6月25日放送「ストロー楽器」で紹介された「ハンドオカリナ」はこの組み方である
手の指を組んで空洞を作る組み方
手の組み方がお祈りをする時の形に似ているため、「お祈り」と呼ばれることもある。
1979年口笛コンテストの世界チャンピオンを取得したピーター・ハッセル(Peter Hassell)の「Hassell Hand Organ」[4][5]や森光弘氏の「ハンドフルート」はこの組み方である。また、ハンドフルートは、現在日本で最も人気の手笛奏法である。

発音の原理

手笛の音の発生は、オカリナと同様に、エアリードヘルムホルツ共鳴という二つの主要な音響原理を組み合わせている。

1. 音源の生成 (エアリード)

音の源となる振動は、エアリードによって作り出される。 詳細については「エアリード」を参照。

2. 音程の決定と増幅 (ヘルムホルツ共鳴)

エアリードによって生成された振動は、両手で囲まれた空洞ヘルムホルツ共鳴器として利用することで、特定の周波数(音程)だけが増幅される。詳細については「ヘルムホルツ共鳴器」参照

ヘルムホルツ共鳴の共鳴周波数は、以下の式で近似的に表される。[6][7]

共鳴周波数(音の高さ)。容積 の変化に最も強く依存し、 を大きくするとは低くなる。

音速。気温などによって変化する。

開口の断面積。親指の間で作る吹き口、および、他の隙間の総面積。

空洞の容積。両手のひらで囲まれた空洞の大きさ。

吹き口から空洞までの実効的な長さ。吹き口の物理的な長さ(親指の太さ)と、開口端補正(振動に加わる外側の空気の質量)を加えた長さ。

この式において、演奏中に容積 を連続的に操作することで周波数 が変化し、音程を変化させることが可能になる。また、息の強さ(流速)は  の開口端補正に影響を与え、微細な音程コントロールに関わる。(息を強くすると開口端補正 が小さくなる)。空洞に隙間を作り大きさを変化させると が変化し音程が変化する。

3. 発音される音の特徴と制御

手笛から発せられる音は、オカリナと同様にヘルムホルツ共鳴を利用しているため、以下の特徴を持つ。

共鳴の性質と音色

基音の増幅: 手笛は単一の低い共鳴周波数(基音)に特化して共鳴するため、フルートなどの管楽器に比べて倍音が非常に少なく、純音に近い、丸みを帯びた音色になる。

倍音利用の困難さ: ヘルムホルツ共鳴の特性上、管楽器のように強く息を吹き込む(オーバーブロー)ことで、倍音を利用して音域を広げることは実質的にはできない。

音程の不安定性: 倍音成分が少ないため、音の輪郭が不明瞭になりやすく、音程が不安定に聞こえやすい傾向がある。

音程の制御要因

空洞の容積 :手の中の空洞の体積(容積)を操作することで音程を変えることができ、大きくすると音程が下がり、小さくすると音程が上がる。

吹き込む息の強さ: 息の強さで音程がわずかに変化し、強いと音程が上がり、弱いと音程が下がる。

空洞の隙間の総面積 : 空洞に隙間を作り、隙間の大きさを大きくすると音程が上がり、小さくすると音程が下がる。オカリナでは主要な音程変更手段ですが、手笛では奏者によってこの要素の利用に差がある。

補足:ヘルムホルツ共鳴の利用法の違い 🎻

ヴァイオリンギターといった弦楽器もヘルムホルツ共鳴を利用するため、一部、手笛と同じ原理と説明されることがあるが、その役割は根本的に異なる。

弦楽器:共鳴は、主に特定の低音域(最低弦に近い音)の音量を増幅し、楽器全体の音色に深みを与える補助的な役割を果たす。音程の決定は、弦の長さ(指板上の押さえる位置)によって行われ、共鳴器の容積変化には依存しない。

手笛・オカリナ:共鳴が音程そのものを決定する主要な原理であり、音程は共鳴器の容積と開口部の幾何学的形状によって直接決まる。

したがって、弦楽器の共鳴が音色と音量補強に主眼を置くのに対し、手笛やオカリナの共鳴は発音される基音の周波数(音程)を直接決定しており、同一の「ヘルムホルツ共鳴利用楽器」という括りであっても、その音響的機能と特徴は大きく異なる。

演奏以外の使い方

フクロウの鳴き声やパトカーのサイレンの音を真似るなど、こどもの遊びとして親しまれている。[8] 鳥獣類を呼び寄せるための「鳩笛」として使うユニークな動画もある。[9]

脚注 [脚注の使い方]

関連項目

外部リンク

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