推し

自己がファンをしている対象の中でも、生きる意味や存在意義を見いだしている程の強い好感を持っている人物やコンテンツ From Wikipedia, the free encyclopedia

推し(おし)とは、主にアイドル俳優について用いられる日本語俗語であり、人に薦めたいと思うほどに好感を持っている人物のことをいう[2]

アーティストのライブに参加することは「推し活」における重要な行為の一つである[1]

語句・用法

元々は、1980年代まで盛んに開催されていた歌謡賞レースにおいて、新人歌手を出場させるレコード会社が営業用に「(うちの)推し(押し)」と放送局の制作部門に売り込みをかける時に表現していたのが源流である。

これが、AMやFMラジオにおいて、月間のパワープレイに指定される楽曲において「今月の一推し(押し)」と転用され、ラジオ局の制作部門や廊下に掲示されるようになる。

この推しという表現を、夕やけニャンニャンにレギュラー出演をしていた洋楽評論家の伊藤政則TOKYOベストヒット内のリスナー参加企画で「おニャン子の推しは誰?」とリスナーに聞くようになり、複数のメンバーが好きな場合、「一押し」、「ニ押し」などと自分の好きなおニャン子クラブのメンバーを表現するようになる。そこから転じて、アイドルグループ全般に使用されるようになる。

推し活

推し活(おしかつ)は推しをさまざまなかたちで応援する行為・活動全般を指す語で「就活」や「婚活」、そしてオタクによる消費行動である「オタ活」の系譜にある[3]。また、推しが活躍することを祈り、推しを周りに広めることをはじめとするさまざまな応援活動全般も推し活という[1][4][3]

推し活という語の広まりと派生語

2015年よりCDショップ『タワーレコード』(タワレコ)が「銀テープフォルダ」を始めとするタワレコ推し活グッズシリーズの発売を開始し[5]、その後タワレコは商品名に「推し活」という名前の付いた「推し活ミラー」(2018年秋)[6][7]、「推し活お守り」(2019年7月)[8]、「推し活用リュック」(2019年12月)[9]などを発売していった。

また2019年3月には宝塚歌劇団がキャンペーンサイトにおいて『「推し活」するなら宝塚歌劇』というキャッチコピーを打ち出した[10]

2020年10月には NHK が朝の生活情報番組あさイチ』で「人生が輝くヒケツ!“推しのいる生活”のススメ」を放送し[11]、次いで2021年1月には同番組で「人生&社会が変わる!すごいぞ“推し活”パワー」を放送した[12](2025年に『推し活大全』として書籍化)。

その後、同2021年には「推し活」という語が新語・流行語大賞にノミネート(No.07)され[13]、2022年には消費者庁の『令和4年版消費者白書』にも「トキ消費」と併せて「推し活」が若者の消費形態と記載された[14]

2023年には推し活疲れの女性が7割に達したとされ話題となり[15][16]、2025年には NHK の朝の報道番組NHKニュースおはよう日本』において推し活依存が取り上げられた[17]

その他の派生語

以下に述べた語句は一部であり「推し」の概念の広まりとともに、派生語は増えている[18]

推す対象や態度を指す語

グループ全体を推していること、またグループ全体を推している人を意味する[22]。「箱推し」の名称は、ライブハウスを人を入れる容器に見立てて「箱」ということに由来する。また、推されている対象のグループを「推し箱」「推しグル」のようにいう[23]
推しの対象となる人を意味する。「ぴ」とは、英語のpeople(ピープル)の頭文字を取ったものである。本来、peopleは複数形だが、この場合は1人の場合でも使う。
推しがただ1人しかいない人、またその推されている対象を指す。その推しがソロで活動することを熱望している場合もある。
  • 最推し(さいおし・もおし)[18][21]・一推し(いちおし)[21][19]
推しが2人以上いる場合に、最も推している推しを意味する。
  • 二推し(におし)、三推し(さんおし)[18][19][21]
2番目、3番目に推している推しを意味する。
熱心に特定のメンバーを推していること、またはその対象である最大級の推しを意味する。ここでいう「神」とは「とても」を意味する接頭語。その推しは、単推しである場合が多いが、必ずそうであるわけではない。
  • 推しメン(おしめん)
アイドルグループの特定のメンバー、またその推している人物に対して使用される。元々はモーニング娘。ハロー!プロジェクト界隈で使用されていたものだが[25]、現在は広く、アイドルグループの多くで使用されている。

推す行為そのものを指す語

「推し活」の類義語で、推しに対する行動を全て指す。毎日仕事をするのと同様に、あたかも義務であるかのように、推しについての情報を確認するなどの応援をしていることから「お仕事」との洒落になっている。

推す行為に関わる語

推しを替えることを意味する。同じグループ内で推すアイドルを替える場合にも、別のグループのアイドルに推しを替える場合にも用いられる。
元々の推しを維持したまま、新しく推しを増やすこと。続けた場合、経済的負担が大きくなることになる。
自分の推しを他の人も推している状態、および推しが同じである人を指す。推し被りが発生した場合、共感し仲良くする場合と、ライバルとして敵対する場合とがある。後者の態度を「推し被り敵視」「同担拒否」という[27]
推しのイメージカラー。服や髪の色、メンバーカラーなどがこれにあたる。
  • 推しマーク
XなどのSNSアカウントのアカウント名や、プロフィール欄などに界隈内の特定メンバーを推していることを示すために記載する特定のマーク・絵文字[30]。ファンマークともいう。

類義語

  • 自担(じたん)[31][32] -「自分が担当するメンバー」を意味する。元来、ジャニーズファンの間で広まった語句であり、ジャニーズのメンバーに対してのみ用いられるとされる場合もある。「推し」は、他人に薦めたいという意味を含むのに対し「自担」は、単に大好きであるという意味のみを表す。「担当」とも[33]
  • 贔屓(ひいき)[32] - 歌舞伎宝塚歌劇団では、この語句が「推し」の代わりに用いられるが「贔屓」と比べると「推し」は重みが小さい語句である。

関連語

  • 尊い(とうとい)-「推し」と組で使われる場合が多い。推しに信仰心を抱くまでに熱情が強まった場合に用いられる[19]。ただし、言葉の普及に伴い、よりライトなニュアンスや特定のシーンに対して使用されることも増えている。特に、シーンに対して使用される場合、普段からの推しではなくとも使用される(「今日、街で見かけた子供の行動が尊い」など)[要出典]
  • DD(でぃーでぃー)-「誰でも大好き(Daredemo Daisuki)」を意味する[34]。グループにおいて、複数の推しがいる状態を指す。

実態

「推し」という語は、元来の意味を超えて、食品鉄道歴史など、あらゆる対象に広がっており[28]、そもそもオタクへの偏見がなかったという事情も背景に[35]、若い世代では広く使われている[1]。また、小説漫画など、推しを題材とした作品も多く作られるようになっている[28]

推し活は、推しに対する積極的な消費を行い、喜びを覚えるという能動的なものであり、この点が、受動的だった、2021年時点での「大人世代」のファン活動とは異なる[36]。このような消費が積極的に行われるのは、自身の消費が推しへの貢献になっていると実感しているためだと、電通秋田ゆかりは指摘している[37]Z総研道満綾香は、テレビ離れが進むZ世代であっても、推しのためであれば、リアルタイムでテレビを見ていると指摘した[38]。芸能人以外の例として、東京工業大学准教授の西田亮介は、推しの政治家政党があることによって、若者が選挙に行きやすくなると指摘している[39]

推しに関するアンケート調査

2021年8月にRooMooNが女子高校生・女子大学生合計439名を対象に、インターネット上で実施したアンケート調査では、回答者の98%以上が「推しがいる」と回答し、推しの人数については、2人と回答した人が最も多かったが、100人以上と回答した人もいた。推しの対象については、半数近くがアイドルとなり、推している期間は、12か月から23か月との回答が最多だった。

推しを持つメリットは「生きる糧になる」、デメリットは「お金がかかる」が、それぞれ最多になった[40]。また、2020年6月にMERYが女性425人を対象に、自社のアプリ内で行った調査によると、7割以上が推しがいると回答し、また、低年齢層ほど推しがいる割合が高いことも明らかになった[41]。CCCマーケティングとSHIBUYA109 lab.の共同調査によれば、15歳から24歳の女性は、平均して可処分所得の1割以上をオタ活(出典では推し活と同一視している)に費やしている[36][42]

新型コロナウイルス感染症の影響

新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、推しにも大きな影響を与えた。多くのイベントが中止になったため、推し活はSNSを活用したものが中心となった[1]。一方で、感染症流行下での憂鬱な気分を和らげたり、感染拡大に伴うテレワークオンライン授業で自由な時間が増えたことにより、新たな推しができた者も多かった[43][44]。株式会社クロス・マーケティングによる2020年11月の調査では、新型コロナウイルス感染症の影響で新たに推しができたと答えた人の割合は、約4分の1となり、20代では4割を超えた[45]

また、首都圏関西圏の駅構内などでは、感染症の影響により、企業からの広告出稿が減少したために発生した空き枠を埋めるかたちで、個人が広告主になってアイドルグループなどを応援する「応援広告」が急増した。この「応援広告」は、韓国発祥の文化で、同時期のK-POPブームや同国の人気オーディション番組の日本版である『PRODUCE 101 JAPAN』(TBSテレビ)が放映されたのを機に日本国内でも浸透した。ジェイアール東日本企画によると、この応援広告の市場規模は、2023年度で推計377億円であり、これは屋外・交通広告費の約1割を占めるとしている[46][47][48]

政治

2025年7月に実施された第27回参議院議員通常選挙では、政党候補者を応援するという目的での「推し活」も登場し、選挙期間中は演説の様子や政党・候補者名を記入した投票用紙などを撮影した写真や動画をSNSに投稿、拡散したり、党首によるライブ配信を視聴する有権者も現れた[49][50][51]

憲政史上初の女性総理大臣となった高市早苗の愛称「サナ」と「推し活」の「活」を組み合わせた造語[52]。若年女性の間で広がりを見せ、バッグやコスメなど高市が使用しているアイテムに注目し、同じ物を購入しようとする社会現象[52]

「推し」を題材にした作品

脚注

関連項目

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