以下において、代数体 K の元 α に対して、
を、α の共役数とする。
判別式
K の整基底
に対して、以下の形の行列式を考える。
。
すると、
は整基底の取り方によらず一定の値である。
を K の判別式(英語版) (discriminant)といい、
で表す。
- 判別式の性質
- 任意の代数体 K に対して、判別式は 0 でない有理整数である。
- ミンコフスキーの定理。有理数体と異なる代数体の判別式は、
と異なる。(つまり、
となる。)
- エルミートの定理。任意の正数 N に対して、判別式の絶対値が N 以下の代数体は有限個しか存在しない。
- シュティッケベルガーの定理。代数体 K の判別式
に対して、
(mod 4) である。
- n 次の代数体 K の判別式
に対して、
。
イデアル
ここでは、代数体上のイデアルに特化した内容を述べる。
分数イデアル
以下の3条件を満たす
の部分集合
を、K の分数イデアル (fractional ideal)という。
に対して、
。
、
に対して、
。
(
) が存在して、
。
上の通常のイデアル[注 2]は、明らかに分数イデアルである。通常のイデアルと分数イデアルとを区別する必要があるとき、通常のイデアルのことを、整イデアル (integral ideal) という。
を n 次代数体 K の分数イデアルとすると、
が存在して、
の元は、
の有理整数を係数とする1次結合で一意的に表現される。このとき、
を、
の基底という。
代数体 K の分数イデアルは、イデアルの乗法で、可換な乗法群をなす。単位元は、
であり、
の逆元は、

である。
これを、イデアル群 (ideal group)という。
任意の分数イデアル
は、一意的に、
(各
は、0 ではない有理整数)
と素イデアルの積で表される。
分数イデアルのノルム
を、n次代数体 K の分数イデアルとし、
を、
の基底とする。また、
を、代数体 K の整基底としたとき、
[注 3]は、基底の取り方に依存しない。そこで、
を、分数イデアル
のノルムといい、
と書く。
- ノルムの性質
- 任意の分数イデアル
に対して、
は 0 でない有理数である。
- 整イデアルに対して、分数イデアルとしてのノルムと整イデアルとしてのノルムは等しい。
- 任意の分数イデアル
に対して、
。
単数
代数体 K に対し、K の元 ε で生成される単項イデアル (ε) が
と等しいとき、ε は、K の単数 (unit)であるという。同値な定義として、 ε および
が共に
の元であるとき、ε は単数である。
単数群
代数体 K に対し、K の単数からなる集合は、可換な乗法群である。これを K の単数群 (unit group) という。
ディリクレの単数定理
ディリクレの単数定理 (Dirichlet's unit theorem)。代数体 K の次数を n とし、
を、K の実共役体、虚共役体の個数とする。このとき、K の単数群
は 以下の性質を持つ
個の生成元
を持つ。
- ある正整数 m が存在して、
。
は乗法的独立である。つまり、
ならば、
である。
基本単数系
ディリクレの単数定理で与えられる
を基本単数系 (fundamental units system) といい、それぞれを、基本単数 (fundamental unit) という。
注意:基本単数系は、K に対して1組しか存在しないわけではない。以下のことにより、一般に、基本単数系は無限に存在する。
を、代数体 K の基本単数系とする。
が、K の基本単数系である必要十分条件は、各
i 
に対して、

と、

を

を用いて表したとき、

が成立することである。
単数基準
代数体 K の基本単数を
とし、

としたとき
![{\displaystyle R[\eta _{1},\ldots ,\eta _{r}]={\begin{vmatrix}l_{1}^{(1)}&\cdots &l_{r}^{(1)}\\\vdots &\ddots &\vdots \\l_{1}^{(r)}&\cdots &l_{r}^{(r)}\end{vmatrix}}}](//wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/a8205ded4a8ba8037ed627474b594942f1d49462)
とおくと、先に述べた基本単数系になる条件から、
は基本単数系によらず一定の値である。この値を K の単数基準 (regulator) またはレギュレータという。
類数
代数体 K のイデアル類群
は有限群であるが、イデアル類群の位数のことを類数 (class number) という。類数は伝統的に文字 h を使って表される[4]。この伝統は少なくとも2元2次形式(英語版)の類数公式を証明した1838年のディリクレにまでさかのぼる[5]。
素点
無限素点
n次代数体
に対して、θ の共役数を以下の様に並べる:
は実数で、
に対して、
は複素共役とする。ただし、
とする。
に対して、K 上のアルキメデス付値
を

とおく[注 4]。ただし、
は、実数または複素数の絶対値を K に制限したものである。
すると、これら
個の乗法付値は互いに同値ではない。これらを正規付値 (normal valuation)という。
に対して、正規付値
に同値な K の乗法付値全体の集合を
とおいたとき、
を無限素点 (infinite prime/infinite place)または無限素因子という。特に、
を実素点 (real prime/real place)、実無限素点または実素因子といい、
を複素素点 (complex prime/complex place)、複素無限素点または虚素因子という。
素点
無限素点と有限素点を合わせて素点 (prime/place)または素因子という。
積公式
を素点の1つとし、
を
に含まれる正規付値とする。
このとき、K の 0 でない任意の元 α に対して

が成立する。ただし、積は K の素点全てを動くものとする。
つまり、任意の代数体に対して、付値の集合を正規付値全体の集合とすれば、積公式が成立する。