歩兵

From Wikipedia, the free encyclopedia

歩兵(ほへい、: infantry)は、兵の種類のひとつで、主に徒歩による戦闘をする兵士である[1]

概説

歴史的に見ると基本的には歩兵は陸軍に所属しているものだったが、海軍や空軍も歩兵を持つようになった。

歩兵は、地上の特定の地域を占領、確保することができる唯一の兵種である。現代の戦争では、空軍や海軍が特に重要な役割を果たし、特に民主主義国では自軍に犠牲者が出て国内で厭戦ムードが広がることを避けるために、地上戦を避け、空爆ミサイル巡航ミサイルや攻撃用ドローンを使い、敵の防空能力を奪い敵のミサイル基地を破壊、あるいはそれらの手法で敵国の元首、指導者を殺害するなどして、つまり陸軍や歩兵を投入しないで済ます戦争も増えてきているが、もし敵国を占領、支配しようとする場合は、今でも地上戦を行い各建物内部に入り潜伏している敵兵を一掃する(あるいは捕虜にする)役割を果たす歩兵の投入が必要となる。

現代の歩兵は、歩兵と言えども、移動する場面では自動車類(輸送車、戦闘車 等)を使うことが多い。第二次世界大戦後の軍事理論では、歩兵は歩兵だけで単独で戦わせるのではなく、諸兵科連合(combined arms)と呼ばれる形で、さまざまな兵器・車両・航空機と協同して戦わせることが一般化した。たとえば、装甲兵員輸送車(APC)で移動することで、その装甲で歩兵を負傷から守る。あるいは歩兵戦闘車IFV)を使い移動し、戦闘時には歩兵はIFVから降りて戦闘するが、IFVのほうも装備している火力(機関砲や対戦車ミサイル 等)で歩兵の支援を行う。また歩兵は戦車とともに行動し、歩戦協同(tank-infantry cooperation)と呼ばれる戦術を使い、歩兵と戦車が互いに弱点を補い合う形で戦うこともある。この場合、敵防御陣地の破壊、敵の装甲車両の撃破には自軍の戦車の強力な火力を使う。戦車は火力が強いがビルの上階からの対戦車ミサイル対戦車ロケット弾による攻撃に弱いので、歩兵が目視で上階を警戒し対戦車兵器を撃とうとする射手をすばやく発見しライフル射撃で排除する役割を担う。

歩兵の役割の重要性は現代でも変わりないものの、その人数(軍隊に占める割合)はじわじわと減ってきている。古代から近代まで、軍の中で圧倒的に人数が多く、大きな割合を占めていたが、砲兵や工兵などが登場してからやや割合が低下し、さらに第一次世界大戦後や第二次世界大戦後は軍における職務や役割が多様化し、戦車・機甲兵種、空軍・航空部隊、後方支援(医療・補給・整備・輸送)、通信・情報・電子戦担当者、情報戦・偵察・サイバー部隊の隊員が登場し、軍全体に占める歩兵の割合はじわじわと減ってきている。 #歩兵の割合

ロシアのウクライナ侵攻では、歩兵はかつてない苦境に立たされるようになった。2022年から数年するうちに、爆発物を搭載したドローンによる歩兵に対する攻撃手法が"手作り"的に開始され、両軍とも敵軍のドローンやそれによる攻撃手法を模倣したり改良して進化させることを繰り返した結果、ドローン攻撃がきわめて巧妙で "ねばりつくような" ものになり、双方の軍の歩兵はかつてない苦境に立たされるようになった。FPV(一人称視点)方式の小型ドローンは上空から戦場を俯瞰することも建物内に壊れた窓や壁から侵入して探索することもできるので、塹壕、遮蔽物、壊れた建物内等(つまり、従来なら比較的安全とされていた場所)に身を隠している歩兵も発見されてしまい、ドローンがいることに気づいて逃げても人の脚より高速の飛行でねちっこく追い回されて爆発物で殺されるか傷(腕や脚がもげるか病院で切断せざるを得ないほどの負傷)を負わされてしまう。発表している組織や報道機関にもよるが、2025年のデータで、ウクライナの戦場で死傷する兵士の約80パーセントがドローン攻撃によるものだ[2]としていることが一般的である。地域によっては90パーセントに及ぶという[3]。"ウクライナ侵攻までは楽園だった"と思えるくらい、歩兵にとって過酷な時代が到来した[3]

各国、各時代での呼び方

アメリカ合衆国では、軍事用語(や学術用語)では、集団(兵科)としてとらえる場合はinfantry インファントリと呼び、兵士個々人はinfantrymanという。アメリカ独立戦争(1775年–1783年)のころはInfantryのほか、Footとも呼ばれ、基本的には武器はライフルであったのでRiflemenという呼び方もされた。ただし主にグレネード擲弾)を担当する歩兵もいたので、その場合はgrenadiers(擲弾兵)と呼ばれた。南北戦争では、精度の高い銃で狙撃する役割の歩兵を区別して呼ぶためにsharpshooters(精密射撃専門歩兵)という呼び方も登場した。現代のアメリカの軍では、infantryという呼び方を基本としつつ、分類して、Light infantry 軽歩兵、Mechanized infantry 機械化歩兵、Motorized infantry 自動車化歩兵、Airborne infantry 空挺歩兵、Marine infantry 海兵隊歩兵などと呼んでいる。

ロシアでは、軍事用語(や学術用語)としては пехота(ペホータ)という。ただし、歴史的に見て、歩兵に銃をもたせるようになってからは стрелки(ストレルキ。射撃兵)と呼ぶことが一般化した。現代では歩兵といえども、移動時には主に車両で移動して移動効率を高めるので、мотострелковые войска(モトストレルコーヴィエ・ヴォイスカ。自動車化ライフル兵)と呼ばれる。

日本では、中世に武士が騎乗して戦うようになると、それと対比しつつ徒歩で戦う兵士を雑兵(ぞうひょう)と呼ぶようになった。室町時代末期ころからは足軽(あしがる)と呼ぶことが一般化し、江戸時代もそう呼ばれていた。明治時代に軍隊の西洋化が行われると、西洋の軍事用語 infantryが輸入され、それの訳語として歩兵が使われることが一般化した。第二次世界大戦までは歩兵と呼ばれ、旧日本帝国陸軍の兵科としては歩兵、騎兵、砲兵、工兵があった。戦後陸上自衛隊においては、普通科と称されている。

歴史

近代の世界の軍隊に大きな影響を与えた欧州のものを中心に、歩兵の歴史をおおまかに辿る。

古代

古代軍隊では核となる存在であった。

古代ギリシアの歩兵

古代ギリシア時代、ポリス(都市国家)の市民を担い手とするポプリテス(重装歩兵)が誕生した。彼らはおもに農民や中小地主であり、"ポリス市民の義務"として兵となり、などを自費で用意して装備した。戦術としては、密集隊形を組んで戦う戦術(ファランクス)が用いられるようになった。この革新的な戦術はペルシャ戦争において、数的に勝るペルシャ軍を何度も打ち破り、現代にまで語り継がれることになった。ギリシアではこの他にもパノプリア(完全な鎧の意)やペルタステス(軽装兵)といった歩兵も登場した。軽装兵には、投石兵(slings)、兵、投槍ジャベリン)兵などがおり、重装歩兵の前・側面・後方などに配置され、重装歩兵を支援し、敵の陣形をかき乱す役割を担った。


アレクサンドロス大王軍

ギリシャの歩兵戦術はアレクサンドロス大王の時代にヘタイロイを中核とするマケドニア軍の騎兵戦術と合体(鉄床戦術)し、東方に一大帝国を築き上げる要因となった。

古代ローマの歩兵

更にそれより後に覇権を握る事になる古代ローマは、ギリシャと同じ市民兵制度であり、騎兵の安定供給が難しいなどよく似た環境に存在していた事から、初めは自然とファランクスを模倣していた。しかし騎兵を活用したカルタゴ軍との戦いや散兵戦術を取るガリア軍との戦いの中で次第に独自の戦術を編み出していき、こうした努力はレギオンというより洗練された編制、隊形、指揮系統を持つ戦術に繋がっていった。またその構成要員も数千人にまで達するようになった。

装備品は共和政ローマ期(紀元前5〜1世紀)には、軍は市民が担うもので、兵士が自己負担で装備を用意するのが原則で、ばらつきがあった。

帝政ローマ期(紀元前1世紀〜3世紀)になると国家(ローマ)が標準装備を支給するようになり、統一化がはかられ、戦闘効率や陣形維持が向上した。 標準化された装備には次のようなものがあった

  • グラディウス(gladius)─ 短剣の一種で、密集戦闘に適した刺突戦用武器
  • ピルム(pilum)─ 投槍(ジャベリン)であり、敵の盾・装備を破壊し、戦闘開始前に相手陣形を混乱させる役割
  • スクートゥム(scutum)─ 大型の長方形の盾であり、歩兵隊列の防御と隊形維持に重要な役割を果たした
  • 防具(鎧・兜)─ 鎖帷子(lorica hamata)、分節板甲(lorica segmentata)、金属ヘルメット(galea)等を身につけた

帝政ローマでは共和政期の市民兵制度から大きく変更され、軍が常備化され、兵士はプロフェッショナルとなり、給与(stipendium)が支払われるようになった。

中世から近世

蛮族の大移動により西ローマ帝国が崩壊し、ヨーロッパ中世となり、その後長きに亘り、歩兵に代わり騎兵が軍で優位を占める時代となった。これには馬の改良や鐙の登場だけでなく、戦闘の形態が大勢力による軍勢の衝突から、騎馬民族の荒略に対する迎撃や追撃に焦点が移動したためである。重装騎兵は日々の訓練が必要でありまたウマの肥育や装備の準備など経済力が要求されることから、封建社会の確立や地方分権の進展により定着した。かつてのような市民兵からなる歩兵の密集隊形は姿を消し、代わりに少数の貴族による重装騎兵(騎士)が戦いの中心となった。こうした傾向は最終的に一騎討ちという儀礼的な戦闘を交わすのみにまで陸戦の戦術的退化を招いた。

しかし中世後期ごろから中央集権化を果たした大国同士の戦が増えると再び戦いは歩兵を中心としたものに戻り始める。中世の終わりに起きた百年戦争長弓兵や槍兵を主力とするイングランド軍が、貴族や騎士からなるフランス軍の騎兵部隊を完膚なきまでに破り(クレシーの戦いポワティエの戦い)、その決定的な契機になった。歩兵は再び軍隊における最も重要な存在へと復権を果たし、騎兵は副次的な存在として軽装さから来る機動性が重要視されるようになった。マキャベリは君主論において騎兵による散発戦闘ではなく、常設歩兵軍による集団戦法の有効性を論じた。

騎士文化を過去の物とした長弓は、より貫通力・殺傷力の高いマスケット銃が登場した後も、射程・命中率・攻撃力の集中・発射速度の点で優れていたことから並行して数百年の間使用されつづけた。しかし長弓は効果的に使うためには非常な熟練を要する武器であり、実戦で戦えるまで訓練するのには長い時間がかかった。このような欠点とは反対に、テルシオ隊形や三兵戦術の研究が進み、また数週間から数か月訓練した多数の人員と豊富な資金と火薬の製造所さえあれば、編制可能なマスケット銃兵の部隊が用いられるようになった。また近世より産業化が進行し、田園的な貴族制は廃れて、都市に人と富が集中したことが、訓練は十分ではないものの大規模な歩兵部隊の迅速な招集を可能にした。

騎兵の機動性の向上、強い打撃力に対応して、歩兵にとってはが身を守る為の重要な武器となった。当初はマスケット銃兵に槍兵(パイク兵)が混成され、発砲の合間銃兵を護衛していたが、銃剣が普及するようになり銃兵に刀剣戦闘力が付加されるに至り、槍兵は姿を消し、近代の歩兵の姿が確立され始めた。

近代 機械化へ

歩兵の輸送手段は、それまでは徒歩やであったが、19世紀より鉄道が使われ始め、1890年代以降いくつかの国では自転車が採用された(馬もしばらく併用されている)。第二次世界大戦では日本陸軍の歩兵が自転車で移動し、大成功を収めた(銀輪部隊)。

1920年代以降、自動車を使った自動車化歩兵の部隊が生まれたことは機動性における大きな革新となった。この頃から、移動中の兵士の安全を確保することの重要性が認識されるようになり、移動時に装甲車を使用する機械化歩兵が編成されるようになった。

歴史的な分類

歴史的には歩兵もさまざまな装備・編成で用いられてきた。

槍兵
もしくはそれに準ずる棒状の武器武装した歩兵であり、特に長槍兵などは騎馬に対抗する主力となった。古来から世界各地で見られる一般的な歩兵であり、近接戦闘における主力であった。しかし、銃剣の普及に伴って姿を消した。
弓兵
弓矢で武装した歩兵。クロスボウを装備する歩兵もこれに含む。
これも古来から世界各地で見られる一般的な歩兵であった。主に遠距離から敵陣にを放って陣形をかく乱したが、大砲の発達によって姿を消した。
重装歩兵
甲冑・脛当て・を装備して防御力を向上させた歩兵で、密な戦列を組んで戦う。密集隊形のおかげで突破力と防御力は高いが、隊列を維持しての高速移動は苦手。
古代ギリシャマケドニアファランクス古代ローマレギオンが有名。
戦列歩兵
マスケット銃と銃剣で武装し、戦列(横隊など)を組んで戦闘を行う歩兵である。近世ヨーロッパにおいて極端に発展し、戦闘における主役となったが、銃や砲の性能の向上にしたがって姿を消した。
擲弾兵
擲弾(手榴弾)を投擲する兵士。近世ヨーロッパで登場したが、当時のそれは危険が大きい割に効果が低かったため擲弾を使用する機会がほとんど無くなったものの、精鋭部隊の名誉称号として使われるようになった。
現在では手榴弾は歩兵の一般装備と化しており、あえて言うならばグレネードランチャー対戦車ロケットランチャーを運用する歩兵がこれに当てはまる。
散兵
戦列を組まず、散開して遠距離射撃を担当する歩兵で、猟兵とも呼ばれる。
現在では密な戦列を組むこと自体がなくなったため、散兵と呼ぶことはほとんどない。猟兵についてはドイツでは空挺部隊降下猟兵)や山岳部隊(山岳猟兵)、軽歩兵部隊の称号として用いており、フランス軍でも一部の部隊が猟兵を名乗っている。


現代の歩兵

M4カービンM249軽機関銃を構えてバグダードで偵察任務を遂行する米陸軍第2歩兵師団所属の歩兵

現代の歩兵はアサルトライフル機関銃手榴弾あるいは対戦車兵器などの小火器を携行する。 偵察戦闘治安維持などの役割を担う。そのほか、災害派遣でも活躍する。

次のような種類の歩兵がいる。

歩兵は主に陸軍に所属しているが、その他にも、空軍や海軍に属する歩兵がいる。

空軍に所属する歩兵としては

  • 空挺兵 ─ 固定翼航空機(輸送機)で移動し落下傘降下できる歩兵
  • 空中機動歩兵 ─ 主として回転翼機(ヘリコプター)で移動する歩兵

海軍関連の歩兵としては次のものがある

  • 海兵隊(海軍歩兵)─ 艦隊に配置された歩兵
  • 陸戦隊 ─ 艦船乗組員を武装させてしたてた歩兵

その他次のような歩兵もいる

  • 特殊部隊 ─ 歩兵をさらに精鋭化したもの。近年は非対称戦が多く、需要が増している。

歩兵の割合

John J. McGrath,の"The Other End of the Spear: The Tooth‑to‑Tail Ratio (T3R) in Modern Military Operations",Combat Studies Institute Press, 2007では、軍における戦闘要員をtooth("歯")、後方支援の役割の人々をtail(尾)と分類し、アメリカ軍のその割合の変化傾向を分析した。 McGrath"戦闘要員"には、歩兵だけでなく戦車搭乗員、砲兵、特殊部隊員も含まれるが、それも含めて次のように割合が減ってきている。

  • 第一次世界大戦 ─ 約28% 戦闘部隊が28%
  • 第二次世界大戦 ─ 約19% 歯:尾 = 1 : 4.3
  • 朝鮮戦争 ─ 約7.5%。この戦争で後方支援要員が急増し、歩兵の割合が減った。

現代の分類

歩兵は、作戦行動中は主に徒歩で活動する兵士の総称であるので、その装備や技能、運用形態や戦術的役割によっていくつかに分類ができる。

ここでは現代における師団旅団レベルにおける歩兵の基本的な分類を述べる。(Field Manual 100-5を参考)

軽歩兵(Light Infantry)
正規の歩兵に対して、装甲車両火砲などの装備が軽量である歩兵部隊。
空挺兵(Airborne Infantry)
航空機戦略的な長距離を迅速に移動し、空港施設に頼ることなくパラシュート降下で着陸が可能な歩兵を指す。交戦地域に展開した後は軽歩兵と同様の能力を発揮する。降下に高度な能力が必要で人員が限られる上、着地地点にばらつきが生じるため、特殊な作戦以外は、通常歩兵の補助的な役割でしかなくなっている。
空中強襲歩兵(Air Assault Infantry)
ヘリコプターなどの航空機で輸送され、交戦地域に速やかに展開・撤収する空中機動作戦が可能な作戦的、戦術的機動力を有する歩兵を指す。敵の支配地域に潜入し、後方連絡線を切断、敵部隊に対する奇襲破壊工作を実行できる。
レンジャー(Ranger Units)
特殊な作戦において運用されることを想定して訓練された歩兵部隊。組織によって意味付けは異なるが、精鋭歩兵と見做される事が多い。
機械化歩兵(Mechanized Infantry)
装甲車両を用いて地上を迅速に移動できる歩兵を指す。機甲部隊と同等の機動力を持つため、友軍の戦車部隊と連携して作戦を実施できる。
自動車化歩兵(Motorised Infantry)
非装甲の自動車で移動する部隊。現代の歩兵は原則として自動車化歩兵なので、単に歩兵とされることが多い。

現代に於ける代表的な歩兵の区分

ポイントマン
前方警戒を行いながら部隊を先導する歩兵(斥候)を指す。
小銃手(ライフルマン)
小銃を主たる武装とした歩兵。小銃は歩兵銃とも呼ばれ、最も基本的な武器と言える。現代ではアサルトライフルが一般的。
衛生兵
戦闘において負傷兵に応急処置を施す兵士を指す。一般の歩兵と行動を共にするほか、作戦地域からやや離れた地点で待機する場合もある。純粋な戦闘員ではないが、自衛目的の武器を携行・使用することが認められている。
通信兵
戦闘中でも部隊外と通信するため、トランシーバーを携行した(中くらいの可搬型機器を背負っている)歩兵を指す。
狙撃兵(sniper)・選抜射手(marksman)
戦闘において比較的遠距離から狙撃を行う歩兵を指す。狙撃用スコープ付小銃(狙撃銃)や弾道計算機など特殊な装備を持つ兵。狙撃兵は上級指揮官の暗殺や長距離からの恐怖攻撃を目的に、観測兵などと共に独立して行動する。選抜射手は一般の歩兵と行動を共にする狙撃手で、見通しのよい場所からの火力支援を通じて部隊の戦闘行動を支援する。
機関銃手
分隊支援火器汎用機関銃で武装して、火力支援制圧射撃を行う歩兵を指す。
擲弾手
擲弾発射器火力支援を行う歩兵を指す。一般歩兵に随伴する場合には、小銃に固定式のグレネードランチャーを取り付けるか、専用の擲弾銃が用いられる。
対戦車特技兵(対戦車兵器手)
対戦車ミサイルロケットランチャー、携行無反動砲などの携帯式対戦車兵器を運用する歩兵を指す。
対空特技兵(SAM手)
FIM-92 スティンガー9K32 ストレラ-2などの携帯式地対空ミサイルを運用する歩兵を指す。
迫撃砲兵
迫撃砲を運用する歩兵を指す。迫撃砲は口径により複数種類が採用されていることがほとんどで、大口径のものほど、より上級部隊の管理下に置かれる。

部隊構成

歩兵部隊の編成は時代・国・組織によって非常にばらつきがあり一概には言えない。

時代によっても歩兵の編成は変わってくる。例えば古代中国では卒、伍、隊、旅、軍というような編制の記述が兵法書にみられる。この影響からか近代の日本にも伍長、一兵卒、部隊、旅団というような名称があるように一部名残があるようである。

現代の軍隊では基本的に二人から六人程度で構成されるが戦闘の最小の行動単位となり機関銃などの制圧火器がしばしばこの部隊に配備される。二個から三個の班から構成される分隊があり(分隊支援火器として制圧火器がこの分隊に配備される場合もある)、分隊が三個から四個ほど集まった部隊を小隊、小隊が三個から四個ほど集まった部隊を中隊とする。中隊の規模になってくると歩兵の人員数は100~250人程になり、歩兵の部隊における比率は60%から90%程度になってくる。中隊がさらに三個から五個ほど集まって大隊となり、大隊は部隊を支援するための火砲や車両などを装備し、おおむね少佐中佐といった士官が指揮を執る。その大隊を三個から四個ほど擁するのが連隊または旅団と呼ばれる。この連隊や旅団は大体1500~2500人程度の人員を抱え、中佐大佐が指揮を執り、支援として戦車隊や工兵隊なども部隊を構成する場合がある。この程度の規模の部隊になれば歩兵の比率は25%から60%程度になってくる。ちなみに旅団や連隊よりも大規模な師団という部隊の単位も存在する。

歩兵に求められる能力

歩兵には非常に多岐にわたる実践的な能力が求められる。その歩兵がどのような任務につく部隊に所属しているか、またどのような適性があるのか、予算がどのていど充実しているのかなどによって大きくその教育内容などが変わるので、概略することは難しい。平均的な歩兵の能力について以下は述べる。

  • 体力と強い足腰 ─ 歩兵は、しばしば50キログラム以上の装備を担いで移動し、しかも車両が入って行けないような険しい地形を突破することもあるため、歩兵は体力と徒歩での移動能力に関しては徹底的に訓練で鍛えられ、マラソンや、重い荷物を担いだ状態での山岳地域の行軍などで体力と強い足腰を鍛える。
  • 射撃能力 ─ 敵を殺傷したり制圧する能力であり、歩兵の戦闘力の基本である。敵、味方、非戦闘員(民間人)を見分けて、通常は敵のみを撃たなければならず、味方を誤射してはならない。の操作法、分解・掃除法、各種姿勢での射撃(立射・膝射・伏射)、移動しながらの射撃、遮蔽物で身を守りながらの射撃、味方と連携した射撃、敵/味方/非戦闘員(民間人)/"不明な対象"(判断保留、引き続き警戒)の4種に識別する訓練、次々と現れる的を素早く判別し的確に狙う訓練などが行われる。敵とそれ以外を瞬時に判別し的確な姿勢で銃をすばやく敵に対して向けるようになれば実戦で優位に立てるが、逆に一瞬の遅れが致命的となることも多い。
  • 近接格闘術 ─ 近接戦闘(白兵戦)における格闘技術。どの国の歩兵も訓練される。国により格闘術の種類はそれぞれ異なる。ナイフの取り扱いもこの一環で訓練され、銃音を発生させずに敵を殺す場合や、閉所での戦闘に使われる。また閉所での戦闘に関する総合的な訓練を受ける場合もある(詳しくはCQCCQB)。
  • 陣地建設能力 ─ 陣地建設のノウハウの有無、優劣が、自軍の被害の程度に直結する。建設の要領を歩兵全員がわかっていれば短時間で戦闘陣地を建設できるので全ての歩兵が熟知することが望ましい。塹壕(ざんごう)を掘る能力は、近年のロシアのウクライナ侵攻でも重要となっている。スコップで掘り重い土を運ぶ体力だけでなく、適切な位置、形状、人員の配置などについて、一定のノウハウ、知識も必要である。たとえば塹壕の底に50cm程度の溝を作っておけば、手榴弾が投げ込まれても溝に落ちるので比較的安全[要出典]、などといった細かい知識が戦場では生死を分けることもある。

歩兵としては一般的ではないが、選りすぐられた人員で編成する特殊部隊の兵が身につける技術には次のものもある

  • サバイバル技能 ─ 支援や補給が得られない山野で、数日あるいは数週間にわたり活動せざるを得ない場合もあるので、野外での水の見つけ方、汚れた水を飲める水に変える方法、野生の植物・動物を食べられるか否かひとつひとつ判別する知識、山野にある草木を利用して雨をしのげる簡易的な寝床を作る技術(ビバークする技術)、負傷した際の応急処置(野戦衛生学など)、地図やGPSがない状況での地形把握の技術、などがある。


運用と戦術

陸上戦闘で最も発生しやすい損害の大部分は歩兵である。しかし敵の陸上戦力を掃討して敵拠点を征圧しなければ戦争の勝敗を決定的なものにすることは難しい。そのため戦車火砲航空機などの兵器を用いて、まず敵部隊の圧倒的な戦闘力を破壊し、敵に逆襲が不可能な損害を与えてから歩兵部隊を投入することが望ましいと考えられている。(小隊分隊レベルの歩兵の運用については歩兵の戦術を参照)

現代における基本的な仕事

歩兵の仕事の大部分は移動、残りは防御陣地の建設と維持であり、その余禄に一割にも満たない戦闘が含まれる。映画などの娯楽作品では、往々にして歩兵は常に撃ち合いをしている様に描かれるが、実際にそのような状況下では、敵も味方も精神的に疲弊して戦闘ストレス反応(戦争神経症 shell shock)を示す場合がある。第二次世界大戦の研究によれば、100日~200日にわたって戦闘を生き延びた兵士のほとんどが心身共に磨耗し、戦闘不能になってしまっている。実質的に頻繁な戦闘行動が行われるのは、どちらかが一方的に大量の人材や物資を投入して、攻め上げている場合のみである。今日のアメリカがこの様式で、相手を疲弊させ、戦争の早期決着を目指す作戦を取っている。しかしながら、近年の湾岸戦争イラク戦争などでは即席爆発装置(IED)で手足を失う兵士心的外傷後ストレス障害などを患う兵士も多く、アメリカは国内外から強い反発を受けている(戦術を参照)。

戦闘

戦闘は歩兵にとってもっともつらく苦しい仕事となる。戦闘はその目的や環境、参加戦力の規模や種類によってさまざまな形態がある(塹壕戦市街戦上陸戦など)。戦闘においては歩兵は基本的に分隊ごとに編成され部隊単位で動き、基本的に各々が別々の方向を警戒することで死角をなくす隊形をとりながら移動する。その地域の危険度によって歩兵が移動する際の手順は若干異なる。危険度が比較的低い場合においては全員が全方位に対して警戒を払いつつ、一度の攻撃で全滅しないように歩兵間の間隔をあけながら一斉に移動する(この間隔はジャングル戦、野戦などによって違う)。実際に戦闘に入れば、基本的に二つほどのに分かれ、敵に対して制圧射撃(機関銃での射撃や煙幕を張ることを指し、敵の殺傷が目的ではなく、敵の行動を封じることが目的である)を交互に繰り返す。一方が射撃を行っている間にもう片方が敵よりも優位な地点を確保し、より優位な状況で戦闘を展開していく。これは現代における歩兵機動戦術の基本であり、こういった過程において敵味方戦力の分析ミスによる間違った戦術や、武器装備の不調、火力の不足、機動力の不足、部隊の士気低下、指揮官の失敗、チームワークの欠落などにより歩兵はしばしば死傷する。戦車装甲車迫撃砲などがあればより重火器で攻撃することができ、歩兵の負担は軽くなる。

警察・治安活動

制圧占領した都市や村落の治安警備活動はかならず歩兵部隊の担当業務となる。占領地域の治安業務は戦時国際法に決められた占領軍の任務であり、その地域の行政機構が機能するかぎり協力しながら、通常の保安業務のみならず交戦勢力やゲリラなどによる地域住民を対象としたテロ攻撃から防護する必要がある。

戦車と歩兵

戦車は強力な火砲と機動力を備えており、敵の装甲車、戦闘陣地、銃座などに効果的な打撃を与えることができる一方、地形適応力や柔軟性は歩兵に劣る。戦車と比較すると、歩兵部隊は無力に思われるかもしれないが、塹壕や遮蔽物に隠れ、有効な対戦車兵器を装備した歩兵は、高価な運用コストゆえに数で劣る戦車部隊より信頼性の高い戦力となる。

戦闘車両は一般に視界が劣悪である。戦車は強固な装甲を備える一方、対戦車兵器を携行した歩兵に接近されると脆弱である。歩兵は地形に潜伏あるいはカモフラージュを施して戦闘車輌を待ち伏せることができる。肉薄に成功、または敵戦車に発見されなかった歩兵は、敵戦車の視界外から、車体後部や機関室上面など装甲の薄い箇所に攻撃を行い、これを破壊することができる。市街戦では戦車1台は概ね歩兵1~2個分隊程度の戦力に過ぎないと言われる。ゆえに視界の悪い地形・状況下で戦闘車輌が単独行動を行うのは非常に危険であり、随伴歩兵との連携が欠かせない。

また、歩兵部隊はある程度の人的被害を出しても部隊再編成を行い、柔軟な運用が可能だが、整備部隊から離れて行動している戦車が車体にダメージを受ければ車両を放棄するほか無い。行動可能な場所が限定されることから、地雷にも狙われやすい。

ゲリラ戦

恐らく、過去現在問わず歩兵の柔軟性・有能性が一番発揮されるのは市街地ジャングルなどの閉鎖的地形でのゲリラ戦である。『孫子』にも書かれているように、太古の昔から、戦術的に複雑な機動が出来る少数精鋭によるゲリラ戦は、動きが鈍い重武装かつ大規模な敵戦力に対して有効な戦法として見られてきた。敵に気付かれず接近、奇襲攻撃で損害を与え、本格的な反撃が始まる前に撤収するのが基本であり、一方的に戦闘の主導権を維持することで精神的ストレスも敵に与えることができる。現在でもその図式は変わらず、また火器性能の著しい発達もあり、巨大勢力にとって小規模かつそれなりの練度があるゲリラ兵は脅威に他ならない。ただし、この戦術が有効なのは市街地やジャングルなどの遮蔽物が多数存在する場所に限られ、また敵情を確実に把握するための情報網や人脈、地形に通じた誘導員などが必要である。正規軍の特殊部隊によるゲリラ戦術(例・第二次世界大戦における、北アフリカでの英軍の特殊部隊)以上に、武装した民間人によるゲリラ戦術(例・第二次世界大戦でのドイツ占領下の各国のレジスタンスパルチザンベトナム戦争でのベトミン南ベトナム解放民族戦線)の方が活発である。

戦争以外での任務

平時における歩兵は戦闘とは無縁の駐屯地基地訓練や雑用に追われる日々を送る。国によって差はあるが、欧米の軍隊では普通一日八時間程度の勤務を週五日か六日間こなす。演習がなければ、早朝六時ごろから決められたスケジュールに沿って行動する。訓練においては徹底的に歩兵は苦しい状況に慣れさせられることで、部隊の結束を強め、部隊戦術を覚え、実戦に備える。

また冷戦終結後は、戦争以外の仕事について歩兵の重要性が高まっている。具体的には、国連平和維持活動テロなどの緊急事態における、また対ゲリラ活動などの治安維持活動、災害救助活動などである。こうした任務をMOOTW(Military operations other than war)と呼ぶことがある。

テロ事件などにおいては歩兵は柔軟な戦闘力を持ちえることから、人質をとった立て篭もり、ハイジャックなど精密かつ迅速な攻撃が求められるテロの対応においては非常に優秀であり、各国の警察軍隊でもこういった人質救出を専門とした訓練を受けた歩兵の部隊が特殊部隊として保有されている。彼らは建物や飛行機だけでなく、列車自動車バスなどありとあらゆる閉鎖空間で的確な動きができるように日々CQB訓練を受けている。

装備

現代の戦闘を戦う歩兵の装備はその国の軍隊によってさまざまだが、一般的に使用される装備がある。しかし、その種類は非常に多様であり、ここでは主な装備に限って取り上げる。

  • 小銃拳銃などの小火器 ─ 近代以降における歩兵の主力となる武器である。主にAK-47M16などの自動小銃がその殺傷力と連射速度から多くの現代の陸軍で歩兵の標準装備に用いられるが、室内などの閉鎖的な空間での戦闘が予想される場合はMP5などの銃身が短く取り扱いやすい短機関銃が用いられる場合がある。また、歩兵の火力をより高めるためにミニミ軽機関銃などの機関銃分隊には配備される。これらの火力は戦闘を有利に進めるために欠かせないものになっている。拳銃は閉所での戦闘などの状況以外では歩兵の補助的な武器として装備される。工兵衛生兵など直接戦闘を行うわけではない兵科でも、緊急事態ではこういった武器を使って歩兵として戦うことができるように全員が訓練を受けている。
  • 爆薬手榴弾 ─ 設備の爆破ブービートラップの設置などに使われる。工兵がこういった分野の訓練を集中的に受けるが、普通の歩兵でも一通りの取り扱いは心得ることが求められる。高性能爆薬であるプラスチック爆弾イギリス陸軍などによって使用されており、建物などを破壊するために一部の歩兵に渡されている。また、手榴弾などは遮蔽物に隠れた敵を攻撃するときなどに使用されるが、市街戦などで特にその効果を発揮する。敵が立て籠もった室内に突入する直前に手榴弾で敵を攻撃しておけば、敵は出入り口に対する待ち伏せ攻撃ができなくなる。また、地雷や手榴弾は戦闘陣地を構築する時にも重要な武器であり、対戦車地雷や手榴弾を使ったトラップを侵入予想経路に仕掛けておけば、敵に損害を与えることができる。
  • 防護装備 ─ 歩兵の身体を部分的だが守ってくれる装備。防弾チョッキヘルメット弾丸や弾片から身体を守るが、その効果は防護装備の形状やグレード、飛来した物体の性状や速度など、様々な条件によって影響を受けるため絶対的なものではない。一部で防弾チョッキなどは重く、機動力を削ぐと考えられているが、防弾チョッキには負傷者を25%減少させた実績があるため、決して無駄なものではない。しかし、これらの装備は高価なので、米国イスラエルなどの先進国を中心に採用されている。
  • 迷彩服 ─ 視覚効果で視認性を下げ、敵に発見されにくくするカモフラージュ効果がある。狙撃兵など絶対に敵に発見されないことが求められる兵士は、さらに偽装・隠蔽を施し、視認性を落とす努力を払っている。北欧やロシアでは、冬季には雪に紛れるために真っ白のものが使われる。
  • 無線通信機器 ─ 特定の歩兵にのみ渡されているものだが、他の部隊との連携を維持し、指揮系統を維持するために現代においては特に重要であると考えられている。特に歩兵部隊は火砲航空機戦車などの支援なしで効果的な攻撃を行うことはほぼ不可能であり、組織的な連携の中で歩兵部隊はその戦闘力を発揮することができる。しかし、電子戦において敵の探知システムに傍受されることや、ジャミングで妨害される場合もある。
  • 生活用品 ─ 食料セット水筒、携帯用のシャベルナイフ、救急セット(鎮痛剤消毒液など)、通信機器。数が多く重量が重く、近年では、特に徒歩での隠密行動が重視される特殊部隊では、生活用品の重さがまさに"重荷"になっており、各国は近年それら装備の見直しを推し進めている。

政治体制と歩兵の犠牲人数の関係

民主主義国の場合

民主主義国では、兵士が死傷すると、家族・親族・友人を失った人々の苦悩がマスコミ経由で国民に知られ、国内世論は変化し、厭戦ムードや反戦ムードになり、自国民に犠牲者が生じるような戦争を始めた政権(指導者)の支持率が低下し、政権の過ちや責任を追求する世論が強まる。("今は有事だから"という言い訳でとりあえず政権を維持することも多いものの)実際には政権の維持が困難になり、戦争が終わった時点でその政権(政党)は権力を失うことが多い。自国の兵士を死傷させると政権支持率が著しく低下するという事実は、ベトナム戦争以来、教訓として残っている。

民主主義国では歩兵の生存帰還率を引き上げる機械化に極めて熱心である。任務の多様性は増す一方であり歩兵の教育や訓練のコストも上昇していることも、歩兵の人的損害を軽減させるための研究の推進を後押ししている。また歩兵という犠牲者が発生しがちな兵科を投入しなければならない地上戦をすることは避けて、ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃で済ませることが増えてきている。ただし、自国の兵士の犠牲は気にするが、ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃で"敵国"の市民を、学校に通う子どもたちも含めて、何千人も殺害してしまうことを気にもしない政治指導者も2020年代には複数の国で登場している。

独裁国家や権威主義国家の場合

一方、非民主的な国、たとえば独裁国家や権威主義国家では、(民主主義国とは異なり)情報が統制されてしまっており、国民は真実の感情をマスコミで感情を表明することができず、多くの歩兵が犠牲になっても、国民は政権の責任を問うことすらできない。その結果、独裁国家や権威主義国家では、兵の犠牲数を小さくしようとする努力がほとんどおこなわれず、何十万、何百万、何千万という自国の兵士(主に歩兵)を、まるで安価に調達できる消耗品のように扱い、平然と死なせることを行う。たとえば次のような例がある。

歩兵の未来

2010年現在、欧米の軍隊を中心とした歩兵装備の見直しの研究や装備の改良などが進められており、特に歩兵個人単位でのネットワーク化が試験されている。1990年代より携帯情報端末などを装備した先進歩兵システムの開発が行われてきており、ウェアラブルコンピュータの導入などにより、歩兵への個別指示の密度も高くなることも予測されている[5]。これらの状況から、軽量なHMDを内蔵する動力付きの甲冑を装備した歩兵や、NBC兵器によって汚染された地域でも行動できる防護性の高いスーツを着込んだ歩兵などの将来像が考えられている。パワードスーツ(外骨格スーツ)の導入や、通信や情報伝達・相互連携にコンピュータとのインターフェースの改良による総合的な情報処理技術の導入なども長期的な視点で検討している。

器の威力向上や電子戦技術の発展、また現在のバッテリーの技術力がどうなろうが、戦争は殺し合いなので、本質的には「矛と盾」であり、2つの対立する軍の歩兵が衝突すれば、どちらかの歩兵、もしくは双方の歩兵が大量に死ぬ。機械化兵などシールドの強化がされれば、それを破壊するための火力も強化され、本質的には「矛と盾」の競争が続き、歩兵が安全になることは無い。

歩兵が取り扱わなければならない通信装備などが高度化し、市街戦などの増加もあって戦闘の中身も複雑化しているので、教育水準の高い人材がますます歩兵として求められている。

ロボット歩兵

AIを搭載した自律型のロボット兵士も研究されている。

人型でないロボット兵

攻撃など最終的な判断は操作する兵士に委ねられるような自律制御でないリモートコントロール式のロボットの実戦配備は進められており、これらは従来歩兵が携帯している武器の延長的な運用をされるほか、歩兵に先行して周囲を偵察するために利用されている。イスラエルなどでは、パレスチナとイスラエルの境界域(壁付近)で(人型ではない)ロボットを自動走行させ、AI画像認識により、不審者を見分けさせ、ほぼ自動で攻撃させることが可能になっている。

輸送や負傷者の後方への搬送など非戦闘任務においての活躍が期待される自動走行するロボット自動車も研究されている(→ロボット#兵器

人型のロボット兵

2010年ころまでは、人型の自律型ロボットの実現は難しいと考えられていた。当時の課題("技術的な壁")は次のようなものがあった。

  • 人間のように、物理的空間を把握し、物理的な世界を自在に動き回り、物理的な世界に働きかける判断ができる人工知能
  • 人型のロボットを機敏に動かすための、強力なサーボモータなどのメカトロニクス技術

空間把握能力に関しては、自動運転車の研究・開発と販売開始により、現実のものとなった。アメリカのカリフォルニア州では自動運転車の無人タクシーが走り回っていることが すでに"当たり前"の風景になっており、多くの市民が利用している。

AIに関しては、2022年11月にLLMのGPTを用いた生成AIのchatGPTが公開されてから、世界中で人工知能開発が加熱し、アメリカ合衆国のいくつかの企業のほか、中華人民共和国の(中国共産党の支配下にある)企業も高い技術力を持つようになった。LLM技術を応用して、ロボットに物理的な動作を大量に学ばせる手法が研究されており、フィジカルAI(Physical AI)や「ロボット基盤モデル」(Robotic Foundation Models)」と呼ばれており、工場向けの生産用ロボットではフィジカルAIで自律的に動くロボットすでに登場し、市販されており、世界各国の多くの技術者が、その技術を応用しロボット兵士(ロボット歩兵)を実現することを考えている。

人型ロボットのメカトロニクス技術に関しては、2010年代から中華人民共和国で多数の企業による開発が活発化し、高性能のサーボモータを実現し、2020年代ではアメリカ合衆国や欧州の水準を追い抜いており、世界の先端を進んでいる。中華人民共和国の人型ロボットは、カンフーをしたり、バク宙をしたり、マラソン競技を行うようになっている。

上述のように、人型の自律型歩兵の実現に必要な技術の"壁"は、ひとつひとつ消去されてきており、自律型ロボット歩兵はかなり近い将来に実現する可能性が高くなってきている、と考えられるようになっている。

インドのDefence Research and Development Organisation(DRDO)も2021年にヒューマノイド型軍事ロボット(つまりロボット歩兵)の研究を開始し、2027年に完成させる予定だとされている。

自律型ロボット歩兵が搭載することが望ましい能力としてはつぎのものがある

  • 市街戦のような敵味方以外に民間人などが混在する複雑な戦場における、敵/味方/市民 の高い識別能力
  • 交戦規定を考慮した行動能力

脚注

関連項目

Related Articles

Wikiwand AI