電池
光や熱、化学反応などのエネルギーを、電気に変換する装置
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化学電池
「化学電池」は、物質自身が持つ化学的なエネルギーを化学反応によって直流の電力に変換する電池である。以下に化学電池の分類を示す。
一次電池
一次電池は、放電と呼ばれる化学エネルギーを電気エネルギーに一方向に変換することのみが一度だけ可能な電池である。一次電池の内、電解質を不織布(セパレーター)に染み込ませるなどの処理をして固体化したものは、一般に乾電池と呼ばれる。電池残量計測器ではかれる物もある。
二次電池


二次電池は、放電過程では内部の化学エネルギーが電気エネルギーに変換されるが、放電時とは逆方向に電流を流すことで、電気エネルギーを化学エネルギーに変換して「充電」という蓄積が可能な電池であり、一般には「蓄電池」や「充電式電池」と呼ばれる。
燃料電池
燃料電池は、メタノールや天然ガス、水素などの燃料から触媒を用いて発電を行う発電装置である。反応に高温を必要とするものが多い。使用する電解質や燃料の種類により以下の5種類に分類される。
生物電池
生物活動の結果得られる化学エネルギーを利用した電池。バイオ電池。
化学電池の基本構成
少なくとも、以下の六つの要素が必要である。[2]
- 正極活物質(電子をもらう酸化剤。カソードになる)
- 負極活物質(電子を出す還元剤。アノードになる)
- 電解質(イオン伝導性の媒体)
- セパレーター(酸化剤と還元剤が混ざらないようにする膜)
- 集電体(電子の供給源やシンクなる電子伝導体)
- ケース(以上を収納する容器)
化学電池の中でも一次電池と二次電池では共通する基本構成を持っている。燃料電池は、活物質を外部から連続的に供給するという機構上の特徴を持つが、学術的には化学電池(一次電池)の一種に分類される[3]。生物電池はこれらとはまったく異なる。
構成要素の詳細
各要素の役割と、材質に求められる性質は以下の通りである[4]。
- 正極活物質 / 負極活物質
- 電池反応の主役となり、化学エネルギーを持っている物質。正極側には電子を受け取る酸化剤(例:マンガン乾電池の酸化マンガン(Ⅳ))が、負極側には電子を放出する還元剤(例:亜鉛)が用いられる。
- 歴史的には、ボルタ電池における希硫酸やダニエル電池における硫酸銅(Ⅱ)水溶液が正極活物質に相当する。これらは下記に示す電解質としての役割も兼ねている。
- 活物質には、単位質量あたりのエネルギー量(容量密度)が大きいことや、電解液に対して化学的に安定であることが求められる。
- 電解質
- 正極と負極の間で、キャリアとなるイオンを移動させるための媒体。
- 一般的には液体である「電解液」が用いられることが多いが、全固体電池などで使われる「固体電解質」もこれに含まれる。形状が液体であれ固体であれ、その役割は、正極・負極間で「イオンだけ」をスムーズに移動させることにある。
- 歴史的には、ボルタ電池における希硫酸やダニエル電池における硫酸銅(Ⅱ)水溶液と硫酸亜鉛水溶液が電解質に相当する。これらのうち、ボルタ電池の希硫酸とダニエル電池の硫酸銅(Ⅱ)水溶液は正極活物質の役割も兼ねている。
- セパレーター
- 正極側と負極側の構成部材(活物質および集電体)が直接接触して短絡(ショート)することを物理的に防ぐための膜や障壁。
- 電池内部において、正極活物質と負極活物質が直接触れ合ったり、集電体同士が接触したりすると、電子が外部回路を通らずに直接流れてしまい、本来取り出せるはずの電気エネルギーが熱として無駄に消費されてしまう。セパレーターはこれを防ぎつつ、イオンだけを透過させる役割を担う。
- 材質には、電解液に浸されても腐食・溶解しない「化学的安定性」、薄くても電極の圧力で破れない「機械的強度」、そして確実に電子の流れを遮断する「高い電気絶縁性」が求められる。
- 現在、リチウムイオン二次電池などの高性能電池では、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂を延伸して微細な穴を開けた「微多孔膜」が広く利用されている。また、鉛蓄電池や一次電池(乾電池)などでは、繊維を絡ませた「不織布」やクラフト紙などが用いられることが多い。
- 歴史的には、ダニエル電池における「素焼きの容器」がこれに相当し、正極活物質(銅(Ⅱ)イオン)が拡散して負極活物質(亜鉛)と反応してしまうのを抑制する(自由な移動を妨げる)役割を果たしていた。なお、初期の電池であるボルタ電池にはセパレーターが存在せず、正極活物質(水素イオン)と負極活物質(亜鉛)が電解液中で直接接触していたため、使用していない間も活物質が化学反応によって消費されてしまう(自己放電[注釈 1])という欠点があった。
- 集電体
- 活物質と外部回路(端子)との間で、電子の授受(受け渡し)を行うための導電体。
- 「集電」という名称だが、単に電子を集めるだけではない。放電時、負極集電体は活物質から放出された電子を受け取って外部へ送り出し、正極集電体は外部から流れてきた電子を活物質へと供給する役割を担う。つまり、活物質そのものではなく、電子がスムーズに出入りするための「通り道」となる部材である。
- 材質には、高い導電性と、電圧がかかった状態でも溶解・腐食しない化学的安定性が求められる。一般的には銅、アルミニウム、ニッケルなどの金属が用いられるが、用途によっては炭素材料などが使われることもある。
- 構造としては、以下の二つのパターンがある。
- 活物質と兼用する場合:ダニエル電池やボルタ電池の負極(亜鉛板)のように、活物質である金属がそのまま集電体の役割を兼ねるもの。反応が進むと電極自体が溶けて痩せていく。
- 集電体に徹する場合:ボルタ電池の正極(銅板)が典型例である。学校の実験では「銅板から水素の泡が出る」と観察されるが、銅板自体は化学変化していない。反応している(電子を受け取っている)のは電解液中の「水素イオン(正極活物質)」であり、銅板は単に電子を渡す場所(集電体)として機能しているに過ぎない。ダニエル電池の銅板も同様で、集電体として機能しているに過ぎない。ダニエル電池の正極活物質は銅(Ⅱ)イオンである。また、リチウムイオン電池などのは集電体(銅箔やアルミ箔)の上に活物質が塗布された構造をとる。
- ケース
- 電解液の漏洩を防ぎ、電池の形状を保持する容器。
- アルカリ乾電池やリチウムイオン電池では、発電要素(電極や電解液)を収納する強固な「鉄製やアルミ製の缶」が別途用意されており、その中が化学反応の場となる。
- 一方、マンガン乾電池では、負極活物質である金属(亜鉛)がそのまま容器(亜鉛缶)を兼ねる構造が一般的である。
- この構造は、放電が進むと容器(亜鉛)が溶けて薄くなり、穴が開いて液漏れしやすいという欠点がある。また、亜鉛缶の側面はすべて「負極」であるため、裸の状態では外部ショートを起こして破裂する危険性もある。
- そのため現代の製品では、亜鉛缶の外側に「熱収縮チューブ」を被せて絶縁(ショート防止)を行い、さらにその外側を「金属ジャケット(外装缶)」で覆うことで、液漏れ防止と強度の確保を行っているものが多い。
標準電極電位
化学電池は2つの電極の活物質の電位差によって起電力が生じる[注釈 2]。各々の活物質はその物質の濃度や温度などで電極電位が変わるが、標準的な状態での電極電位はそれぞれ一定の値であることが知られている。標準的な状態での電極電位を下表で示す。標準的な状態とは25℃での活量1での値となる。活量が1とは、物質の濃度を示しており、固体と液体はそのまま全量、気体は1気圧であり、溶質はモル濃度が活量にあたる。濃度や温度による電極電位の変動量はネルンストの式によって算出できる[5]。
| 負極 | 電極電位(V) | 正極 | 電極電位(V) | |
|---|---|---|---|---|
| Li+/Li | -3.040 | Cu2+/Cu | 0.347 | |
| Zn2+/Zn | -0.763 | Fe3+/Fe2+ | 0.771 | |
| Cd2+/Cd | -0.403 | Br3-/Br- | 1.087 | |
| Pb2+/Pb | -0.126 | O2/H2O | 1.229 | |
| CdSO4/Pb | -0.355 | Ce4+/Se3+ | 1.61 | |
| H+/H2 | -0.000 | PbO2/PbSO4 | 1.685 | |
| H2SO3/CH3OH | 0.044 | MnO2/MnOOH | 0.15 | |
| ZnSO22-/Zn | -1.22 | Ag2O/Ag | 0.342 | |
| H2/OH- | -0.828 | O2/OH- | 0.342 | |
| Cd(OH)2/Cd | -0.825 | NiOOH/Ni(OH)2 | 0.49 |
化学電池の性能
電圧
電池に何も接続されていない状態での端子電圧が「起電力」であり、電池が外部の回路に接続されて電流が流れると起電力より端子電圧が低くなる。この現象が「分極」であり、低くなった分の電圧は「過電圧」と呼ばれる。過電圧は内部抵抗とも呼ばれ、流れる電流に応じて増大することで端子電圧は低下する。過電圧は以下の3つから構成される[注釈 3]。
- 過電圧
- 抵抗過電圧:イオンが電解質中を流れる時や電子が電極内を流れる時に生じる抵抗によるエネルギー
- 活性化過電圧:反応物質と電解液との間での電子移動のために消費されるエネルギー
- 濃度過電圧:反応物質が電極表面に移動するためや電極表面で生じた生成物質が電解液へ拡散するために消費されるエネルギー
電池の端子電圧は使用温度や接続先の抵抗値とそれによる電流値が不明であるため、仮に製造誤差などに起因する製品ごとのバラツキが無くても、厳密には起電力や過電圧は定まらないが、電池の使用環境を想定した上で目安として「公称電圧」を定めている。端子電圧は使用温度や流れる電流の他に、電池の残量によっても変化する。
- 主な電池の公称電圧
- 一次電池
- マンガン乾電池:1.5V
- アルカリマンガン乾電池:1.5V
- 酸化銀電池:1.55V
- 空気亜鉛電池:1.4V
- フッ化黒鉛リチウム一次電池:3V
- 塩化チオニルリチウム一次電池:3.6V
-
- 二次電池
- 鉛蓄電池:2.0V
- ニッケルカドミウム蓄電池:1.2V
- ニッケル水素蓄電池:1.2V
- 全固体電池 : 2.3V
- リチウムイオン蓄電池:3.7V
- コバルトチタンリチウム二次電池 : 3.0V
- 二次電池では一般に「充電電流」と「充電時間」が標準と急速のそれぞれに存在し、最大充電電圧も定められている。「最大充電電圧」を越えて充電しようとすると「過充電」となって電池が劣化したり最悪では破壊に至る危険性もある。
- 一次電池と二次電池では放電終止電圧も定められている。一般に「放電終止電圧」はその電圧に至った時点でそれ以上放電してはいけない電圧であり、放電終止電圧を越えてさらに放電状態を続ければ「過放電」となって電池が劣化したりする[5]。
容量
電池が供給可能な電力の総量をその電池の「容量」と呼ぶ。基本的に電池の容量は活物質の種類と量に従い、「1グラム当量の物質が析出するのに要する電気量は、物質の種類によらず一定(=ファラデー定数=約96,500 C/mol)である」というファラデーの電気分解の法則によって決まる。グラム当量とは、1mol分の質量、つまり原子量の数に等しい数値を、1つの原子あたり反応に関与する電子の量、つまり原子価で割った値を指す。マンガンの例では、原子量が約54.9であり、電池で用いられる場合には原子価は一般に2価であるので、54.9/2=27.45程度になる。同様に亜鉛では32.7ほどになる。これらのことから、マンガン27.45gや亜鉛32.7gを完全に電気分解すると約96,500クーロンの電荷が生じると計算される。
1クーロンとは、1秒間に1Aの電流が流れた時の電荷を指すため、96,500クーロンは1時間が3600秒にあたることから、これで割ると 26.8Aになる。電池内での化学反応は電気分解の逆であるが、電荷量は正負が反転する他は同様の計算が用いられ、このように活物質の種類と量に応じて容量の限界値が定まる。また、化学反応は常に理想的な状態下で全ての反応が行われるとは限らず、実際は反応せずに残る物質もあるなど計算上の能力と差異が生じる。電池の容量は、1時間で放電し使い切ってしまう場合を想定した電流量で表示されることが一般的であり、「Ah」や「mAh」という単位が用いられる。720mAhと表記されている電池なら、720mAの電流を1時間、360mAを2時間程度持続することが期待できる。
主な活物質の重量当りと体積当りの容量を以下に示す。一般に電池は軽量で容量も小さい方が望ましく、重量当りや体積当りの容量は電池の性能の指標として重要である。
エネルギー密度
電池のエネルギー密度には「重量エネルギー密度」と「体積エネルギー密度」の2つがある。 ここでのエネルギーは〔Wh〕や〔J〕で表現されることが多く、電池のエネルギー密度は一般に〔Wh/kg〕や〔Wh/L〕で表される。実際の電池のエネルギー密度は活物質以外の構成要素も含まれることもあり、活物質だけの計算値の20-40%程度の値になる。
放電特性
大電流放電特性
物理特性
重量・容積
その他
使用温度範囲、耐漏液性、保存性、サイクル寿命
物理電池
歴史
世界
- 紀元前250年頃 イラクでバグダッド電池が製作される(電池ではないとする説もある)[6]。
- 1749年 ベンジャミン・フランクリン、ライデン瓶を連結させた蓄電器を開発し、バッテリー(Battery)と名付ける。
- 1780年代 ルイージ・ガルヴァーニ(イタリア)、カエルの解剖体から起電力を得られることを発見(ガルヴァーニ電気)。
- 1794年 アレッサンドロ・ボルタ(イタリア)、ガルヴァーニの報告を基にボルタ電堆を発明。
- 1800年 ボルタがボルタ電堆を改良し、ボルタ電池を発明。最初の化学電池(ガルバニ電池)と呼ばれる。
- 1802年 物理学者ヨハン・ウィルヘルム・リッター(ドイツ)、小型一次電池を発明。
- 1812年 ジュゼッペ・ザンボーニ(イタリア)、ザンボニー電池を発明。
- 1836年 ジョン・フレデリック・ダニエル、ボルタ電池を改良したダニエル電池を発明。
- 1866年 ジョルジュ・ルクランシェ(フランス)、ルクランシェ電池を発明。乾電池(マンガン乾電池)の原型。
- 1887年 カール・ガスナー(ドイツ)、乾電池の特許を取得。
- 1899年 ヴァルデマル・ユングネル(スウェーデン)、ニッケル・カドミウム蓄電池を発明。
- 1900年 トーマス・エジソン(米国)、ニッケル・鉄蓄電池を発明。
- 1959年 エバレディ (Eveready)(米国)、アルカリ乾電池を開発。
- 1985年 ジョン・グッドイナフ(米国)、ラシド・ヤザミ(フランス)、吉野彰(日本)、リチウムイオン電池を発明。
- 2010年代以降 全固体電池の開発競争
日本
名称
- 一次電池と二次電池
- 一次電池 (primary cell) と二次電池 (secondary cell) の「一次」「二次」は電池の使用開始時における操作に由来する。すなわち、一次電池は電極構成材料を組み上げた時点で、両極間に起電力が発生するため、すぐに電池として利用することができる。しかしながら、二次電池は両極の構成材料の電位差が低く、外部から充電を行うことによって初めて使用可能な起電力を生じさせることが一般的である。電池が発明された当初は安定な直流電源を使用することが難しく、一次電池を用いて二次電池を充電していた。従って「すぐに使える電池=一次電池」に対して「充電してから使える電池=二次電池」となった。
- 電池
- 日本語の「電池」は「電気」の「池」であるが、必ずしも電気を蓄えていなくても「電池」という名称が使われている。
- 組電池
- 「パック電池」とも呼ばれ、単電池をニッケルのような金属板と熱収縮フィルムで固定したもの[9]。
