鮑のし

From Wikipedia, the free encyclopedia

鮑のし』(あわびのし)は、古典落語の演目[1]。別題として『生貝熨斗(のし)』(なまがいのし)、『生貝』(なまがい)、『鮑貝』(あわびがい)』、『祝いのし』(いわいのし)[2][3][注釈 1]。もとは上方落語の演目で、江戸落語に移入された[1]

主人公が祝儀アワビを持っていってしまったことで起こった騒動を描く。落ち(サゲ)の原話は米沢彦八1703年元禄16年)に出版した『軽口御前男』の第1巻11話「見立ての文字」[4]。「せむしなる人」が煙管で煙草を吸っていると、友人が「その姿はまるで杖突きの乃の字だ」と言ってからかい、その言葉に怒って煙管を小脇にかい込むと「それでは『及』という字だ」とさらにからかわれる、という内容である[要出典]

宇井無愁は、本演目や『赤子ほめ』『松竹梅』『高砂や』『胡椒のくやみ』『向こうづけ』などの演目について「市民生活に必要な最少限度の常識を教える『冠婚葬祭入門』だった」と評している[3]

あらすじ

※以下、東大落語会編『落語事典 増補』掲載の内容に準拠する[1]

知恵が少し足りず、貧乏な生活を送っている甚兵衛という男、地主の家の婚礼に魚を持っていけば返礼金がもらえるという妻の進言に従って、魚を買って持っていこうとする。ところが魚は高価だったため、魚屋からアワビを買わされて持参する。地主の家でアワビを差し出すときに妻の入れ知恵まで話してしまい、地主は「かみさんが持っていけと言ったのか? 磯のアワビの片思いという言葉もある、縁起でもない」と受け取りを拒否する。落胆した甚兵衛は帰路で鳶頭に会い、経緯を話すと鳶頭は「地主に、方々からの祝いの品に付いている熨斗(のし)をいちいちお返しなさるのかと聞いてみろ。返さないと返事するだろう。そしたら、のしだってアワビなのになぜ自分のアワビは受け取らないんだ、と言ったら、地主は受け取らない理由がないから、きっと余分に返礼をくれる」と教える。地主の家に引き返した甚兵衛が鳶頭の教えたとおりに話したところ、地主は甚兵衛に返礼を支払った。うまくやったと甚兵衛が喜んでいると地主は「のしの書き方の中で、平仮名の「の」ではなく乃を使ったものがあるが、あれはどういうわけだ」と話しかける。甚兵衛は「あれはアワビのじいさんです」と答えた。

バリエーション

上方落語版(『生貝のし』)では、落ち(サゲ)の部分は、「(のしを)目下へやる時、略してチョイチョイと書くしの字のし」の由来を主人公が質問され、主人公は答に困って「あれはアワビがぼやいてますのや」と言い、「アワビがぼやくか」と重ねて聞かれ「アワビやさかいにぼやくので、ほかの貝ならみな口開(あ)きます」と答える形になっている[1][3]。宇井無愁が紹介するあらすじでは、主人公(名前は明記されない)が祝いを届ける相手は「家主」で、江戸落語版の落ちである「杖つきのし」の由来はその前に主人公が答えている[3]

5代目古今亭志ん生は主人公がアワビを贈った相手(「大家」という設定)にのしの講釈をしているところで話を切り、落ちまで演じることはなかった[5]

2代目桂春団治は、冒頭で主人公が「あのー。向かいのねえハン。うちの嬶(かか)、あんたとこ来てまへんか」と女房を大声で探し歩いて逆に「あほ! 大きな声で『うちの嬶アー、嬶、嬶』て、我(わ)が嬶売りに歩いてんのか!」と叱られる。これは3代目桂春団治にも伝わっている。3代目春団治の演出ではふんどしのない甚兵衛が構わず尻をまくり、「いよっと。おら糞ったれめが、……ええ、ホンマむかつくなあ。腹が減ってるさかい、何も出えへんがな」と悔しがる。[要出典]

脚注

参考文献

Related Articles

Wikiwand AI