黄金のロバ
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内容
全11巻[4]。プロローグの後、物語が始まる[10]。主人公の青年ルキウスは、魔術師の妻がフクロウに変身するのを見て真似するが、薬の処方を間違えてロバに変身してしまう[3]。人間に戻れないまま、盗賊団やキュベレ信徒団に使役され、様々な経験をする[3]。最終的に、ローマでイシスの秘儀に参加し、人間に戻る[10]。
本作は脱線的な挿話が多い[11]。とくに、第4-6巻で盗賊団の老婆が語る[12]『クピドとプシュケ』[13](『アモルとプシュケ』とも呼ばれる[12]、擬人化された愛と心の物語)が著名である。
『黄金のロバ』は教養小説[14]、あるいは後世の『ペルシア人の手紙』『吾輩は猫である』と同様の社会観察小説とも言われる[15]。当時の退廃した社会の風刺や[4]、不倫・獣姦・虐殺などの描写も含まれる[7]。
成立
本作はアプレイウスの独創でなく、ギリシア語圏の複数の民間伝承・物語をラテン語で翻案したものである[1][10]。
人間がロバになる物語は、同時代のルキアノスのギリシア語著作『ルキオスまたはロバ』(ルキオスはルキウスのギリシア語読み)にも見られる[2]。また、後世のフォティオス『ビブリオテーケー』によれば、「パトライのルキオス」本人の著作に『変身物語』があったとされる[2]。このルキオスの著作が、アプレイウスとルキアノスそれぞれに影響を与えたと考えられる[16][2]。ルキオスの著作は民間伝承に由来するとも考えられる[2]。
『クピドとプシュケ』の物語は、前1世紀のメレアグロスの詩(『ギリシア詞華集』5.57等)や、ヘレニズム期の絵画・彫刻にも見られる[17]。
アプレイウスは、プラトンのプシュケ論や当時の魔術に通じた知識人でもあった[18]。具体的な成立時期は諸説あるが、自伝的要素があることから晩年に完成したと考えられる[19]。
伝来・影響
日本語訳
- 呉茂一・国原吉之助訳
- アプレイウス『愛とこゝろ : クピードとプシケエの物語』呉茂一訳、岩波文庫、1940年
- アプレイウス「黄金の驢馬」呉茂一訳 - 『世界文学全集』第2期第2巻、河出書房、1951年、NDLJP:1335658
- アプレイウス『黄金のろば』上・下、呉茂一・国原吉之助訳、岩波文庫、1956-1957年
- アプレイウス「黄金の驢馬」呉茂一訳 - 『世界文学大系』67巻、筑摩書房、1966年、NDLJP:1335671
- アプレイウス『黄金のロバ』呉茂一・国原吉之助訳、グーテンベルク21(電子書籍)、2012年
- アープレーイユス『黄金の驢馬』呉茂一・国原吉之助訳、岩波文庫、2013年、ISBN 978-4003570012
- アピュレイアス「キューピッドとサイキ」柳田泉訳 -『世界短篇小説大系 古代篇』近代社、1925年、NDLJP:979032/39
- アプレイウス『アモルとプシュケ』谷口勇訳、而立書房〈アモルとプシュケ叢書〉、1993年、ISBN 978-4880591667
- アプレウス「愛と心」戸沢姑射訳、勉強堂書店、1901年(谷口訳に併録)
参考文献
- 河盛好蔵 監修『ラルース世界文学事典』角川書店、1983年。ISBN 4040211006。
- 呉茂一『ギリシア神話』新潮社、1969年。ISBN 9784103071013。
- 呉茂一・国原吉之助「解説」『黄金の驢馬』岩波書店〈岩波文庫〉、2013年。ISBN 978-4003570012。
- 戸高和弘「解説『ルキオスまたはロバ』」『ルキアノス全集 4 偽預言者アレクサンドロス』京都大学学術出版会〈西洋古典叢書〉、2013年。ISBN 9784876982516。
- 日向太郎「古代ローマ2『黄金のろば』」『世界文学の古典を読む』〈放送大学教材〉2020年。ISBN 978-4595321887。
- 松原國師『西洋古典学事典』京都大学学術出版会、2010年。ISBN 9784876989256。


