ブロードコム
アメリカの通信インフラ向けの半導体製品、ソフトウェアなどを製造販売するファブレス企業
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ブロードコム(英語: Broadcom Inc.)は、半導体およびインフラストラクチャソフトウェアの設計・開発・供給を行うアメリカの企業である。本社はカリフォルニア州パロアルトに置く[1]。半導体事業では、データセンター向けのネットワーク半導体、Google の TPU をはじめとするカスタム AIアクセラレータ(ASIC)[2]、ブロードバンド・無線通信・ストレージ向けの半導体製品をファブレス方式で供給する。ソフトウェア事業では、2018年に買収した CAテクノロジーズ、2019年に買収したシマンテックの法人向け事業、2023年に買収した VMware を基盤として、プライベートクラウド基盤、メインフレーム用ソフトウェア、サイバーセキュリティ製品などを提供している[1]。
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| 種類 | 公開会社 |
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| 市場情報 | |
| 本社所在地 |
カリフォルニア州パロアルト Hillview Avenue 3421[1] |
| 設立 | 1961年(2016年2月1日までは「アバゴ・テクノロジー」、2018年4月4日までは「ブロードコム・リミテッド」) |
| 業種 | 半導体・エレクトロニクス製造、ソフトウェア |
| 事業内容 | データセンター向けネットワーク半導体、カスタム AIアクセラレータ、ブロードバンド・無線通信・ストレージ向け半導体、インフラストラクチャソフトウェア(VMware・シマンテック・CA) |
| 代表者 |
ホック・タン(Hock E. Tan、社長兼CEO) ヘンリ・サミュエリ(取締役会会長)[1] |
| 売上高 |
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| 営業利益 |
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| 純利益 |
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| 純資産 | 812億9200万ドル(2025年11月2日)[1] |
| 総資産 | 1710億9200万ドル(2025年11月2日)[1] |
| 従業員数 | 約33,000人(2025年11月2日)[1] |
| 決算期 | 10月31日に最も近い日曜日(52週または53週)[1] |
| 外部リンク |
www |
2025年度(2025年11月2日締め)の売上高は638億8700万ドルで、その約42%をインフラストラクチャソフトウェア部門が占める[1]。株式は NASDAQ に上場し(ティッカーシンボル AVGO)、2024年12月には時価総額が初めて1兆ドルを超えた[3]。
現在の法人の起源は、ヒューレット・パッカードとアジレント・テクノロジーの半導体部門から分かれたシンガポールの半導体企業アバゴ・テクノロジー(Avago Technologies)にある。ブロードコムは年次報告書で、自社の歴史を AT&T・ベル研究所、ルーセント・テクノロジー、ヒューレット・パッカードに起源を持つ60年以上のものと説明している[1]。アバゴは2016年2月1日に1991年創業の旧ブロードコム(Broadcom Corporation)の買収を完了し、両社は新設の持株会社ブロードコム・リミテッド(Broadcom Limited)の傘下に入った[4]。2018年には法人の本籍をシンガポールからアメリカのデラウェア州へ移している[5]。
事業の概要
ブロードコムは「半導体ソリューション」と「インフラストラクチャソフトウェア」の2つの報告セグメントを持つ。半導体ソリューション部門には全ての半導体製品と知的財産のライセンス事業が、インフラストラクチャソフトウェア部門にはプライベートクラウド、メインフレーム用ソフトウェア、サイバーセキュリティ、エンタープライズソフトウェアの各製品群とファイバーチャネル SAN 事業が含まれる[1]。会計年度は10月31日に最も近い日曜日に終わる52週または53週で、終了する暦年で呼ばれる[1]。
2023年11月の VMware 買収により、インフラストラクチャソフトウェア部門の売上高は2023年度の76億3700万ドルから2024年度には214億7800万ドルへ増加し、売上高全体に占める比率は約21%から約42%に上昇した[6]。2025年度は半導体ソリューション部門がカスタム AI アクセラレータと AI ネットワーク製品の需要で22%増、インフラストラクチャソフトウェア部門が VMware Cloud Foundation の需要で26%増となり、売上高全体は24%増加した[1]。
沿革
旧ブロードコム(Broadcom Corporation)
UCLAの教授だったヘンリ・サミュエリとその教え子ヘンリ・ニコラスが、1991年にカリフォルニア州ロサンゼルスで創業。1995年、本社を同州のアーバインに移転[8]。1998年、NASDAQに上場。世界各地の15カ国以上で事業を展開し、約1.1万人を雇用、2009年にフォーチュン500にランクインした。ブロードコムには、ARM CPU の命令セット設計で知られているソフィー・ウィルソンがいる。
旧ブロードコムの本社は2007年からカリフォルニア州アーバインのカリフォルニア大学アーバイン校キャンパス内の University Research Park に置かれていた。
アバゴ・テクノロジーによる買収と社名変更
2016年2月1日、ヒューレット・パッカード、アジレント・テクノロジーの半導体部門を起源とするAvago Technologies(アバゴ・テクノロジー)による旧ブロードコムの買収が完了した。アバゴと旧ブロードコムはともにシンガポール法人ブロードコム・リミテッド(Broadcom Limited)の傘下に入り、買収した側のアバゴが社名を「ブロードコム」に改めた形となった[4]。旧ブロードコムのティッカーシンボル「BRCM」は上場廃止となり、アバゴ・テクノロジーのティッカーシンボル「AVGO」が継続した[9]。2016年11月、通信機器製造のブロケード コミュニケーションズ システムズの買収を発表し[10]、2017年11月に完了した[11]。
クアルコム買収の試みと米国への本籍移転
2017年11月2日、ブロードコムの CEO ホック・タンはホワイトハウスでドナルド・トランプ大統領とともに、法人の本籍をシンガポールからアメリカへ戻す計画を発表した[3]。その直後の同月6日、ブロードコムはクアルコムの全株式を1株70ドル(現金60ドルとブロードコム株10ドル)で取得する提案を公表した。クアルコムが進めていた NXP セミコンダクターズの買収を織り込んだ試算で、純有利子負債250億ドルを含む取引規模は約1300億ドルとされた[12]。成立すればテクノロジー企業の買収として史上最大となる規模であった[3]。クアルコムはこれに応じず[3]、ブロードコムは2018年3月14日に買収提案を撤回した[13]。
本籍の移転は予定どおり進められた。2018年4月4日、シンガポール法人ブロードコム・リミテッドの全株式がデラウェア州法人 Broadcom Inc. の株式と1対1で交換され、Broadcom Inc. が上場親会社となって移転が完了した[5]。
ソフトウェア事業への進出
クアルコム買収の撤回後、ブロードコムはインフラストラクチャソフトウェア企業の買収を成長の手段とし、以後100億ドルを超える買収を3件完了させた[3]。2018年7月、メインフレーム用ソフトウェアなどを手がけるCAテクノロジーズを買収すると発表し[14]、同年11月5日に買収を完了した。総対価は約187億ドルであった[15]。
2019年8月にはシマンテックの法人向けセキュリティ事業を107億ドルで買収すると発表し[16]、同年11月4日に現金約107億ドルで買収を完了した[17]。買収した事業のうちサイバーセキュリティサービス部門は、2020年1月にアクセンチュアへ売却された[18]。
VMware の買収
買収の合意
2022年5月26日、ブロードコムは仮想化ソフトウェア最大手の VMware, Inc. との合併契約を締結した。VMware 株1株に対する対価は株主の選択により現金142.50ドルまたはブロードコム株0.25200株とされ、現金を選ぶ株式と株式を選ぶ株式がそれぞれ発行済株式の50%になるよう按分する仕組みが設けられた[19]。発表時の買収価格は約610億ドルで、ブロードコムはこれに加えて VMware の純有利子負債80億ドルを引き受けるものとされた[20]。契約締結と同時に、VMware の取締役会長マイケル・デルとその関係信託、および投資会社シルバーレイク系の株主(合計で発行済株式の約50.1%を保有)が、合併契約に賛成票を投じる議決権行使契約をブロードコムと結んだ。契約には VMware が一定期間他社からの買収提案を募ることができるゴーショップ条項が置かれたが、2022年7月5日の期限までに対抗提案は出なかった[21]。2022年7月11日、タンは VMware の従業員に向けた書簡で、買収完了後にブロードコムのソフトウェア部門(Broadcom Software Group)を VMware ブランドに改称し、既存のインフラ・セキュリティ関連ソフトウェアも VMware として提供する方針を示した[22]。VMware の臨時株主総会は同年11月4日に合併契約を承認した[23]。
各国での承認
本件は各国の競争当局による企業結合審査を経た。欧州委員会は2023年7月12日、条件付きで買収を承認した。条件はファイバーチャネル・ホストバスアダプタ市場における相互運用性の確保であり、ブロードコムは競合企業や新規参入者に対し、開発・認証に必要な相互運用性 API と技術サポートへのアクセスを自社と同時期に保証し、ドライバのソースコードを取消不能なオープンソースライセンスで提供することを約束した[24]。英国の競争・市場庁(CMA)は2023年8月21日に承認した[20]。両社は2023年10月30日、オーストラリア、ブラジル、カナダ、欧州連合、イスラエル、日本、南アフリカ、韓国、台湾、英国で企業結合の承認を得たと発表した[25]。中国の国家市場監督管理総局(SAMR)は2023年11月21日に条件付きで承認し[26]、これにより必要な承認が全て揃った[27]。
買収の完了
2023年11月22日、ブロードコムは VMware の買収を完了した[28]。VMware, Inc. はデラウェア州の有限責任会社 VMware LLC に組織変更されてブロードコムの間接完全子会社となり、ニューヨーク証券取引所における株式の取引は停止され上場廃止となった[29]。ブロードコムの年次報告書によれば、VMware の株主には現金307億8800万ドルとブロードコム株約5億4400万株(2024年7月の株式分割後の株数に換算。公正価値533億9800万ドル)が交付され、VMware のタームローンの返済や引き継いだ株式報酬などを含む取得対価の総額は862億9000万ドルであった。ブロードコムはあわせて VMware の無担保社債82億5000万ドルを引き継いだ[6]。買収完了に伴い VMware の CEO ラグー・ラグラムは退任し[30]、VMware は独立した企業としては消滅してブロードコムのソフトウェアブランドとなった[27]。買収後の VMware 事業については後述する。
AI 半導体事業の拡大
2020年代に入り、ハイパースケール事業者向けのカスタム AI アクセラレータがブロードコムの半導体事業の成長を主導するようになった[1]。CNBC の報道によれば、Google の テンソル・プロセッシング・ユニット(TPU)は初代からブロードコムとの協業で開発されており、ブロードコムは Meta の AI チップの設計も支援している。同報道に対し証券アナリストは、ブロードコムが入出力や SerDes、パッケージングなど演算部以外の設計を担っていると説明している[2]。2024年6月12日、ブロードコムは1株を10株とする株式分割を発表し、同年7月に実施した[31]。同年12月13日には決算発表を受けて株価が1日で24%上昇し、時価総額が初めて1兆ドルを超えた[3]。2025年度の半導体ソリューション部門の増収は、主にカスタム AI アクセラレータと AI ネットワーク製品の需要によるものであった[1]。2025年10月13日には OpenAI と、OpenAI が設計するカスタム AI アクセラレータ10ギガワット分を共同で開発・展開する提携を発表した。ラックの展開は2026年後半に始まり、2029年末までに完了する予定とされる[32]。
VMware 事業
買収完了後、ブロードコムは VMware の事業を再編した。組織の再編と人員削減、本社の移転、中核でない事業の売却、製品ラインアップの集約とライセンス体系の変更が進められた。
組織再編と人員削減
買収完了の直後、VMware の事業はブロードコム内の4つの事業部門、すなわち VMware Cloud Foundation(VCF)、Tanzu、Software-Defined Edge、Application Networking and Security に再編された[30]。買収完了の翌週には人員削減の届出が行われた。各州に提出された労働者調整・再訓練予告法(WARN 法)に基づく通知によれば、少なくとも2,837人が対象となり、うち1,267人はパロアルトの旧 VMware 本社の従業員であった[33][34]。タンは VMware が認めていた在宅勤務を廃止し、ブロードコムのオフィスから60マイル以内に住む従業員に出社を義務付けた[34]。買収前の従業員数はブロードコムが約20,000人(2023年10月)[7]、VMware が約38,300人と報じられていた[33]。買収後1年を経た2024年11月時点のブロードコムの従業員数は約37,000人[6]、2025年11月時点では約33,000人である[1]。この間の2024年7月には、後述のとおりエンドユーザーコンピューティング部門が売却されている[6]。
ブロードコムは2023年末までに本社をサンノゼから VMware の本社があったパロアルトへ移し[7]、現在はパロアルト市 Hillview Avenue に本社を置いている[1]。2025年10月には、旧 VMware 本社であったスタンフォード・リサーチ・パーク内の13棟、約110万平方フィートのキャンパスを売却したと報じられた。報道による売却額は約1億1500万ドルで、ブロードコムの本社は売却したキャンパスに隣接する建物に置かれているとされる[35]。
事業の売却と統合
ブロードコムは VMware の中核事業を、世界の大企業向けにオンプレミスのプライベートクラウド環境を構築することと位置づけ、中核でない資産の売却を進めた[6]。2024年2月26日、デスクトップ仮想化の Horizon と端末管理の Workspace ONE を擁するエンドユーザーコンピューティング(EUC)部門を投資会社 KKR へ売却する契約を発表し[36]、同年7月1日に売却を完了した。ブロードコムの四半期報告書によれば、契約時の売却額は運転資本の調整前で約38億ドルであった[37]。EUC 部門は年間経常収益15億ドル、顧客数26,000社の独立企業 Omnissa となった[38]。ブロードコムが受け取った現金対価は、運転資本の調整後で35億ドルであった[6]。VMware が2019年に買収した EDR 製品の Carbon Black は2024年3月、ブロードコムのシマンテック事業と統合されて新設の Enterprise Security Group に移された[39]。SD-WAN 製品の VeloCloud は2025年6月にアリスタネットワークスへ売却された[40]。
ライセンス体系の変更
2023年12月11日、ブロードコムは VMware 製品のポートフォリオとライセンスモデルを大幅に簡素化すると発表した。全ての製品をサブスクリプションライセンスに移行し、永久ライセンスの販売、永久ライセンス向けサポート契約(SnS)の更新、購入プログラムのクレジットを2024年2月4日以降順次終了するというもので、製品はエンタープライズ向けの VMware Cloud Foundation(VCF)と中小規模向けの VMware vSphere Foundation(VVF)を主力とする少数のサブスクリプション製品(小規模環境向けの vSphere Standard と vSphere Essentials Plus は存続)に集約され、多くの製品は単体では購入できなくなった[41][42]。ブロードコムは同時に、VCF のサブスクリプション定価を従来の半額に引き下げたと説明している[41]。課金の単位は従来の CPU ソケット数から物理 CPU のコア数に変わり、CPU 1個あたり最低16コア分のライセンスが必要とされた[43]。2025年4月10日からは、CRN が入手したディストリビューターの通知によれば、1注文あたりの最低購入コア数が16コアから72コアに引き上げられ、更新期限を過ぎた契約には初年度料金の20%相当の追加料金が課されることになった[44]。CPU 1個あたり最低16コアという算定ルール自体は維持されている[43]。
これらの変更に伴う費用について、BUSINESS NETWORK は調査会社ガートナーの分析として、利用企業が負担するコストが平均で2〜4倍、最大で12倍に増加したと報じている[45]。ブロードコム自身も年次報告書のリスク要因において、永久ライセンスからサブスクリプションへの移行と製品ポートフォリオの簡素化を VMware の顧客が受け入れない場合には、重要な顧客を失い業績に悪影響が及ぶ可能性があると記載している[6]。日本では、サイバートラストが2026年6月に公表した調査(VMware のサーバー仮想化基盤を利用し、過去2年以内に基盤の導入・移行・更新を検討または実施した情報システム部門の担当者109名が対象)で、93.6%がライセンスモデルの変更で費用負担が増えたと回答し、28.4%がすでに移行を進めていると回答した[46]。
業績
VMware の買収により、ブロードコムのインフラストラクチャソフトウェア部門の売上高は2023年度の76億3700万ドルから2024年度には214億7800万ドルへ増加した。2025年度は270億2900万ドル(前年度比26%増)で、ブロードコムは増収の主因を VCF の需要としている。同部門の営業利益は2024年度の139億7700万ドルから2025年度には207億6500万ドルへ増加した[6][1]。一方、2024年度は VMware 買収に伴う無形資産の償却費、従業員の退職費用を中心とする再編費用、買収資金の借入に係る支払利息の増加に加え、知的財産権のグループ内移転に伴う法人税費用の増加もあり、純利益は58億9500万ドルと前年度の140億8200万ドルから減少した[6]。2025年度の純利益は231億2600万ドルであった[1]。
日本
日本では買収完了後の2024年6月13日、ブロードコムが日本のインフラストラクチャソフトウェア事業の責任者に、同年6月末に退社する山中直の後任として山内光を任命したと発表した[47]。山内はブロードコムの日本法人であるヴイエムウェア株式会社のカントリーマネージャーを務めている[48]。2025年10月29日には日本電気(NEC)との戦略的パートナーシップの強化を発表し、NEC は自社の情報システムに VCF を導入するとともに、VCF をマネージドサービスとして販売するとした[48]。
製品

半導体製品は旧ブロードコム(Broadcom Corporation)とアバゴ・テクノロジーの製品群を引き継いだもので、コンピュータネットワークおよび通信ネットワーク全般をカバーする。企業/都市向け高速ネットワーク、SOHOネットワーク向け製品、イーサネット向けと無線LANの送受信ICとマイクロプロセッサ、ケーブルモデム、DSL、サーバ、ホームネットワーク機器(ルーター、スイッチなど)、携帯電話(GSM/GPRS/EDGE/W-CDMA)などである。高速暗号コプロセッサでも知られている。これは、暗号化や復号をプロセッサ以外で行うことで主プロセッサの負荷を低減させるチップであり、電子商取引やPGPあるいはGPGを使ったセキュアな通信で役立っている。
他に通信事業者向けのIC製品、セットトップボックスやデジタルビデオレコーダ用プロセッサ、Bluetooth送受信機、無線LAN送受信機、衛星放送対応TV用チューナーなども手がけている。主な顧客としてApple、ヒューレット・パッカード、モトローラ、IBM、デル、レノボ、リンクシス、ロジテック、任天堂、ノキア、ノーテル(アバイア)、シスコシステムズ、ティーボが挙げられる。2011年9月19日、デジタルTV用チップ部門を廃止した[49]。
NICとネットワーク
ブロードコムのNICは主要ベンダーのワークステーションやサーバ製品に採用されている。マザーボード上にイーサネットNICが組み込まれている場合でもマーケティング上ブロードコムの名を出していることが多い。例えば、デルのブレードスイッチ M610 には2つのギガビット NetXtreme 5709 NIC が組み込まれている[50]。
もう1つの大きな市場はスイッチ用ハードウェアである。ブロードコムのハードウェアとファームウェアに基づくスイッチング装置がいくつかのベンダーから出ており(例えば、デルの Powerconnect classics)、ブロードコムのハードウェア(Tridentチップセット)を採用しつつファームウェアを独自開発している場合もある(例えば、シスコの Nexus の NX-OS[51]やデルの Force10 の FTOS[52])。
消費者向けコンポーネント設計
ブロードコムはまた、有名なコンシューマデバイスの部品も多数供給している。
AMDとの関係
2001年2月14日、ブロードコムはAMDの開発したHyperTransportの協力企業となり、同年7月14日には HyperTransport Technology Consortium に加入。2004年6月、AMDとのチップセット分野での提携発表し、2005年4月20日に ServerWorks ブランドとしてAMD K8(Opteron)用チップセット「HT-2000」を発表、2006年8月15日には AMD K8 用チップセット HT-2100 を発表し、同年10月に量産出荷を開始した。
2008年8月25日、AMDよりデジタルテレビ事業を1億4150万ドル(当初発表では1億9280万ドル)で買収。パネルプロセッサ Xilleon の製造権を取得した。
インフラストラクチャソフトウェア
インフラストラクチャソフトウェア部門は、プライベートクラウド(VMware)、メインフレーム用ソフトウェア(旧 CA)、サイバーセキュリティ(シマンテック)、エンタープライズソフトウェアの各製品群と、ファイバーチャネル SAN 事業から構成される[1]。
VMware
中核製品の VMware Cloud Foundation(VCF)は、計算・ネットワーク・ストレージの仮想化と運用管理・セキュリティを統合したプライベートクラウド基盤で、Kubernetes を内蔵して仮想マシンとコンテナの両方を扱う[1]。2025年6月17日には VCF 9.0 が一般提供を開始した[53]。下位のエディションとして VMware vSphere Foundation(VVF)があり、サーバー仮想化の vSphere(ESXi と vCenter Server)、ソフトウェア定義ストレージの vSAN、ネットワーク仮想化の NSX などは主にこれらの製品の一部として提供される[42]。デスクトップ向けの仮想化ソフトウェア Workstation Pro と Fusion Pro は、2024年11月11日以降、商用・教育・個人のいずれの用途でも無償で提供されている[54]。
シマンテック
2019年11月に買収したSymantec の法人向け事業をシマンテックのブランドで展開しており、日本国内においてはエンドポイントセキュリティ製品や E メールセキュリティ、Web セキュリティゲートウェイを提供している。2024年3月には VMware から引き継いだ Carbon Black を統合し、Enterprise Security Group として運営している[39]。
メインフレーム・エンタープライズソフトウェア
2018年に買収した CA テクノロジーズを起源とするメインフレーム用ソフトウェアと、AIOps・自動化、データベース・データ管理などのエンタープライズソフトウェアを提供している[1]。
生産体制
ブロードコムはファブレス半導体企業として知られている。半導体素子の製造は全て以下のようなアジアのファウンドリに任せている。
- Taiwan Semiconductor Manufacturing Company (TSMC、台湾)
- GLOBALFOUNDRIES(旧:Chartered Semiconductor Manufacturing)(ドイツ、シンガポール)
- Semiconductor Manufacturing International Corporation (SMIC)(中国)
- Silterra Malaysia Sdn. Bhd.(マレーシア)
- United Microelectronics Corporation(UMC/臺灣、台湾)
機器組み立てなどは、以下の提携先に任せている。
- NEC
- ASAT Ltd(香港)
- ST Assembly Test Services(シンガポール)
- Siliconware Precision(臺灣)
- United Test and Assembly Center(シンガポール)
- ChipPac and Signetics(韓国)
ブロードコムの本社は2023年以降、カリフォルニア州パロアルトにある[7][1]。研究開発拠点は、ケンブリッジ(イギリス)、バンガロール及びハイデラバード(インド)、リッチモンド(カナダ、バンクーバー近郊)、マーカム(カナダ、トロント近郊)、 ソフィア・アンティポリス(フランス)などにある。
ブロードコムとオープンソース
ブロードコム製無線LANチップ向けのオープンソースのドライバがいくつかLinuxカーネルのソースツリーに含まれている[55]。Linuxカーネル 2.6.26 以降、ブロードコムチップのいくつかはカーネルでサポートされているが、ビルド時に外部ファームウェアを必要とする。
2003年、ブロードコムが同社の無線LANルーター用チップセットのドライバにGPLコードを使っていながらコードを公開しておらず、GNU General Public License に違反しているとして、フリーソフトウェア財団がブロードコムを非難した。そのチップセットはリンクシスが採用し、リンクシスは後にシスコに買収された。するとシスコは Linksys WRT54G シリーズ無線ブロードバンドルーターのファームウェアのソースコードを公開した[56][57]。
2002年、ブロードコムは独自のVoIPコーデックを開発し、2009年にLGPLライセンスでオープンソースとしてリリースした[58]。
- BroadVoice 16 - ビットレート 16 kbit/s、サンプリング周波数 8 kHz
- BroadVoice 32 - ビットレート 32 kbit/s、サンプリング周波数 16 kHz(ただし、X-Lite SIP フォンのメニューにはビットレート 80000 bit/s とある)
ストックオプション問題
2006年7月14日、旧ブロードコム(Broadcom Corporation)はストックオプションの処理の是正にかかった費用7億5000万ドルを追加計上することを発表した。2006年9月8日、その額は15億ドルに倍増。また、同社は追徴課税されることとなった[59]。2007年1月24日、1998年から2005年までの会計処理すべき金額は22億2000万ドルに増大した[60]。
2008年5月15日、証券取引委員会(SEC)への申し立てで名前を出された後、サミュエリは会長職を辞任し、CTOとして休職した。
2008年6月5日、共同創業者で元CEOのヘンリ・ニコラスと元CFOの William Ruehle は、ストックオプションの不正な日付改竄で起訴された。ニコラスは麻薬取締法違反でも起訴されている[61]。しかし2009年12月、検察官が弁護側証人3人の証言を不適切に妨げたとして、連邦判事コーマック・J・カーニーはストックオプションの日付改竄に関する告発を退けた[62]。
クアルコムとの裁判
2007年6月、旧ブロードコム(Broadcom Corporation)はサンディエゴに本社を置く半導体企業クアルコムが同社の特許を侵害したとして訴え、アメリカ国際貿易委員会はクアルコム製チップを搭載した携帯電話の輸入禁止を命じた。ブロードコムはこの問題を裁判でも訴えていたが、2009年4月26日、4年に及ぶ法廷闘争が終結した[63]。和解の条件として、クアルコムは2013年4月までにブロードコムに現金8億9100万ドルを支払うことになっている。
企業買収
ブロードコムは旧ブロードコムの時代から多数の企業を買収しており、それによって新市場にすばやく参入している[64]。2011年9月には NetLogic Microsystems を現金37億ドルで買収し、NetLogic 従業員の持つ自社株4億5000万ドル分はブロードコム株と交換した[65]。
2016年2月に Avago Technologies が旧ブロードコムを買収して現在のブロードコムとなった後は[4]、ブロケード コミュニケーションズ システムズ(2017年11月完了)[11]、CA テクノロジーズ(2018年11月完了)[15]、シマンテックの法人向け事業(2019年11月完了)[17]、VMware(2023年11月完了)[28]と、ソフトウェア企業を中心とする大型買収を重ねている。買収した事業のうち、シマンテックのサイバーセキュリティサービス部門(2020年、アクセンチュアへ)と VMware のエンドユーザーコンピューティング部門(2024年、KKR へ)は売却された[38]。
| 時期 | 企業名 | 買収額 | 専門技術 |
|---|---|---|---|
| 1999年1月 | Maverick Networks | 1億400万ドル(株式) | 企業ネットワーク向けマルチレイヤー・スイッチ |
| 1999年4月 | Epigram | 3億1600万ドル(株式) | 電話線を利用したHomePNA |
| 1999年6月 | Armedia Inc. | 6720万ドル(株式) | デジタル動画デコーダ[66] |
| 1999年8月 | HotHaus Technologies | 2億8000万ドル(株式) | VoIP用DSPソフトウェア |
| 1999年8月 | Altocom | 1億8000万ドル(株式) | ソフトモデム |
| 2000年1月 | BlueSteel Networks | 1億2300万ドル(株式) | セキュリティ・プロセッサ |
| 2000年3月 | Digital Furnace Corp | 1億3600万ドル(株式) | データ圧縮ソフトウェア |
| 2000年3月 | Stellar Semiconductor | 1億6200万ドル(株式) | 3Dグラフィックス・プロセッサ |
| 2000年6月 | Pivotal Technologies | 2億4200万ドル(株式) | デジタル動画チップ |
| 2000年7月 | Innovent Systems | 5億ドル(株式) | Bluetooth通信機 |
| 2000年8月 | Puyallup Integrated Circuit Company | IC設計とICマクロブロック | |
| 2000年7月 | Altima Communications | 5億3300万ドル(株式) | ネットワークチップ |
| 2000年10月 | Newport Communications | 12億4000万ドル(株式) | 10Gbitイーサネット通信機 |
| 2000年10月 | Silicon Spice | 10億ドル(株式) | VoIP用DSPチップ |
| 2000年11月 | Element 14 | 5億9400万ドル(株式) | DSLチップセット |
| 2000年12月 | Allayer Communications | 2億7100万ドル(株式) | 企業向けおよび光ネットワークチップ |
| 2000年12月 | Sibyte | 20億ドル(株式) | ブローバンド向けマイクロプロセッサ |
| 2001年1月 | VisionTech, Ltd. | 7億7700万ドル(株式) | MPEG-2圧縮・伸張 |
| 2001年1月 | ServerWorks Corp. | 10億300万ドル(株式) | サーバ/ワークステーション用I/Oコントローラ |
| 2001年7月 | PortaTec Corporation | 携帯用デバイス | |
| 2001年7月 | Kimalink | 無線/携帯用チップ | |
| 2002年5月 | Mobilink Telecom, Inc. | 560万ドル(株式) | 携帯電話向けベースバンドプロセッサ |
| 2003年3月 | Gadzoox Networks | 580万ドル(現金) | SAN |
| 2004年1月 | RAIDCore, Inc. | 1650万ドル(現金) | RAIDソフトウェア |
| 2004年4月 | M-Stream Inc. | 870万ドル(現金)と27000株 | 無線受信の改良技術 |
| 2004年4月 | Sand Video, Inc. | 7750万ドル(株式)と740万ドル(現金) | 動画圧縮技術 |
| 2004年4月 | WIDCOMM, Inc. | 4900万ドル(現金) | Bluetooth 関連ソフトウェア |
| 2004年4月 | Zyray Wireless, Inc. | 9600万ドル(株式) | WCDMA向けベースバンドプロセッサ |
| 2004年9月 | Alphamosaic, Ltd. | 1億2300万ドル(株式) | モバイルサービス向けビデオプロセッサ |
| 2005年2月 | Alliant Networks, Inc. | 携帯電話網ゲートウェイ | |
| 2005年3月 | Zeevo, Inc. | 2640万ドル(現金)と260万ドル(株式) | Bluetoothヘッドセット |
| 2005年7月 | Siliquent Technologies, Inc. | 7600万ドル(現金) | 10Gbitイーサネットのコントローラ |
| 2005年10月 | Athena Semiconductors, Inc. | 2160万ドル(現金) | デジタルTVチューナーとWifi |
| 2006年1月 | Sandburst Corporation | 7500万ドル(現金)と500万ドル(株式) | イーサネット・パケット交換用SOCチップ |
| 2006年11月 | LVL7 Systems, Inc. | 6200万ドル(現金) | ネットワーク・ソフトウェア |
| 2007年5月 | Octalica, Inc. | 3100万ドル(現金) | MoCA(同軸ケーブルによるホームネットワーク) |
| 2007年6月 | Global Locate, Inc. | 1億4600万ドル(現金) | GPSチップとソフトウェア |
| 2008年3月 | Sunext Design, Inc. | 4800万ドル(現金) | 光ディスクドライブ |
| 2008年8月 | AMD DTVプロセッサ部門 | 1億4150万ドル(現金、当初の提示額は1億9280万ドル)[67] | Xilleon DTVプロセッサチップとソフトウェア、およびそれを利用したTVチューナー |
| 2009年12月 | Dune Networks[68] | 1億7800万ドル(現金) | 高速ネットワークスイッチ |
| 2010年2月 | Teknovus[69] | 1億2300万ドル(現金) | イーサネットPON (EPON) 用チップセットとソフトウェア |
| 2010年6月 | Innovision Research & Technology plc[70] | 4750万ドル(現金) | 近距離無線通信とIP |
| 2010年10月 | Beceem Communications[71] | 3億1600万ドル(現金) | 4G LTE/WiMax |
| 2010年11月 | Gigle Networks [72] | 7500万ドル(現金) | 家庭用マルチメディアネットワーク |
| 2011年4月 | Provigent Ltd.[73] | 3億1300万ドル(現金) | マイクロ波バックホール |
| 2011年5月 | SC Square Ltd.[74] | 4190万ドル(現金) | イスラエルのセキュリティソフトウェア企業 |
| 2011年9月 | NetLogic Microsystems | 37億ドル | 次世代インターネット向けネットワーク製品 |
| 2017年11月 | Brocade Communications Systems[11] | 59億ドル[75] | ファイバーチャネル・スイッチ製品群のベンダー |
| 2018年11月 | CA Technologies[15] | 約187億ドル[15] | メインフレーム・エンタープライズソフトウェア |
| 2019年11月 | Symantec 法人向けセキュリティ事業[17] | 約107億ドル(現金)[17] | エンタープライズセキュリティ |
| 2023年11月(発表は2022年5月) | VMware, Inc.[28] | 総額862億9000万ドル(現金307億8800万ドル・株式533億9800万ドルほか。発表時は約610億ドル)[6][20] | 仮想化・プライベートクラウド基盤ソフトウェア |