アメンボ
半翅目アメンボ科に属する昆虫の総称
From Wikipedia, the free encyclopedia
アメンボ(水黽、水馬、飴坊、飴棒、水虫[2])は、昆虫綱半翅目アメンボ科の総称である[3][4][5]。
| アメンボ | |||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 分類 | |||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||
| 学名 | |||||||||||||||||||||||||||
| Gerridae Leach, 1851 | |||||||||||||||||||||||||||
| 和名 | |||||||||||||||||||||||||||
| アメンボ | |||||||||||||||||||||||||||
| 英名 | |||||||||||||||||||||||||||
| water striders | |||||||||||||||||||||||||||
| 亜科[1] | |||||||||||||||||||||||||||
|

名称
語源
本来の意味は「飴棒」で、「飴」は、臭腺から発する飴のような臭い、「棒」は体が細長いことから[6]。「雨」と関連付けるのは民間語源である[7]。
別名
アメンボの別名として、ミズグモ(水蜘蛛)[8]、カワグモ(川蜘蛛)[3][9][8]、スイバ(水馬)[10]、ミズスマシ(水澄・水馬)[11]、チョウマ(跳馬、江戸時代の江戸の方言)[7]、アシタカ[8]などがある。ただし、現代の標準和名では、ミズグモは水生のクモの1種、ミズスマシは水生甲虫の一群を意味する。
なお、「アメンボ」は、アメンボ科の1種 Aquarius paludum(旧 Gerris paludum)別名ナミアメンボの和名でもある[4][12][6]。
和名に「アメンボ」を含む種はアメンボ科の他に、同じアメンボ下目のカタビロアメンボ科 Veliidae ・サンゴアメンボ科 Hermatobatidae イトアメンボ科 Hydrometridae に広がる。さらに同下目で同様に水生のミズカメムシ科 Mesoveliidae とケシミズカメムシ科 Hebridae を加えた6科をアメンボ類と総称する[12]。
特徴
形態
水面で活動するカメムシ目としては最大で、体長は3mmから26mm[13]。
中脚と後脚が非常に長く[3]、特に中脚は体長を著しく超えるほど[13]。前脚は短い。脚の付け根は、中脚と後脚は接しているが、前脚は離れている[4]。脚先には短い毛が密生しており、これらによって水面にうかんで浮かんでいる。
多くは細長い棒状[3]の体型を持つが、海生のウミアメンボ亜科は卵型[4]。なお、同じ海生でも Trepobatinae 亜科の Stenobates は棒状である。
生態
ほとんどは淡水生だが、例外が少数ある。ウミアメンボ亜科 Halobatini 族と Trepobatinae 亜科 Stenobatini 族は海生、Eotrechinae 亜科は湿岩生および陸生である[14]。
足先の毛だけを水面につけて、毛が水を撥く表面張力を利用して水面に浮かぶ。脚の先端部からは油を分泌している[15]。表面張力は、雌が雄を背に乗せても沈まない程度に強い[13]。
中脚の運動で推進し、後脚で方向を定めて、水面を滑走する[3]。全て肉食で、水面に獲物となる小動物や死骸が落ちると、すばやく接近して前脚で捕獲し、針のように尖った口器を突き刺して消化液を注ぎ込み、溶けて液状になった体組織を吸汁する(体外消化)。
一部のアメンボには前脚の受容器によって水面に落ちた昆虫類を波で察知する能力がある[15]。また、波をなわばり、餌の防衛、求愛行動、個体間の距離の維持などコミュニケーションに利用している[15]。
分類と系統
種数
アメンボ科は、8亜科60属約500種[16]、または72属640種[17]、または約710種[18]、または約1000種[3]に分かれるといわれる。
亜科の系統
アメンボ科の8亜科と近縁なグループの系統関係は下図のとおり[18][14]。なお、アメンボ科の8亜科のうち、「*」をつけたアメンボ亜科と Cylindrostethinae はおそらく単系統ではない[18][14]。
| アメンボ下目 |
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アメンボ科に最も近縁な科はカタビロアメンボ科 Veliidae だが、この科はアメンボ科の姉妹群ではなく、アメンボ科を内包する側系統である(図の「V+G」からアメンボ科を除いた、グレイ部分)。そのため、カタビロアメンボ科はいくつかの単系統の科に分割されるか、(特に、アメンボ科に近縁なケシカタビロアメンボ亜科 Microveliinae とケシウミアメンボ亜科 Haloveliinae は)アメンボ科に統合される必要がある[18]。
アメンボ科・カタビロアメンボ科・サンゴアメンボ科はアメンボ上科 Gerroidea 、イトアメンボ科・Macroveliidae・Paraphrynoveliidae はイトアメンボ上科 Hydrometroidea に分類されるが、それら2上科は単系統ではない。なお残りの2科はそれぞれ単型上科をなす。
属の系統
アメンボ亜科 Gerrinae と Eotrechinae の属の系統関係は、下図のとおりである[14](図で「n.d.」を付した属はこの研究では解析されておらず、別の古い研究[14][19]による)。マイナーな属 Macrogerris と Gerriselloides は Gerris に、Limnogonus は Limnogonoides に含めている。「*」を付した属は非単系統のようだが、単系統ごとに分けず、大まかな位置のみ示した。
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アメンボ亜科は単系統ではなく、2つの系統に分かれた多系統である。アメンボ亜科は2つの族 Gerrini と Tachygerrini に分けられてきた(新熱帯区固有の Tachygerris と Eurygerris が Tachygerrini、他は全て Gerrini)が、それらも多系統である。
主な種
アメンボ亜科
- アメンボ(ナミアメンボ) Aquarius paludum
- 日本の北海道からトカラ列島[20]を含む旧北区広域(ヨーロッパから東アジア)[21]。体長11–16mm[3][4][6]。体は黒色、ときに褐色をおびる[4]。湖沼・河川で最も普通に見られる[3][4]。 奄美大島から西表島には近縁種のアマミアメンボ A. p. amamiensis が生息する。
- オオアメンボ Aquarius elongatus
- 本州から九州[6]、隠岐[22]、対馬、台湾、済州島、中国南部[13]。体長19–27mm[6]で、日本で最大のアメンボ[6]。
- ヒメアメンボ Gerris latiabdominis
- 北海道から九州[6]。体長8–10mm[6]で、アメンボ(ナミアメンボ)よりひとまわり小さい。
- コセアカアメンボ Gerris gracilicornis
- 本州から南西諸島[6]。体長10.5–14.5mm[6]。背中が褐色[6]。
- エサキアメンボ Limnoporus esakii
- 北海道から九州、対馬、中国、朝鮮半島。体長8–10mm。