ゲルブ以前にも言語学者による文字の研究が何世紀にもわたって積み重ねられてきたが、文字の研究を科学的に行ったのはゲルブが最初であると考えられている。文字の研究をグラマトロジーという用語で呼んだのも彼が最初である。1952年に出版された著書A Study of Writingの中でゲルブは、文字体系は表語文字から音節文字を経てアルファベットに至る、という具合に、直線的に進化すると唱えた。このような歴史的な類型論に対しては、単純化が過ぎる、データをモデルに強引に適合させ、例外を無視しているのではないか、という批判がなされてきた。近年、文字の類型についてはピーター・ダニエルズらによって進展をみているが、異なる文字のどうしの特性の違いに関するゲルブの厳密な研究は先駆的で革新的であったと評価されている。ゲルブはマヤ文字に言語を記述する能力がないと考えていたが、現在ではマヤ文書の解読によってそうではないことが証明されている。