ゴーン (U2の曲)
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『ゴーン』(Gone)は、アイルランドのロックバンド、U2が1997年に発表した第9作目のスタジオ・アルバム『ポップ』の7曲目に収録されている楽曲。
シングル・カットこそされなかったものの、ジ・エッジによるノイジーで鋭いギター・カッティングと、分厚いエレクトロニック・シーケンスが融合した本作屈指の強力なロック・チューンであり、ファンの間でも非常に人気が高い楽曲である。歌詞においてボノは、ロック・スターとしての名声や享楽的なライフスタイルの誘惑と、それに身を任せきれない自分たちの生真面目な本質との間の葛藤を描いている。
本作に伴うポップマート・ツアーや、次作のエレヴェイション・ツアーでも頻繁に演奏され、ライブではエッジによる新しいギター・パートが追加されるなど、ステージ上でよりダイナミックなロック・ソングへと進化を遂げた。
また、2002年にリリースされたベスト・アルバム『ザ・ベスト・オブU2 1990-2000』には、エレクトロ要素を減らしてよりストレートなバンド・サウンドに再構築された「ニュー・ミックス(New Mix)」バージョンが収録されている。
解説
でも、それはその日に僕が感じていたことなんだ。僕が言いたかったのは、『これは本当に素晴らしかった。僕はそのすべてを愛していた。くだらないことさえも楽しんでいた。だから、それさえも失うことができる』ということだった。
ボノによれば、曲の当初の発想は、U2の成功を「売れた」として批判し、インディー・バンドであることを道徳的に優れているかのように考える人々への反発だった。ボノは「僕たちは、世界で最も大きなバンドの一つになりたいと、ずっと思っていた」と語っており、「ゴーン」は、成功したことに罪悪感を抱かせようとする人々に対する、いわば「中指を立てる」ような曲として書き始められた[2]。
しかし、制作過程で曲の意味は次第に変化していった。ギャヴィン・フライデーによれば、「ゴーン」はハードロック、パンク、再びハードロックと、さまざまなスタイルを経ながら形を変えていった。さらに、レコーディング中にバンドの旧友であり、『ホットプレス』誌のライターとして初期からU2を支えたビル・グレアムが死去したことが、曲に大きな影響を与えた。当初の「成功を批判する者への反発」という性格は薄れ、成功そのものの表面的な性質と、それがいかにはかないものであるかを見つめる曲へと変わっていった[2]。
『U2 BY U2』の中では、ボノはこの曲について、ロック・スターとしての若者の姿を描いたものだと説明している。そこでは、あらゆる責任から自分を切り離し、名声という波に乗り、華やかな「光のスーツ」を身にまとって楽しもうとする人物が描かれる。「名前を変えるのもいいさ、必要なことだ。置いてきたものなんて、どうせ惜しくはない」と歌うように、自分自身の過去や責任さえも捨て去ろうとする姿である。しかしボノは、『ポップ』というアルバムが最終的に示しているのは、「どうしても置いていけないものがある(some things you can't leave behind)」ということだと語っている。彼は自分たちU2を「ダンスが踊れない大学教授」のようなものにたとえ、心の奥底では、自分たちは望んでいたほど浅薄にはなれなかったのだと振り返っている[3]。
歌詞に漂う死の気配も、この曲の性格を形作っている。「日に日に君に近づいている(Closer to you every day)」「そもそも、僕はそれをそれほど欲しがっていたわけじゃない(I didn't want it that much anyway)」というフレーズには、賛美歌「主よ御許に近づかん(Nearer My God to Thee)」を思わせる響きがあり、成功から距離を置こうとする主人公の姿と、死への接近が重ね合わされている。ボノ自身も、曲のブリッジについて「これが僕が歌う最後の曲になるような気がした」と語っており、「ゴーン」は単なる成功への反発ではなく、名声、アイデンティティ、喪失、そして死をめぐる内省的な楽曲へと変化していった[2]。
ニュー・ミックス
2002年に発表されたベスト・アルバム『ザ・ベスト・オブU2 1990-2000』には、本曲の新録音版「Gone (New Mix)」が収録された。
エッジはアルバム収録盤について、個人的に大きな期待を寄せていたとしながらも、いつもアコースティック・ギターで弾いたときのほうが、なぜか良く聴こえたと振り返っている。ライブでは、1997年のポップマート・ツアーを通じて曲のアレンジがさらに変化し、ツアー中盤になるとバンドはようやくショー全体をどう機能させるかを理解し、多くの楽曲のアレンジをやり直したという。「ゴーン」にも新しいギター・パートが加えられ、スタジオ・バージョンとは異なるライブ・アレンジへと発展していった[3]。ベスト・アルバムへの収録に際しては、その経験を生かしたバージョンを制作することになった[4]。
ニューミックスでは、エッジがギター・パートの一部を新たに録音し、ラリーが本曲の最初のレコーディング時に録音したドラム・トラックを使用した。このドラムは録音時の2テイク目で、マイク・ヘッジズがテープから発見したものだった。エッジは、この新しいギターとオリジナルのドラム演奏を組み合わせることで、初期録音時の演奏が持っていたエネルギーと、ツアーを通じて得られたアレンジ上の知見を同時に生かすことができたと説明している[4]。