ジョルダン曲線定理
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定理
歴史
ジョルダン曲線定理の内容は直観的には明らかなことのように思われるが、実際に証明をするのは非常に困難なものであった。ベルナルド・ボルツァーノにより証明の先鞭が付けられてから、定理名の由来ともなるカミーユ・ジョルダンにより1887年に最初の証明が出版された[1][2]。しかしこの証明には瑕疵があると見做され、最終的に完全な証明はオズワルド・ヴェブレンの手によって1905年に与えられたとされる[3]。ただしこの定理の最初の証明者については議論がある[4]。
証明
閉曲線定理には、ブラウアーの不動点定理を巧みに用いた証明[6]、コンパクト性(または超準解析)を用いて単純閉多角形の場合に帰着する証明[7][8]、ホモロジー群を用いた証明など、多くの別証明が与えられている。(また単純閉曲線が区分的に滑らかな場合に限れば、回転数を用いた、より易しい証明が知られている[9]。)
ここではホモロジー群を用いた証明を述べる。このホモロジー群に基づく証明の利点は、後述の高次元版への拡張の証明へと容易に一般化できることにある。
ステップ1. 球面上の閉曲線定理への帰着
を単純閉曲線とする。これは単射な連続写像 と同一視できる。これと一点コンパクト化 との合成写像 を考えることで、以下を証明することに帰着される。
定理. を埋め込みとする。このとき はちょうど2つの連結成分からなる。さらに はそれぞれの連結成分の境界をなす。
ここで、一点コンパクト化における無限遠点を含む連結成分が平面における非有界な連結成分に対応し、もう一方の連結成分が平面における有界な連結成分に対応する。
ステップ2. 弧状連結成分の場合への帰着
次の補題を証明する:
の任意の弧状連結成分が開集合であることを示せばよい。何故なら、 の弧状連結成分 に対し、補集合 はその他の弧状連結成分の和集合ゆえに開集合と分かり、したがって の連結性より が従うからである。
いま を の弧状連結成分とする。点 を任意に取る。 は開集合だから、ある が存在して である。すると と円板 内の点は 内の測地線(当然連続曲線でもある)により結ばれるから、同じ弧状連結成分に属する。つまり である。点 は任意だったから は開集合である。(補題の証明終)
球面上の閉曲線定理の主張において、 は連続、 はコンパクト空間、 はハウスドルフ空間だから、像 はコンパクトである。さらにハイネ・ボレルの被覆定理より は閉集合である。したがって補集合 は において開集合となる。
ここで を のひとつの連結成分とする。これは において開集合である。このことと前段の結果から は においても開集合であることが分かる。補題より は弧状連結である。
このことから において連結成分であることと弧状連結成分であることとは同値となる。よって以下を示せばよい。
定理. を球面上の単純閉曲線とする。このとき はちょうど2つの弧状連結成分からなる。さらに はそれぞれの弧状連結成分の境界をなす。
ステップ3. ホモロジー群の計算への帰着
ホモロジー群の言葉を用いれば、閉曲線定理の定理の前半部分の主張は以下と同値である。ここで は被約特異ホモロジーである。
これは次の定理の特別な場合として得られる。ただし は k-次元円板を表す。
定理. 任意の について以下が成立する:
- 任意の埋め込み に対して が成り立つ。
- 任意の埋め込み () に対して かつ () が成り立つ。
ステップ4. ホモロジー群の計算
に関する帰納法により証明する。各ステップは、マイヤー・ヴィートリス完全系列を用いて、それより前のステップの場合に帰着することにより証明される[10]。
k = 0 の場合
まず(1)を示す。埋め込み について、 は n-球面から一点を取り除いた空間であり、これは と同相である。したがって被約ホモロジーは全ての次元で消える。
次に(2)を示す。埋め込み について、 は n-球面から2点を取り除いた空間であり、これは と同相である。よって
であり、右辺は次元 で となり、それ以外の次元は消える。
k > 0 の場合
まず(1)を示す。k-球体と k-超立方体の同相 が存在するから、埋め込み に対して証明すればよい。マイヤー・ヴィートリス完全系列を考えるために を以下の2つの空間の共通部分として表す:
これらの和集合は
であり、 だから、帰納法の仮定により
となる。よって のマイヤー・ビエトリス完全系列は
となっており、完全性より
この左辺のホモロジーが消えないと仮定して矛盾を導こう。仮定より は非自明なホモロジー類 を持つ。前述の写像が同型である(よってホモロジー類 は非ゼロ元に写される)ことから、 は または の少なくとも一方においても非自明なホモロジー類となっている。一般性を失うことなく において非自明であると仮定してよい。次に を
の共通部分で表し、同様の議論を続けることができる。すると、長さが半々に減っていく閉区間列
であって、全ての に対して
- in
であるようなものが構成できる。この区間は一点に収束する。つまり となるから、帰納法の仮定により
である。したがって は における特異鎖の境界となっている。ところがこの特異鎖は実際には十分大きな における の特異鎖でもあることが分かる(特異単体の像のコンパクト性及び鎖の有限性から従う)から、 はある において消える。これは矛盾である。
以上により次が示された:
あとは(2)を示せばよい。これは、埋め込み において、定義域 を(赤道を含む)北半球と南半球に分割し、マイヤー・ビエトリス完全系列を考えることによって、(1)に帰着される。
拡張
ジョルダン曲線定理には以下のような高次元への拡張版が存在する。
X を n 次元球面 Sn から n + 1 次元ユークリッド空間 Rn + 1 への単射連続写像とする。このとき、X の像の補集合は二つの互いに素な連結成分からなり、二つの連結成分の一方は有界(内部)で他方は非有界(外部)で、X は両成分の共通の境界である。
平面の場合と同様の議論により、n-球面のn+1-球面への埋め込みに関するホモロジー計算に帰着でき、前述のホモロジーの計算結果(2)により証明できる。
ジョルダン曲線定理にはジョルダン=シェーンフリースの定理 (Jordan-Schönflies theorem) と呼ばれる一般化も存在する。これは、平面上のいかなるジョルダン曲線も平面上の同相写像に拡張可能であるというものである。これはジョルダン曲線定理よりも非常に強い内容である。この定理の高次元版は偽であり、よく知られた反例としてアレクサンダーの角付き球面がある。角付き球面の補集合の非有界成分は単連結ではなく、そのため角球面の写像を R3 の全体にまで拡張することはできない。
