ビストロ・クロニーク
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人気作家、織部章太郎は毎年記念日になると、フレンチレストラン「ビストロ・クロニーク」を訪れる事にしていた。自分の書いた文章が初めて載った大手小説雑誌の発売日、それが織部にとっての記念日だった。その記念日に織部を連れて来たのは当時の担当編集者だった島森薫。作家としては右も左も分からなかった織部を指導し一人前の作家へと育ててくれた、織部にとっての恩人であった。だが織部の進む道が作家としての軌道に乗り始めた頃、突然、薫は出版社を辞め行方知れずになった。 薫に密かな恋心を抱いていた織部は薫の事が忘れられず、以来毎年記念日にはわざわざ今は使われなくなった古い席に2人分の席を予約しては訪れていた。薫が現れるのではないかという期待を込めて。だが薫が現れる事は無いまま何年もの時が過ぎて行った。
今年も記念日が来て織部はビストロ・クロニークを訪れていた。最新作「人形使いの夏」もベストセラーとなり映画化も決まってはいたものの織部の顔は浮かない。映画会社やスポンサーの意向でメインヒロイン島原佳苗を演ずるのがアイドル加野まみなに決まったからだ。実は「人形使いの夏」は島森との思い出を元にした作品であり、織部にとって大切なヒロインを演技力のないアイドルが演じる事が許せず、原作者権限でもっと演技力のある役者への変更を申し入れていた。
こうして今年の記念日も一人、思い出の席で薫を待つ織部。だが織部の前には予期せぬ客ばかりが現れる。織部に気があるそぶりを見せ、親密になろうするアパレル会社社長夫人でタレントの万田みち。万田の浮気相手が織部ではないかと疑いレストランに潜り込んだ万田の夫、花山。何故か薫との思い出の曲をピアノで演奏できるちょっと変わった女性、篠崎瑠衣。そして織部が降板させようとしていた加野まみなも織部を追いかけて店に現れる。加野は織部から配役の件をたてに性的交渉を迫られた結果妊娠してしまった告白、騒然となる一同。身に覚えがないと抗弁する織部は気の短いシェフ、陳に頭を叩かれ昏倒する。やがて織部の意識は過去の記憶、あるいは選ばれる事がなかった織部の人生へと漂い出す….