メルニボネ

From Wikipedia, the free encyclopedia

メルニボネ(Melniboné)は、マイケル・ムアコックの小説に登場する架空の国家である。〈永遠の戦士〉の化身の一人であるメルニボネのエルリックの故郷で、〈竜の島〉メルニボネと呼びならわされている。

メルニボネは1万年の間、魔術と武力によって世界を支配し続けていた。しかしエルリックが生まれた頃には、すでにその覇権は衰え、数多くの国家の一つにすぎなくなっていた。メルニボネの人民であるメルニボネ人は人類ではなく、いわゆるエルフによく似ている。魔術に長け、美貌を誇るが、その心理は気まぐれであり猫に似ている。彼らは数多くのいにしえの慣習にしばられている。

メルニボネの首都であり、唯一存続している都市が〈夢見る都〉イムルイルである。島の他の地域はエルリックの時代には原野に返っていた。島の地下には洞窟があり、そこで竜が眠りについて、戦争に駆り出されるのを待ち続けている。

イムルイル

メルニボネ島のほんのわずかな部分しか、作中では描写されていない。エルリックの時代の退廃したメルニボネ人は、世界への興味を失っていた。数を減らし続けている住民たちは、この唯一残った都市からめったに外に出ない。奴隷だけが島の他の地域に出かけたが、彼らの活動については作中では語られていない。

島の主たる地理的特徴はイムルイル平原である。その名の由来はメルニボネ最後の都イムルイルである。三方を壁に囲まれ、もう一方を人工の海上迷路で閉ざしたイムルイルは防備厳重な港湾都市である。『メルニボネの皇子』冒頭で、エルリックとその従妹サイモリルは草原を通って松林へ遠乗りをした。そこには花が咲き乱れる野原と連丘が広がっていた。それから二人は海を見下ろす崖と、白い砂浜に続く小道についた。『白き狼の宿命』の「夢見る都」の章で、エルリックは秘密裏にイムルイルから数マイルの場所にある浜に小舟で上陸している。『薔薇の復讐』で、エルリックが竜を駆ってイムルイル平原の森と草むした峰を飛んでいく場面で、いくつかの手がかりが残されている。竜は彼を〈島の都〉フイシャンへと連れて行った。作中でイムルイル以外に名前が示されたのはここだけであるが、内戦で破壊された。エルリックは〈竜の滝〉の爆音を思い出しているが、これはおそらくイムルイル平原に流れる河のことだろう。

メルニボネには1万年来、住民が暮らしている。かつてイムルイルの民がその隅々まで踏破したのは間違いない。そして彼らは地形を風水のように整えることで、自然を操る魔術を保存した。子どもたちは島に網の目のようにはりめぐらされた小道と竜脈をたどることで魔術を習得するのである。中には別の次元に通じる道もあり、もし通る者が正しい呪文と身振りを知っていれば渡ることができる。

美しき〈夢見る都〉イムルイルは、メルニボネの首都であり、唯一存続している都市であり、イムルイル平原に位置している。都市の地下には〈竜の洞〉がある。

都は防備の施された港のまわりで発展した。この港は内陸の干潟であり、天然の壁を形成している断崖を通る海洞を通じて到達できる。魔法建築家のモンシャンジクが、守りをさらに固めるため海上迷路を建設した。迷路には5本の水路が続いており、それぞれの入り口は断崖の別の場所に開いている。断崖そのものは100フィートほどもの高さがあり、てっぺんには見張り塔がある。経路情報は堅く守られた国家機密である。1本のルートだけに習熟したメルニボネ人の水先案内人が、来訪した船舶の目隠しをほどこされた乗員を導いて迷路を通る。迷路の壁にうがたれた空間には、侵略者を待ち伏せするために伝説的なメルニボネの御座船艦が隠されている。

イムルイルの建築様式は、てっぺんに旗をなびかせた、背が高くて華奢な多色の塔に特徴付けられる。伝統に則って、皇帝が崩御した際には、一本の塔が倒されて、没した皇帝の名を冠した新たな塔が立てられる。絶え間なく改装されてはいるものの、人口の減少によって、多くの塔は手入れをされずに荒れ果てている。100フィートものの高さがある王宮で最も高い塔は、魔法の扉が施された“王の塔”ブ・アール・ネズベットの塔である。他の塔には、“皇帝の塔”ダ・ア・ルプトゥーナが王宮にある。また、海の緑色をした比較的低い塔であるモンシャンジクの塔は、迷宮の建設者の名をとっている。モンシャンジクの塔は港の管理中心である。

気候

島の気候は温暖である。動植物はブリテン諸島のそれに似ている。しかし日々の天気は予測しがたい。なぜなら魔術師たちが元素の精霊(エレメンタル)を召喚して、自由自在に天気をあやつるからである。

動植物

メルニボネの自然環境についてはわずかな情報しかない。何千年にもわたって、メルニボネ人は自らの利益や快楽のために新たな生物種を持ち込んできた。そしておそらくは同じくらい多くを絶滅に追い込んできた。この島に住んでいることが知られる野生生物の中には、イタチやキツネがいる。“鳥の女王”フィーリートを召喚する栄に浴することができる代わりに、イムルイルを訪れるあらゆる鳥類を守ることを王族は約している。その結果、数多くの種類の鳥が都に住んでいる。

メルニボネ人はイムルイル地下の洞窟に住む竜と近しい関係を持っている。竜はあらゆる色をした鱗と、先の割れた舌と、冷たい両目を持つ。イムルイルの貴族である“竜の皇子”たちは、幼少時にこの高い知性を持つ動物と引き合わされ、常に歌として発声される彼らの言語を学ぶ。竜の首には隆起があり、騎手はここを天然の鞍にするが、戦いにおもむくイムルイルの民は本物の鞍を用いる。彼らは歌と角笛の音で竜を導く。時には長槍に似た鞭も用いる。

メルニボネの竜が吐くのは本物の火ではない。彼らは高い発火性を持つ毒液を吐き出す。この毒液には特殊な性質がある。腐食性だが、鋼鉄の容器に入れて乾かすことができる。乾燥させた毒液の小片を水と混ぜれば、何日も活力と勇気をもたらす栄養剤になる。毒液を生成する独特の代謝機能のために、竜は1日活動するごとに100年間眠らなければならない。このため、竜は長命だが、ほとんどを眠って過ごす。エルリックの時代に生きている竜としては、フレームファング、スカースナウト、ブラックスナウト、ホワイトスナウトがいる。

『夢盗人の娘』の中では、初期の作品では見られない竜の性質が語られている。それによると、実際には竜には数種類がいる。メルニボネ土着の種は、長い鼻面を持ったプールン種である。若いときにはその尾と鼻面に黒と白の輪を持つ。メルニボネ人は“スケフラ”という名の鞍に似た魔法の膜を発明した。これによって竜は次元をまたいで移動できる。

植物

島に生育する多くの植物には、魔法や治療薬としての効能があり、麻酔剤や興奮剤、そして〈夢見る都〉の名の由来となった幻覚剤といったものがある。中にはメルニボネ人によって持ち込まれて定着したものもある。後の時代には奴隷がそれらを採集した。こうした植物の中で名前が言及されているのはノイデル(ノドイル)だけである。この島固有の雑草で、イムルイル平原とその周辺で生育する。暗青色をしており、木苺状の果実は有毒で、盲目と狂気をもたらす。

文化

歴史

関連項目

Related Articles

Wikiwand AI