ヤマハ・VL/VPシリーズ
ヤマハ独自の物理モデル音源を搭載したシンセサイザー
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概要
米国スタンフォード大学と、ヤマハが共同開発した音源で、ヤマハのAWM音源やXGフォーマットなどに関する技術を融合し開発された。この技術が搭載されているシンセサイザーにはSONDIUS-XGのロゴが本体や説明書に刻印または、表記されるがEX5以降に発売される該当機種のみに刻印もしくは、表記されている。現在主流の一般的なミュージックシンセサイザーやキーボードの様な、録音(サンプリング)された音を加工して音色を作成する方法とは異なり、管楽器や、弦楽器などの構成等を計算(演算)モデルとして音色を作成している。世界初の物理モデル音源となったが、VL70-mを除いて非常に高価な機種である上に、VP1を除いて同時発音数が最大2音と少なくポリフォニックシンセサイザーとして使えなかったために、ブレス・コントローラを接続した管楽器としての使用法が主となったため、ウインドシンセサイザー奏者以外には普及しなかった[1]。VL/VPシリーズは後のEXシリーズとは異なり、物理モデル音源のみ搭載の機種のため、VL/VPシリーズのシンセサイザー1台でカラオケMIDIデータの作成、再生はできず、もちろんシーケンサーを搭載していない。そのため、ファクトリーディスクに収録されているデモソングの一部は、XG音源が搭載された機種とMIDI接続を行って初めて1曲が成り立つものも収録されている。他のPCM音源のシンセサイザーと並べて、管楽器や架空楽器のパートをこの機種で演奏する、または、バンドの中のソロ演奏用のリードシンセとして利用するという使い方をする。
F/VA方式を唯一搭載するVP1は発売当時において超高性能な機材ではあったがコストの問題から税抜きで270万円という価格設定が行われていたため、受注生産で約10台しか製造されなかったとの非公式情報[2]があるほどに稀少な製品となっており、発売当時においてもスタジオはもちろん、ステージで見る機会も殆どなく、最高峰の実績を持つ音楽家のために作られた伝説のシンセサイザーとなっている。VP1は歴史的な技術遺産であり、超貴重品ゆえに業界関係者が手放さないため、中古であっても一般流通する可能性は無いため、一般人には入手不可能である。
VL/VPシリーズの開発には後にVCMテクノロジーを開発する国本利文が携わった[3]。
アナログ回路を計算モデルとするバーチャルアナログ音源も物理的な特性を再現するという意味で物理モデル音源に含まれる[4]。
音源方式
S/VAとF/VAの2方式がある。
- S/VA方式(VLシリーズ)
- Self oscillation type/VA Synthesis system。DSPで実行する計算モデルとして、管楽器や擦弦楽器を模した基本モデルにプレッシャーを加えることで振動を生み出して発音するタイプの物理モデル音源。従って、プレッシャーをかけている間は音が鳴り続けるが、プレッシャーをかけるのをやめると同時に音は消える。具体例を挙げれば、弦に弓を押しつける力を掛けることで弦の振動を生み出して音を作り出す。実在しない生楽器をシミュレーションすることも可能である。発売当時は高性能なハードウェアが必要であった。
- F/VA方式(VP1)
- Free oscillatiom type/VA Synthesis system。受注生産のみが行われ、一般流通は行われておらず、最高峰の実績を持つ音楽家のみが所有できた幻の音源方式である。1つは弦を弾いたり叩いたりといった演奏を行うギターやベース、パーカッションなど撥弦楽器の基本モデル、もう1つは弦をこする演奏を行うバイオリンやチェロなど擦弦楽器の基本モデル、この2つの基本モデルから構成されている。F/VA音源では弦を弓で実際にこすることで弦の振動を生み出している。F/VA音源の特長として、コントローラーによって音源内部の物理モデルをコントロールできる自由度の高さがあり、それはS/VA音源方式を遙かに凌駕するものという。実在しない生楽器をシミュレーションすることも可能である。発売当時、ハイエンド製品と見做されていたVL1の数倍に上る異次元のハードウェア性能を持つVP1にしか搭載できなかった方式である。コストと価格の問題から、VP1は受注生産品として作られており、非公式には約10台しか存在しないと言われているため、一般人は見ることすらできない製品となっている[2]。VP1は歴史的な技術遺産であり、超貴重品ゆえに業界関係者が手放さないため、中古であっても一般流通する可能性は無いため、一般人には入手不可能である。
シリーズのモデル
- VL1
- 1993年発売。音源方式はS/VA。49key。同時発音数2音。インターナルのボイスメモリー128。物理モデル音源第1号機。木目パネルを採用し、プロユースだけを意識して作られたシンセサイザーとしての風格を醸し出している[5]。発売から20年経過後も氏家克典や、浅倉大介などのアーティストなどが使用している。ちなみに浅倉大介は、ショルキー(KX5)の音源としてLIVEなどで使用している。鍵盤左側に設置されている3つのホイールや、スライダー、フットペダル等を多用して時間変化のある音色を再現可能としている。管楽器のシミュレートや架空楽器の創造が得意であり、ピアノ音の再生は不得手としている。後にマルチティンバー化(といっても2パートだが)と物理モデルのアルゴリズム強化のため、Version2へのアップデートが行われた。S/VA音源方式はEX5や、対応機種のみではあるが、シンセサイザーに追加音源として搭載可能なプラグインボードとして発売され、さらにソフト音源ではポリフォニック化が試みられた。Version 1の希望小売価格は470,000 円(税抜)[6]。Version 2は本体価格493,500円+バージョンアップサービス21,000円(税込)[7]。
- VL1-m
- 1994年に発売されたVL1の音源モジュール版。音源方式はS/VA。3Uフルラックサイズ。同時発音数2音。インターナルのボイスメモリー128。VL1同様、後にVersion2へのアップデートが行われた。プリセットボイスはVL1とは差し替えられており、また、同梱のFDにはVL1のプリセットボイスが収められており、それを呼び出して使うことも可能である。主な特長として、ブレスコントローラーの端子を備えていること、そしてWX11のようにリップによるピッチベンドの幅が固定されているコントローラーに対して、VL1-mの側でピッチベンドの幅を広げるためのパラメーターであるWXリップモードを搭載していることが挙げられる。またVL7で用意されたノーブレスボイスもVL1-mでもプリセットされている。また付属のディスクの中に、ウィンドコントローラー用にカスタマイズされた32のボイスが入っており、ヤマハ・WXシリーズを使っているユーザーへ間口を広げている。Version 1の希望小売価格は300,000 円(税抜)[8]。Version 2の希望小売価格は300,000 円(税抜)[9]。
- VL7
- 1994年に発売されたVL1の廉価版。音源方式はS/VA。49key。同時発音数1音。インターナルのボイスメモリー64。VL1同様後にVersion2へのアップデートが行われた。VL1の下位互換性を確保し、VL1で2エレメントを使う音色ではそのうち片方を呼び出してVL7では演奏できるようになっている。またVL1では木目パネルであった部分が牛皮をイメージしたラバサン塗装に変更されている。VL1に比べて価格が2/3以下に抑えられたが、これでも価格が高く、VL音源の普及とは程遠かった。ブレスコントローラーを吹かないと音が出ないプリセットボイスがVL1は多かったが、鍵盤演奏だけで音色変化が楽しめるノーブレスボイスが用意されている。
- また、PLG150-VLと、EX5のVL音源と同等ではあるものの、初めから音色を作ることが難しく複雑なため、EX5では音色を作りやすくするためにテンプレートとしてある程度構成された音色を加工すると言う方式を取られているため自由度は少ない。
- Version 1の希望小売価格は300,000 円(税抜)[10]。Version 2は本体価格315,000円+バージョンアップサービス21,000円(税込)[11]。
- VL70-m
- 1996年発売。ハーフラックサイズ音源モジュール。音源方式はS/VA。最大同時発音数:1音 音色数:プリセット256ボイス(137VL-XGボイス含む)+ユーザー64ボイス+カスタム6ボイス エフェクト:リバーブ×12、コーラス×10、バリエーション×44、ディストーション×3
- 前述のVL1-mの廉価版として登場。約1/5の価格を実現し、物理モデル音源を身近にしたモデルである。WX11やWX5を直接つなげるWXイン端子、パソコンと直結できるTO HOST端子を装備。VL1-mの時にあったウィンドコントローラー用の音源モジュールとしての用途を進化させる一方で、PCとの連携も視野に入れている。
- ボリュームやエフェクトなどのXGコントロール情報の受信し、バンクセレクトを受信して指定したXGバリエーション音色での演奏可能なVL-XGモードと呼ばれるXGの拡張性に準拠した演奏モードもあり、VL70-m用の演奏パートをXG音源で鳴らさないように設定可能。後にMUシリーズやSシリーズ、MOTIFシリーズのプラグインボードとして発売された「XG Plug-in System|PLG100-VL」はこれとほぼ同じ機能を持っている。2011年生産完了。希望小売価格は58,000 円(税抜)[12]。
- VP1
- 1994年発売。坂本龍一(ワールドツアー、TKダンスキャンプなど)や、小室哲哉(TMNラストライブ)、久石譲(『キッズ・リターン』『もののけ姫』)[13][14]など一部のキーボーディストが利用したプロユースを目的としたシンセサイザー。ほかには冨田勲、松任谷正隆などがユーザーとして知られていた。76key。16音ポリ。音源方式はF/VA。ピックで弦をはじくといったような、一定のトリガーを受けて発振し、自由振動を経て音が減衰していくタイプの楽器をシミュレートし、発音する物理モデル。このため、ギターやベース、パーカッション系の音色は実に生々しく再現でき、トリガーを連続的に与えることによってストリングス系の音色の再現にも威力を発揮する。VL1の何倍もの音源チップとCPUによって16音ポリフォニックを実現し、4エレメント構成のボイスでも和音で演奏できるようにしている。このために本体からは大量の熱が発生する。同じ物理モデル音源だが、VL1とはシミュレートする発音機構が異なるため音源方式がF/VAと区別されており、VL1・VL7の計算モデルのまま発音数を増加させた16音ポリフォニックモデルではない。しかし、トリガーの与え方の工夫によってVLシリーズの用途にも対応可能となっている。ハードウェアのコストが高く、物理モデル音源の人気が低調気味であるため、F/VA音源方式は現時点ではこのVP1のみである。後の時代においても、VP1と同様の自由度を持つ物理モデル音源の製品は発売されていない。希望小売価格は2,700,000 円(税抜)[15]。
VLシリーズのversion2へのアップグレード内容
- VLシリーズならではの特徴である物理モデルの進化(シミュレーション精度のアップ)
- エフェクトの強化
アップグレードサービスは終了している。
※VL70-mは除く
その他
クリプトン・フューチャー・メディア社の展開するキャラクター、「VOCALOID」2シリーズ第3弾の巡音ルカのデザインには、VLシリーズのデザインが取り入れられており、腕には「VL1」または、「VP1」操作部の意匠と似たアームカバーが、胸部には金管楽器の操作部の飾りが付いており、全体的に「VL1」「VP1」をイメージさせる衣装となっている[16]。