サハロフの心理学への貢献は、主にレフ・ヴィゴツキーとの共同研究を通じて行われた。特に有名なのが、彼が考案した「ヴィゴツキー・サハロフ・テスト」または「ヴィゴツキー・ブロック・テスト」と呼ばれる概念形成の実験手法である。
このテストは、色、形、高さ、幅の異なる木製のブロックを使用し、被験者が隠された規則性に基づいてブロックを分類する課題である。このテストは、単なる知覚的な分類ではなく、抽象的な概念の形成過程を明らかにすることを目的としていた。被験者は、ブロックの底面に書かれた無意味な記号(例:LAG, MUR, BLK, CEV)を手がかりに分類を行うよう求められる。これらの記号は特定の属性(例:背が高く幅広のブロックはすべて同じ記号)に対応しており、被験者は試行錯誤を通じてその規則性を発見し、概念を形成していく過程が観察される。
サハロフは、このテストを通じて、子どもの概念発達における「複合思考(complex thinking)」から「真の概念(true concepts)」への移行段階を実証しようとした。これは、ヴィゴツキーの提唱した「最近接発達の領域(Zone of Proximal Development, ZPD)」の考え方とも密接に関連している。ZPDとは、子どもが一人では解決できないが、他者の援助があれば解決できる領域を指し、この領域での学習が概念形成を促進するとされる。
サハロフの研究は、思考と言語、概念形成、そして学習のプロセスに関するヴィゴツキーの理論に具体的な実験的根拠を与えた。彼の貢献は、ソビエト心理学における文化歴史的アプローチの確立に不可欠なものであり、今日でも認知発達心理学や教育心理学において言及されることがある。