妄想性パーソナリティ障害
他者の動機や意図を自己に対する悪意と解釈したり、他者に対する不信や疑心を特徴する精神障害
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特徴
他人の行動に悪意があるのではないかと歪曲して受け止める傾向がある。普通で友好的な他人の行動であっても、しばしば敵対的や軽蔑的なものと誤って解釈されてしまう。本人の権利が理解されていないという信念に加えて、パートナーの貞操や貞節に関する根拠の無い疑いであっても、頑固に理屈っぽく執着する。そのような人物は、過剰な自信や自己指示を誇大にする傾向がある。
証拠がまったくないのに攻撃されていると感じたり、些細な過失を故意の攻撃だと感じ、すぐに怒って反撃したり、その恨みは決して忘れずいつまでも許さない[2]。人と仲良くするのが難しく、自分の配偶者であっても誠実さを疑い、そのような考えを裏付けるような証拠を集める[2]。好戦的で疑い深いため、議論っぽさ、控えめな敵意、秘密主義的で、冷たい感じを人に与える結果、他人から攻撃的な反応を引き出し、自分の妄想が確かめられたと感じる[2]。 他人を信頼できず自立感を必要としており、周りの人間を支配する必要に駆られている[2]。好訴的に訴訟することもある[2]。
独裁者の病
この障害は強大な権力を持つ、特に一代で成り上がった絶対権力者に多く、独裁者の病であることが知られている。独裁者は常に他人に蹴落とされる可能性(それも命を失う可能性)を秘めており、部下を常時監視する必要がある。成り上がりの独裁者は自分が独裁者になる過程で、前の支配者を謀略で失脚させるようなことをしていたり、自身の暗殺計画が発覚したり、実行されたりすれば、より部下を信用することができなくなり(周りにいる部下は自分と同等以上の野心家である)、さらに命を狙われる可能性がある。そのため元々の性格はそのような兆候のない者でも、成り上がった独裁者は必然的に妄想性パーソナリティ障害を形成し、そのような特徴を示さない独裁者の方が少ない(例:ヨシフ・スターリン、アドルフ・ヒトラー)。なお普通の巨大な会社の社長や、巨大宗教団体の教祖にも見受けられる。(参考文献:岡田尊司『パーソナリティ障害』PHP新書)
診断基準
DSM-IV-TR
A. 他人の動機を悪意のあるものと解釈するといった、広範な不信と疑い深さが成人早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下の4つ(またはそれ以上)によって示される[3]。
- 十分な根拠もないのに、他人が自分を利用する、危害を加える、またはだますという疑いを持つ。
- 友人または仲間の誠実さや信頼を不当に疑い、それに心を奪われている。
- 情報が自分に不利に用いられるという根拠のない恐れのために、他人に秘密を打ち明けたがらない。
- 悪意のない言葉や出来事の中に、自分をけなす、または脅す意味が隠されていると読む。
- 恨みをいだき続ける。つまり、侮辱されたこと、傷つけられたこと、または軽蔑されたことを許さない。
- 自分の性格または評判に対して他人にはわからないような攻撃を感じ取り、すぐに怒って反応する。または逆襲する。
- 配偶者または性的伴侶の貞節に対して、繰り返し道理に合わない疑念を持つ。
また診断基準Bが、統合失調症や、精神病性の障害、一般身体疾患によるものではないことを要求している。
なお、パーソナリティ障害の診断は、特定のパーソナリティの特徴が成人期早期までに明らかになっており、薬物やストレスなど一過性の状態とも区別されており、臨床的に著しい苦痛や機能の障害を呈している必要がある[2]。妄想性パーソナリティ障害は一般人口の約0.5〜4.4%に発生している。[4][5]
ミロンのサブタイプ
心理学者セオドア・ミロンは、妄想性人格に見られる特徴を描写し、それらを5つのサブタイプとして分類した[6]
| 分類 | 概要 | 人格特性 |
|---|---|---|
| 脅迫的なタイプ | 強迫性の特徴を含む | 自己主張が強く、厳格・几帳面・完全主義欲求・融通の効かない頑固さ・吝嗇(ケチ)・ユーモアや冗談がない・秩序志向性といった性格。非常に硬直的で融通の効かない人格構造であり、他人から干渉されたり影響されないことが、『自己アイデンティティの確立』に深く関係していると信じ込んでいる。 |
| 狂信的なタイプ | 自己愛性 の特徴を含む | 中身のない虚栄心や表面的な自尊心が強く、他者を利己的に利用して価値を引き下げようとする部分で、自分を特別な人間と思い込む。現実状況を否定する、『妄想的な全能感』や『誇大的な自己主張』によって、拡散している自己アイデンティティを強化しており、肥大した自己愛の欲求を満たしている。 |
| 不満を抱えたタイプ | ネガティブで受動的攻撃行動の特徴を含む | 自分の人生・能力に対する、『劣等性コンプレックス』を抱え続けているタイプであり、辛辣で根強い不満感と病的な嫉妬心が特徴。普段から、気難しくて打ち解けない人物、という印象を持たれており、『他人の魅力・価値を否定する言動』によって自己の優越感や自尊心を辛うじて保っている、という自我の脆弱性がある。自分自身の能力や対人スキルに対する自信が徹底的に欠如しているので、『他人への猜疑心』が非常に強く、具体的な根拠もないのに、『相手の嘘や裏切り』に対して激しい怒りの感情を抱いている。『他人の幸福や成功』に対する嫉妬感情が異常に強い故に、否定的な態度を取ることが多く、自分の将来に対しても悲観的なので、他人と良好な人間関係を取り結ぶモチベーションも低い。 |
| 回避的なタイプ | 回避性 の特徴を含む | 現実社会や対人関係から激しく孤立しているタイプであり、自分の言動に自信を持てないので、他者を信用できないだけでなく、他者から騙されたり脅かされたりするのではないかという、『他者に対する根源的な不安』を強く持っている。回避的なタイプでは、現実社会からの脅威や圧迫を緩和するために、『自己が妄想的に作り上げた内面世界』に逃避する防衛機制が見られ、他者との直接的な接触を回避するために、依存行動を取ることがある。他人と深く関係を持つことで、恥をかかせられたり馬鹿にされるのではないか、という不安をいつも持っており、他人から、『理不尽なコントロール』を受けない為に、人間関係から出来るだけ遠ざかって孤独な生活状況を維持しようとする。 |
| 悪意を持ったタイプ | サディスティックな特徴を含む | 『他人の内面心理』に恣意的に悪意や加害性を読み取るタイプ。『他人が自分を脅かそうと企んでいる』と誤解することによって攻撃性や復讐心を露わにし、『自分が抱いている悪意や攻撃性』を他人の内面に投影することで、『他人が悪意や攻撃性を抱いている』という風に間違った認知をして、他人を挑発して攻撃しようとする。挑発行為を好む好戦的な性格傾向があり、『信用できない他者・自分を脅かす他者』を先制攻撃で叩き潰そうというような志向を持っている。自己と他人の人間関係を、『支配‐服従の二元論的な関係』としか見ることが出来ないので、『妄想的な不安や悪意』を他人に投影して対人関係の緊張や敵対を強めていく傾向がある。 |
鑑別診断
妄想性パーソナリティ障害の患者は、うつ病、不安障害、強迫性障害、物質関連障害を併発するリスクが高い。他のパーソナリティ障害の診断基準も満たされており、例えば統合失調型パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害、自己愛性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害、受動攻撃性パーソナリティ障害などが該当する。[7]
疫学
臨床サンプルでは男性の発症率が高いのに対し、疫学的には女性の方が高いと報告されている。[8]
