預かった手紙を「堀越村」に届けるために歩いている男は、道に迷って、見知らぬ峠に入り込んでしまう。日が暮れかかり、急に心細くなった男は茶店を見つけ、顔を出した老婆に堀越村までの道のりを尋ねる。
道を説明する老婆が言及する地名や道しるべは、「水子池」「獄門地蔵」「父追橋(てておいばし)」といった、不吉なものばかり。男が思わず由来を尋ねるたびに、老婆は人の死にまつわるそれらの由来を恐ろしげに語って聞かせ、「池の横を通るたびに赤ん坊の泣き声がし、人を引きずり込む」「地蔵の首が飛びまわって人に噛みつく」などと、それぞれの場所で怪奇現象が起こることを男に教え、ちょうちんを貸す。
男は池を半狂乱になりながら通過するが、結局声などしなかった。地蔵の首も飛ばず、橋でも何も起こらなかった。男はそれでも恐怖感がおさまらず、たまらず駆け出すと、峠の交差路「幽霊の辻」の「首くくりの松」の陰から飛び出してきた若い娘と鉢合わせになり、思わず叫び声をあげ、失神しそうになる。
「何を怖がっておられるのですか」「てっきり幽霊かと思ったじゃないか」「私を幽霊じゃないと思っているの?」
娘の姿が、スッと消えた。