終戦後、家族と共に満州から引き揚げて来た南部次郎。母親が亡くなり、そのわずかな葬儀費用を用立ててくれた男は、借金の形にと、妹・君子を売り飛ばそうとした。妹を守るために男を殴り殺してしまった次郎は、もう誰も信じられないと、燃え盛るような憎しみを増大させていった。
その激しい感情を鎮めてくれたのは、刑務所内での刑務作業で出会った備前焼だった。冷たい土を練り上げていると、嫌なことを忘れられた。刑期を終えた次郎は陶芸家の城島に正式に弟子入りし、その道を着実に歩んでいく。一方、妹の君子は女優として成功を収めつつあった。
独立し、鳥取で自分の窯を開いた次郎。何度目かの個展ために訪れた東京で、中国北宋時代の青磁・汝窯(じょよう)と出会う。今まで見たことのないその色使い、文様。汝窯に魅入られた次郎は現代に汝窯を蘇らせたい、と強く願うようになる。
昭和の情勢を交えながら一人の男の人生を描く。