灰色の月
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戦後間もない時、東京駅で連れの二人と別れた「私」は山手線品川廻りの電車に乗車する。横に座る少年工が身体を揺すり続けていることを不気味に思い、不自然ではない程度に間を開けて隣に座った。次第に混雑していく車内で、血色のいい丸顔の若者と四十くらいの男が荷物の置き場所を譲り合う姿を見て「一ト頃は人の氣持も大分變つてきた」と気持ちよく思った。体を揺すり続けている少年工を乗車してきた会社員のうちの一人が笑うが、若者の「一歩手前ですよ。」という言葉で少年工が極度の飢餓状態にあることを悟る。窓の外を見ようとした少年工が体勢を崩して私に寄りかかってくるが、少年工を気の毒に思う「私」の気持ちを裏切って、「私」の身体は肩で突き返してしまう。上野へ行く予定だった少年工は乗り越してしまったことを告げられるも「どうでもかまはねえや」と独り言を言う。乗客たちは少年工を気の毒に思うも助けることができず、「私」もまた同様のことを考えて「暗澹たる気持ち」を抱えたまま渋谷駅で降車する。昭和二十年(1945年)十月十六日の事である。