無次元ハッブル定数

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無次元ハッブル定数(むじげんハッブルていすう、英: dimensionless Hubble constant)は、宇宙論における膨張率を記述する際に用いられる無次元化されたパラメータである。宇宙の膨張速度を示すハッブル定数 H0 は、観測手法や時代によって推定値が大きく変遷してきた経緯がある。そのため、計算式を特定の H0 の値に依存させないための工夫として、本パラメータ h が導入された。

定義

ハッブル定数 H0 は、一般的に H0 = 100h km/s/Mpc という形式で定義される。ここで、h は次式によって定義される無次元量である。

宇宙論における距離密度光度などの物理量は、ハッブル定数に依存して決定されるものが多い。例えば、ある銀河の距離 d は後退速度 v を用いて d = v / H0 と表されるが、これを h を用いて記述することで、ハッブル定数の確定値に関わらず数式を維持することが可能となる。

導入の目的と利点

宇宙論モデルにおいてこのパラメータが重用される背景には、主に以下の二点がある。

  • 観測データの不確実性への対応:20世紀後半において、ハッブル定数の観測値には 50 から 100 km/s/Mpc という大きな幅が存在した。h を用いることで、観測値が更新されるたびに数式全体を書き直す手間を省き、結果を h^-1 や h^-2 の関数として提示することが可能となった。
  • 計算の簡略化:密度パラメータ Ωm などの物理量は、H0 を含む複雑な係数を伴うことが多い。H0 = 100h と置換することで、式の係数を整理し、宇宙論的シミュレーションや理論解析を効率化できる。

現代宇宙論における役割

現代の精密宇宙論(プランク衛星やバリオン音響振動の観測など)において、H0 は高い精度で制限されている。しかし、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)から導出される H0 の値(約 67 km/s/Mpc)と、近傍宇宙の超新星観測から得られる値(約 73 km/s/Mpc)の間に乖離が見られる「ハッブル・テンション」と呼ばれる問題が生じている。

この状況下で、無次元ハッブル定数 h は単なる「計算上の便宜」ではなく、宇宙の膨張率に関する理論モデルと観測データが合致しているかを確認するための、極めて重要な比較指標となっている。

関連項目

参考文献

  • Peacock, J. A. (1999). Cosmological Physics. Cambridge University Press. ISBN 978-0521422703
  • Planck Collaboration (2020). “Planck 2018 results. VI. Cosmological parameters”. Astronomy & Astrophysics 641: A6. doi:10.1051/0004-6361/201833910. https://www.aanda.org/articles/ast/full_html/2020/09/aa33910-18/aa33910-18.html.
  • Freedman, W. L.; Madore, B. F. (2010). “The Hubble Constant”. Annual Review of Astronomy and Astrophysics 48: 673-710. doi:10.1146/annurev-astro-082708-101829. https://www.annualreviews.org/doi/10.1146/annurev-astro-082708-101829.

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