特定継続的役務提供

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特定継続的役務提供(とくていけいぞくてきえきむていきょう)とは、「特定商取引に関する法律」(特定商取引法)第41条で定義される、次の各役務の提供、又はその役務の提供を受ける権利を販売することをいう。

対象となる役務

  • エステティック」で期間が1か月を超えて、料金が5万円を超えるもの
  • 語学教育」で期間が2か月を超えて、金額が5万円を超えるもの
  • 学習塾等」で期間が2か月を超えて、金額が5万円を超えるもの
  • 家庭教師等」で期間が2か月を超えて、金額が5万円を超えるもの
  • パソコン教室等」で期間が2か月を超えて、金額が5万円を超えるもの
  • 結婚情報提供」で期間が2か月を超えて、金額が5万円を超えるもの

(なお、上記、各役務には詳細な適用要件がある。)

このような役務は、その性質上、受けてみないと効果がわからないものであり、実際に受けてみたところ効果が思わしくなく中途解約を行ないたくなることが少なからずある。 ところが中途解約をめぐり、中途解約が認められない、高額な違約金を請求されるといったトラブルが多発し、このため「訪問販売法等に関する法律」(現「特定商取引に関する法律」)及び「割賦販売法」が改正されるに至った(1999年10月22日施行)。この改正により、政令指定の役務に関して「特定継続的役務提供」という商取引概念が導入され、クーリングオフ権の付与、割賦販売法における抗弁の対抗などが定められた。このときは「エステティック」、「語学教育」、「学習塾等」、「家庭教師等」が政令指定された。

その後、トラブルの多い「パソコン教室等」、「結婚情報提供」が政令に追加指定されるに至った。(2004年1月1日施行)。

この章では、特定商取引法に基いて、特定継続的役務提供に関する用語や行為規制などについて説明する。

説明の便宜上、法律「特定商取引に関する法律」(特定商取引法)、政令「特定商取引に関する法律施行令」、通商産業省令(現 経済産業省令)「特定商取引に関する法律施行規則」を、それぞれ単に「法」、「政令」、「省令」という。

また、平成16年11月4日付の各経済産業局長及び内閣府沖縄総合事務局長あて通達「特定商取引に関する法律等の施行について」を「通達」という。

対象

政令では以下のものを特定継続役務に指定し、次の6種類の役務提供契約又は権利販売契約が対象とされている。(政令の別表第五参照)法に明文の規定はないが、学校法人宗教法人などが行う特定継続的役務提供は、営利の目的を有していると一般には認められないので、「役務提供事業者」等に該当せず、適用除外となると解されている。(学校法人が行う公開講座としての語学講座や宗教法人が行う結婚あっせんなどが考えられる。)

  • エステティック
人の皮膚を清潔にし若しくは美化し、体型を整え、又は体重を減ずるための施術を行うこと。

期間が1か月を超え、金額が5万円を超えるもの

  • 語学教育
語学の教授(但し、入学試験対策と学校教育(大学を除く)の補習は含まない。)場所的な要件はないので、教室で行なうものに限定されず、電話、FAX、インターネット等によるものも含まれる。「語学」は、外国語に限定されていないので日本語も含まれる。

期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるもの

  • 家庭教師
事業者の用意する場所(教室等)以外で、中学、高校、大学、専修学校又は各種学校の入学試験対策をすること、並びに小学校、中学又は高校の補習をすること。
「家庭」や「個別指導」という要件がないことに注意されたい。従って、通信添削、電話、FAX、インターネット等による指導も含まれる。

期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるもの

  • 学習塾
事業者の用意する場所(教室等)で、入学試験に備えるため又は学校教育の補習のための児童、生徒又は学生を対象とした学力の教授。
「通達」では、「一定の学校の児童、生徒又は学生を対象としたものに限られ、したがってもっぱら浪人生等こうした児童生徒又は学生以外の者のみを対象とした役務は除外される(ただし、これら双方を対象とする役務については、全体としてここに掲げる役務に該当するので注意されたい)。」とされている。


期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるもの

  • パソコン教室等
電子計算機又はワードプロセッサーの操作に関する知識又は技術の教授。場所的な要件はないので、教室で行なうものに限定されず、電話、FAX、インターネット等によるものも含まれる。
「通達」では、「このパソコンやワープロの操作に関する知識や技術と共に他の知識や技術を教授するような役務の場合であっても、それらが一体不可分となっており、全体としてパソコンの操作に関する知識又は技術の教授を行っていると考えられる場合には、そういった他の知識や技術の教授の部分を含め当該役務全体として規制対象となる。他方、他の知識や技術の教授の部分が役務として明確に分割できるのであれば、分割されたパソコンやワープロの操作に関する知識や技術の教授の部分が特定継続的役務の要件を満たす限り、当該部分のみで規制対象となることとなる。」とされている。


期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるもの

  • 結婚情報提供
結婚を希望する者への異性の紹介。

期間が2か月を超え、金額が5万円を超えるもの

本稿においては、以下、これらを日常用語と区別する意味で、<エステティック>、<語学教育>、<家庭教師等>、<学習塾等>、<パソコン教室等>、<結婚情報提供>と記載する。


特定継続的役務提供契約、特定権利販売契約の「金額」の解釈

「通達」は、特定継続的役務提供契約、特定権利販売契約の「金額」について、

「役務の提供を受ける者(又は特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者)が支払わなければならない金銭の額」であり、狭義の役務の対価に限られず、入学金、入会金、施設利用料等も含めた役務の対価の他、役務の提供に際し購入しなければならない商品がある場合には当該商品の対価も含めた額をもって政令で定める額(5万円)を越えているか判断するものである。したがって、役務提供の対価の部分は無料と称していても、抱き合わせで販売される商品等の価額と合計した額が政令で定める額を超えていれば、これに該当するものである。

としている。

特定継続的役務提供等契約とは

特定継続的役務提供等契約」とは、特定継続的役務提供契約又は特定権利販売契約のことをいう。

関連商品とは

<関連商品>とは、役務提供事業者又は販売業者が特定継続的役務の提供に際し特定継続的役務提供受領者等が購入する必要のある商品で、役務の種類により次のように定められている。しばしば、こうした継続的サービスの提供を受けるのに際して、付随的な商品購入が求められる場合がある。そして、これらの商品もしばしば高額なことがあって問題となることがある。例えば、英会話スクールに通う際に高額なテキスト代の支払を求められるという場合などである。この場合においても、サービス本体のみならずその関連商品もクーリング・オフや中途解約の規制を免れることとなると法の実効性が保てなくなる。従って、継続的サービスとともに以下の関連商品を購入させる場合も一定の規制を課している。

  • <エステティック>の場合
    • 動物及び植物の加工品(一般の飲食の用に供されないものに限る。)であって、人が摂取するもの(医薬品を除く。)
    • 化粧品、石けん(医薬品を除く。)及び浴用剤
    • 下着
    • 電気による刺激又は電磁波若しくは超音波を用いて人の皮膚を清潔にし又は美化する器具又は装置
  • <語学教室>、<学習塾等>又は<家庭教師等>の場合
    • 書籍
    • 磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物
    • ファクシミリ装置及びテレビ電話装置
  • <パソコン教室等>の場合
    • 電子計算機及びワードプロセッサー並びにこれらの部品及び附属品
    • 書籍
    • 磁気的方法又は光学的方法により音、映像又はプログラムを記録した物
  • <結婚情報提供>の場合
    • 真珠並びに貴石及び半貴石
    • 指輪その他の装身具

本稿においては、上記定義の「関連商品」を、日常用語的な意味での「関連商品」と区別するため<関連商品>と表記することにする。

行政上の措置

書面の交付義務

  • 役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供等契約を締結しようとするときは、当該特定継続的役務提供等契約を締結するまでに、当該特定継続的役務提供等契約の概要について記載した書面(「概要書面」)を契約の相手方に交付しなければならない。
  • 役務提供事業者は、特定継続的役務提供契約を締結したときは、遅滞なく、当該特定継続的役務提供契約の内容を明らかにする書面(「契約書面」)を当該特定継続的役務の提供を受ける者に交付しなければならない。
  • 販売業者は、特定権利販売契約を締結したときは、遅滞なく、当該特定権利販売契約の内容を明らかにする書面(「契約書面」)を当該特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者に交付しなければならない。

概要書面、契約書面に記載しなければならない事項は、次の表の通りである。

特定継続的役務提供等契約の法定記載事項概要
書面
契約
書面
役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあっては代表者の氏名
提供される役務の内容
役務の提供に際し役務の提供を受けようとする者が購入する必要のある商品がある場合にはその商品名、種類及び数量
役務の対価その他の役務の提供を受けようとする者が支払わなければならない金銭の額(注1)
金銭の支払の時期及び方法(注2)
役務の提供期間(注3)
特定権利販売契約の解除(クーリングオフ)に関する事項
特定権利販売契約の解除(中途解約)に関する事項
割賦販売法上のローン提供業者又は割賦購入あっせん業者への抗弁の対抗ができること
前払取引を行うときは、当該前払取引に係る前受金について保全措置を講じているか否か及び、保全措置を講じている場合には、その内容
特約があるときは、その内容
特定継続的役務提供契約の締結を担当した者の氏名 -
特定継続的役務提供契約の締結の年月日 -
役務の提供に際し役務の提供を受ける者が購入する必要のある商品がある場合には、当該商品を販売する者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあっては代表者の氏名 -



特定権利販売契約の法定記載事項概要
書面
契約
書面
販売業者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあっては代表者の氏名
権利の行使により受けることができる役務の内容
権利の行使による役務の提供に際し特定継続的役務の提供を受ける権利を購入しようとする者が購入する必要のある商品がある場合にはその商品名
権利の販売価格その他の当該特定継続的役務の提供を受ける権利を購入しようとする者が支払わなければならない金銭の額(注1)
金銭の支払の時期及び方法(注2)
権利の行使により受けることができる役務の提供期間(注3)
特定権利販売契約の解除(クーリングオフ)に関する事項
特定権利販売契約の解除(中途解約)に関する事項
割賦販売法上のローン提供業者又は割賦購入あっせん業者への抗弁の対抗ができること
特約があるときは、その内容
特定権利販売契約の締結を担当した者の氏名 -
特定権利販売契約の締結の年月日 -
役務の提供に際し特定継続的役務の提供を受ける権利の購入者が購入する必要のある商品がある場合には、当該商品を販売する者の氏名又は名称、住所及び電話番号並びに法人にあっては代表者の氏名 -

(注1)

「入学金、入会金、施設利用料、商品の代金等名目の如何を問わず、当該契約に関して支払わなければならない金銭の総額である。」(通達)

(注2)

「「代金支払方法」として記載すべき事項は、持参・集金・振込、現金・クレジット等の別であり、分割して代金を受領する場合には各回ごとの受領金額、受領回数等が含まれる。」(通達)

(注3)

「「役務の提供期間」については、役務提供の始期及び終期又は始期及び期間という形で記載しなければならない。始期の記載がない場合には、特段の事情がない限り、契約締結の日をもって始期と推定するものとする。」(通達)

各記載事項については、その内容、文字サイズ、文字色等といったことが、詳細に規定されている。

誇大広告等の規制

役務提供事業者又は販売業者は、誇大広告をしてはならない。 (詳細な規定あり)

誇大広告か否かの合理的な根拠を示す資料の提出

主務大臣は、誇大広告か否かを判断するため必要があると認めるときは、その広告表示をした役務提供事業者又は販売業者に対し、期間を定めて当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。 広告表示をした役務提供事業者又は販売業者が、資料を提出しないときは、誇大広告とみなされる。

禁止行為

  • 役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供等契約の締結について勧誘をするに際し、又は特定継続的役務提供等契約の解除を妨げるために次のことをしてはならない。
    • 故意の事実不告知(直罰規定あり)
    • 不実告知(直罰規定あり)
なお、事実不告知、又は不実告知の対象となる事項については、詳細な規定がある。
また、「通達」では、事実不告知の例として
「フリータイム制の英会話教室で会員がキャパシティを大幅に超えており、満足に予約が取れない状況にあることを告げない場合等は本項に規定する故意の事実不告知に該当するものと考えられる。」
としている。
  • 役務提供事業者又は販売業者は、特定継続的役務提供等契約を締結させ、又は特定継続的役務提供等契約の解除を妨げるため、人を威迫して困惑させてはならない。
「通達」では、威迫、困惑として、次の例示がある。
    • 「契約書にサインしてくれないと困る。」と声を荒らげられて、誰もいないのでどうしてよいかわからなくなり、早く家に帰りたくなって契約をしてしまった。
    • エステティックサロンの無料体験を受けているときに衣服を脱がされた状態で多数の者に囲まれて執拗に勧誘され、こわくなって契約をしてしまった。
    • クーリング・オフを申し出ると、業者から支払の催促の電話があり、「残金を支払わないと現住所に住めなくしてやる。」と言われ、不安になってクーリング・オフの行使を思いとどまった。

不実告知か否かの合理的な根拠を示す資料の提出

主務大臣は、不実告知か否かを判断するため必要があると認めるときは、その告知を役務提供事業者又は販売業者に対し、期間を定めて当該告知の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。 告知をした役務提供事業者又は販売業者が、資料を提出しないときは、不実告知をしたとみなされる。

書類の備付け及び閲覧等

  • 役務提供事業者又は販売業者は、5万円を超える前払取引を行うときは、その業務及び財産の状況を記載した書類を、特定継続的役務提供等契約に関する業務を行う事務所に備え置かなければならない。(書類に記載すべき事項については、詳細な規定がある。)
  • 特定継続的役務提供に係る前払取引の相手方は、上記の書類の閲覧を求め、又は前項の役務提供事業者若しくは販売業者の定める費用を支払ってその謄本若しくは抄本の交付を求めることができる。

このような規定を設けられた理由は、次の通りである。

特定継続的役務提供は、その性質上、契約期間が長期のものが多く、前払であると、業者が倒産したときに被害が甚大なものとなる。このような被害を予防するために、前払取引を行う業者に対して業務及び財産の状況を記載した書類の作成義務を課し、前払取引の相手方に書類の閲覧権等を与えている。

また、「通達」は、

  • 前払い取引について、「現金払や口座引き落とし等の場合を指し、割賦販売法第2条第3項に規定する割賦購入あっせんに係る立替払等は含まれない。」とし、クレジットによる立替払いは含まない解釈を取っている。(この解釈に対しては批判的見解もある。)
  • 前払取引の相手方について、「事業者と前払取引により特定継続的役務提供等契約を締結した者のことであり、これから契約を締結しようとするものは含まれない。」としている。
  • 「謄本又は抄本の交付の際の費用については、原則として複写等に要する実費額とする。」としている。

民事法上の効果

関連項目

外部リンク

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