船客傷害賠償責任保険
From Wikipedia, the free encyclopedia
社団法人日本旅客船協会を契約者とする一括契約と、それ以外に旅客船事業者を契約者とする一般契約とがある。
被保険者
旅客運送を業として行っている者である。つまり、船舶所有者、船舶賃借人、定期傭船者等であって、船長、船員その他の船舶乗組員はこの保険の被保険者ではない。なお、日本旅客船協会会員である旅客航路事業者および同協会の総トン数5トン未満の船舶のみの事業者がなれる準会員については日本旅客船協会の一括契約により加入している。
保険期間
原則として1年間とされている。
担保危険
被保険者(旅客船事業者)が所有・使用・管理するこの保険に付された船舶(付保対象船舶)による旅客(船客)の運送に関し、事故により生命・身体を害した場合(死亡、傷害、疾病)に、被保険者が法律上の賠償責任を負担することによって被る財産上の損害を填補する。なお、日本旅客船協会契約に限り、被保険者が法律上の賠償責任を負担することなく、慣習上の支払をしたことによる損害は「慣習上の支払担保特約条項」で、当該船舶外の第三者に与えた身体障害に対して被保険者が法律上の賠償責任を負担することによって被る損害は「船外第三者傷害賠償責任担保特約条項」によって担保している。
「船舶による旅客の運送に関し」とは、船舶乗船中のほか、船舶に乗下船するための連絡用の船に搭乗中や乗下船用のタラップでの事故を含んでいる。
旅客
旅客とは、運送人と旅客運送契約(実際には運送約款による)を締結して乗船する者であり、船員その他船内において業務に従事する者以外の者である。また、船舶所有者、船舶賃借人、船舶管理人等の旅客運送人は旅客ではない。
付保対象船舶
この保険で対象とする船舶は、その大小、湖川・港湾・海上航行の別を問わず旅客運送の用に供される日本国籍の船舶で次のものである。
- 旅客船(観光(遊覧)船、水中翼船、ホバークラフト、高速艇を含む)
- 貨客船(自動車航送船を含む)
- 通船(交通船)
- 渡船
免責規定
主な免責規定は次のとおりである。
直接であると間接とを問わず、次の事由に起因する損害
- 保険契約者、被保険者、船長または乗組員の故意
- 襲撃、捕獲、拿捕または抑留
- 戦争(宣戦の有無を問わない)、変乱、一揆、暴動、政治的または社会的騒擾その他の類似の事変
- 地震、噴火、津波などの天災
- 原子核反応または原子の崩壊
次の期間に生じた損害
- 船舶および船舶に乗下船するための連絡用の船以外の運送用具によって船客を運送している期間
- 著しく定員をこえて船客または船舶に乗下船するための連絡用の船により船客を運送している期間
法律上の賠償責任
法律上の賠償責任は契約(運送約款)、民商法の一般原則(債務不履行責任、不法行為責任)、国際条約等によって定められる。
運送約款
海上運送法(9条1項)は、一般定期航路事業者、旅客不定期航路事業者、自動車航送貨物定期航路事業者に対して運送約款の制定、変更について国土交通大臣の認可を要するとしている。 標準運送約款では、次のとおり定めている。
――――――
(当社の賠償責任)
第20条
1.当社は、旅客が、船長又は当社の係員の指示に従い、乗船港の乗降施設(改札口がある場合にあっては、改札口。以下同じ。)に達した時から下船港の乗降施設を離れた時までの間に、その生命又は身体を害した場合は、これにより生じた損害について賠償する責任を負います。
2.前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する場合は、適用しません。
(1)当社が、船舶に構造上の欠陥及び機能の障害がなかったこと並びに当社及びその使用人が当該損害を防止するために必要な措置をとったこと又は不可抗力などの理由によりその措置をとることができなかったことを証明した場合
(2)当社が、旅客又は第三者の故意若しくは過失により、又は旅客がこの運送約款を守らなかったことにより当該損害が生じたことを証明した場合
3.当社は、手回り品その他旅客の保管する物品の滅失、き損等により生じた損害については、当社又はその使用人に過失があったことが証明された場合に限り、これを賠償する責任を負います。
4.当社が第5条(略)の規定による措置をとったことにより生じた損害については、第1項又は前項の規定により当社が責任を負う場合を除き、当社は、これを賠償する責任を負いません。
(旅客に対する賠償請求)
第21条
1.旅客が、その故意若しくは過失により、又はこの運送約款を守らなかったことにより当社に損害を与えた場合は、当社は、当該旅客に対し、その損害の賠償を求めることがあります。
――――――
賠償責任が生じる事例として、次のものが考えられる。
- 本船乗下船のための連絡用の船に搭乗している間に船が他船にぶつかりその衝撃で負傷した。
- 乗降施設内で乗船待ちの旅客が船から投げられたトモ綱に当たって受傷した。
- 船内の食事が原因で、下船後、食中毒の症状が現れた。
商法上の規定
商法上における旅客運送人の責任は、湖川・港湾のみを航行する内水船と、海洋上を航行する海船とで異なり、前者は第3編商行為の運送営業に関する規定が適用され、後者はこのほか第4編海商の規定によるとされている。
内水船に関する責任
商法上、旅客運送人は、自己またはその使用人が運送に関し注意を怠らなかったことを証明しなければ、旅客が運送のために受けた損害を賠償する責を免れない(商法590条1項 )とし、過失責任主義に立ちつつも無過失の立証責任を運送人に負わせ、被害者保護を図っている。
海船に関する責任
海船についても内水船の規定を準用している(商法786条1項 )が、船舶所有者、船舶賃借人(同704条1項 )等の旅客運送人は、特約を付しても自己の過失、船員その他の使用人の悪意もしくは重過失、または船舶の堪航能力の欠如に起因して生じた損害について賠償責任を免れない(同786条・739条 )として、この種の特約を無効としている。船舶所有者は船長その他の船員がその職務を行うにあたって故意または過失によって他人に与えた損害を賠償する責任がある(同690条 )。